表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

十五話

早めに起きて食堂に向かうと食堂には班の皆がそろっていた。

私は春華さんと由乃さんが座るテーブルに座る。


「蓮ちゃんも早く目が覚めちゃった?」

「そうですね。あんまり眠れませんでした」

「私はいつもこの時間よ」


佐々木さんが食事を持ってくる。


「本日はご入学おめでとうございます。今日の夕食は期待していてくださいね。」

「楽しみだね!」

「そうね、昨日みたいに立食形式かしら?」

「どうでしょう?もしかしたら入寮式の時みたいかもしれません」


そんなことを話しながら朝食を食べる。

 皆朝食を食べ終え、部屋に戻り礼装に着替え玄関ホールに集まる。

紫苑を見るとキリッと自信たっぷりの表情で座っている。私と違って相棒は余裕そうだ。

時間になり昨日の練習の通りに行進をして講堂に向かう。入学式は練習通りに進んでいく。

お偉いさんの話は長いが入寮式のようにヨウセイが飛びまわったり遊びだしたりはしない。

前に座る4班の生徒はヨウセイを連れていない。おそらく入寮式のようにならないためにヨウセイを連れてくる許可が下りなかったのだろう。

そのあとも順調に式は進んだ。最後に講堂から退場して式は終わる。

千歳先輩から10分後に集合と言われ急いで紫苑と両親を探す。

幸いすぐに両親を見つけることができた。


「お母さん! お父さん!」

「蓮! よく似合っているわ。お友達はできた?」

「やっていけそうか?」

「大丈夫だよ。寮の皆は優しいし紫苑だっているから。」

「そうか。無理はするなよ」

「次に会えるのは夏休みだからそれまで紫苑ちゃん、蓮のことよろしくね」


紫苑は置かせろと言わんばかりにキャン!と鳴いた。


「そろそろ行かないと」

「もう? お母さんたちは蓮のことをいつでも応援しているわ」

「どんなにつらくても諦めたり、仲間を見捨てることだけはするなよ」

そういって父は私の制帽を取ってぐしゃぐしゃと頭を乱暴に撫でる。

「分かってるよ。頑張るって決めたんだ」

「そうか。なら行ってこい」

 

父から制帽を受け取り「行ってきます」といって泣きそうな顔を制帽で隠して集合場所に走る。

 集合場所には今にも泣きそうな春華さんとぐっと泣くのをこらえている藤原君が千歳先輩と一緒にいた。


「高校生組は初めて両親と離れるのは初めてだよね。でも大丈夫だよ。

寮にいれば寂しさなんて感じさせないし、忙しくて夏休みまであっという間だよ」


千歳先輩の優しい言葉を聞いて春華さんは耐えていた涙がこぼれる。


「な、なんならお姉さん添い寝しちゃうよ! 頑張っちゃうよ!」


と必死に冗談をいう千歳先輩をみて春華さんは涙を拭きながら笑っていた。

 由乃さんと笹井さんも集合場所に到着する。


「この後は体育館にいってデバイスを受け取って寮に戻ってきてね。

私は準備があるから先に戻ります。仲良くみんなで行動するように」


指示通りにみんなで体育館に向かうと班ごとに区画が分けられていたので、5班と書かれた看板があるほうに進む。


「お待ちしておりました。デバイスと学生証をご確認ください」


そういって小さい箱を3つとドッグタグを皆に渡していく。

箱を開けると前に選んだドッグタグとアンクレット、それと腕時計が入っていた。


「ドッグタグ型やネックレス型を選んだ方はデバイス側のチェーンを使ってください。

腕時計は魔導士協会からの入学祝いですので大切にお使いください。」


 デバイスのチェーンに一緒にもらったドッグタグを通してつける。

普段アクセサリーをつけないので少し首がくすぐったい。アンクレットは左足に着ける。腕時計は利き手が左なので右につける。

 腕時計は時間と温度が表示されていて横にボタンがあり押すとライトがついた。

他のボタンを押すと温度が表示されていたところに高度や気圧が表示されたりストップウォッチになる。さらに方位まで測定できると隣にいた笹井さんが教えてくれる。裏を見ると寮章が彫られていた。

 皆が受け取ったことを確認したので寮に向かう。


――笹井君から報告来たよ~。もう食堂開いてるから早く戻って着替えておいで――


突然通信が入る。まだこの感覚にはなれそうにない。


「笹井さん! 通信のしかた教えてください!」


藤原君が目をキラキラさせて笹井さんに聞く。


「まず魔力がどんなもんか理解しないと無理だ。感覚的な問題だから練習あるのみだな。

爆死するのはいやだろう?」


そんなぁ~と藤原君は肩をがっくりと落とす。

私たちはまだ魔法について何も知らない。制御もできないのに魔力を使うのは危険だろう。

少なくとも私は爆死したくはない。そんな話をしながら寮へ戻る。

作業服2種に着替え帽子を手に持ち食堂へ向かい5班全員で昼食を食べる。

食堂にはほかの先輩も数名いたが制服を着ていなかったので何年生かはわからなかった。


昼食を食べ終えみんなで庭に向かう。庭には迷彩の大きなリュックとその横にポーチなどが並べられていた。


「笹井君、近衛ちゃん、藤原君、菊池ちゃん、小笠原ちゃんの順に荷物を前に並んで」

言われたとおりの順に並び千歳先輩の言葉を待つ。


「それじゃあまずはベルトにハーネスをしっかり固定して」


千歳先輩はハーネスをズボンのベルトに固定して見せてくれる。

お手本通りにハーネスをつけて次の指示を待つ。


「次にニーパッドとエルボーパットをしっかりと固定する。

しっかり固定しないとずり落ちたりするからしっかりとね」


つけてみると意外に窮屈ではなくスムーズに手足を動かすことができた。


「あとはマガジンポーチとウエストポーチ。レッグホルスターを両足に着けて装備完了。

利き腕のほうに拳銃ホルスターが来るようにしてね。反対はナイホルスター」


千歳先輩が全員の装備を確認していく。


「みんな大丈夫そうだね。マガジンポーチには予備のカートリッジをいれて、ウエストポーチには包帯とか応急医療品入れる。覚えておいて」


「はい」と全員で返事をする。


「よろしい! 次はバックパックの中身を確認するよ。

まずは寝袋と魔力感知妨害の布、あとはレーションと替えの洋服と靴を入れておく」


あの大きいリュックはバックパックということを記憶して話を聞く。中身が濡れないように小分けでビニール袋に入れるといいとアドバイスをしてくれたので忘れないようにしよう。


「最後に一番大事な装備はこれ! じゃじゃーん、Mグラス!」


そういってサングラスをみんなに渡していく。サングラスの横にイニシャルが彫刻されている。その横に小さなボタンが2つ反対にも2つついている。


「とりあえずかけてみてよ! びっくりするよ」


笑いながらサングラスをかけるように催促してくる。

 よくわからないがとりあえずかけてみる。


――システム起動――


頭の中に機械音声のメッセージが届き、サングラスから見える風景がクリアになって右端にミニマップが表示される。


「すげー! なにこれ! どうなってんの!」


隣の藤原君が興奮しながらあたりをキョロキョロ見回している。

皆不思議そうにしている姿を千歳先輩が見て笑っていた。


「すごいでしょ! これがあれば現在地や味方の位置もわかるしズーム機能もある。

今見ている映像を班内で共有することだってできるし、暗視モードもある」


ボタンは地図のオンオフとズーム、暗視モード切替、リセットの4つを操作するものらしい。

いろんな機能を開きっぱなしだと少し前が見にくいがリセットボタンを押すと全部機能がオフになるので見やすくなる。


「映像共有はどうやってやるんですか?」

「共有は通信するときと同じ感じなんだけど少し魔力出力をあげないといけないんだ。

だから共有するのは本当に大事な時だけだね」


 質問はないかと聞かれると笹井さんが手をあげ質問をする。


「装備はこれだけですか?」

「あとは武器庫に保管されているライフルと拳銃。そのほかは状況によってかな?」

「ずいぶんと装備が少ないんですね。ボディーアーマーも必要ないのですか?」

「今みんなが着ている服は魔力伝導性が高い繊維を使ってるから魔力を少し流せば、あっという間にボディーアーマーになっちゃうの。魔導士は身軽に動けるのが売りだから装備はなるべく軽量化してるんだ」

「なるほど」


笹井さんは満足そうにうなずいた。


「はい! 質問いいですか?」

「藤原君どうぞ!」

「カートリッジってなんですか?」

「よくぞ聞いてくれた! カートリッジは昔でいう弾丸だね。

今は弾丸いらずだからカートリッジは発射する魔法の制御術式が詰まってるの」

「すみません。さっぱりわかりません」


藤原君は申し訳なさそうに手をあげていう。


「昔は長い呪文に魔力をのせて魔法を発動してたけど、今はカートリッジのおかげで少ない魔力を流すと発動できるようになったの。つまり簡単に魔法が使えるってこと。Ok?」

「何となくわかりました」

「よろしい。この学校で使っているカートリッジは警官が使っているタイプ。

殺傷性はなくて体がしびれて動けなくなるくらいの威力だから授業で対人戦闘もあるから頑張って」


明日から笹井さんに格闘術を朝練で教わろう。

絶対勝ちたいわけではないが負ける=痛いなのでなるべく負けたくない。


「それじゃあ装備は各自で保管だからしっかり管理すること。この後は自由だけど19時に食堂ね」


皆装備を外して荷物をまとめていると


「明日の朝練は装備をつけてやるか?重さにも慣れといたほうがいいだろう?」

「そうですね。」

「お、俺も朝練参加したいです!」


藤原君に続くように春華さんと由乃さんも参加の意思を示す。


「参加するなら6時30分に玄関ホール。服装は作業服のどちらかで来い」

「朝練するのはいいけど明日から魔術戦闘の授業があるから忘れないようにね。

魔術戦闘と格闘のスケジュールだけは必ずチェックすること」

「はい」


明日から授業が始まるのをすっかり忘れていた。後で確認しておかなければ。

まだ今日の課題内容も見てないので急いで部屋に戻りだブレットで確認する。

魔術戦闘と格闘は水曜以外の9時から12時。どうやら単位は分かれているが授業は一緒に進めるみたいだ。土日は休日になっている。

今日の課題を見るといつもの基礎教養のほかに兵学、国際法、国内法と課題が増えていた。

これは今日中に終わるのだろうか?

やるしかないの基礎教養から始めていく。軍学や法律関係は初めて見る内容ばかりで苦戦した。

法律はとにかく暗記することにした。

兵学は過去の大戦や反乱で用いられた戦術や戦略を覚えていくだけではなく、自分ならどう対処するか小論文を書かなければならない。

文字数は少ないが戦略と戦術の違いすら知らなかった私には難しい。

 課題が終わったころには窓から見える空の色は真っ黒になっていた。

慌ててもらったばかりの腕時計で時間を確認すると18時56分。急いで課題を提出して紫苑を抱えて食堂に向かう。

 食堂の中は昨日と同じで長テーブルにたくさんの料理が並んでいた。

私は紫苑を下して一年生が集まっているところに向かう。


「蓮ちゃんぎりぎりだったね」

「遅刻するかと思いました」

「お水飲む?」


由乃さんがお水をもってきてくれた。私はもらった水を一気に飲みほしてからお礼を言う。


「皆集まってるな。食事の前に寮内連絡を行う。まずは地下の射撃場のメンテナンスが終わったのでいつでも使ってくれ。次に7月に行われる交流会の選抜試験の日程が決まった。後で確認するように」


――緊急連絡。食事終了後に談話室集合。ごめん、選抜試験の事すっかり忘れてた―― 


千歳先輩のほうを見ると手を合わせ頭を下げている。


「俺からの連絡は以上だ。それじゃあ今学期も頑張っていこう!」


寮長の話が終わりみんなが食事を始める。すぐに千歳先輩はやってきた。


「ごめん! すっかり選抜のこと忘れてた」

「交流会はどことやるんですか?」


笹井さんが少しあきれながら聞く。


「世界各国の魔導士候補生と魔法研究で有名な大学の学生がスイスで交流会が開かれるの。」

「海外ですか! 俺行ったことないんだよなぁ」


藤原君が不安そうにしている。


「第一寮はまだ一人も選抜落ちがいないから落ちたらやばいよ。最低でも基礎教養の単位は取らないと選抜は落ちるらしいから。作戦会議はまた後で」


そういって千歳先輩は友人のもとに戻っていった。


「国際交流ってことは英会話は必須よね。」

「俺は簡単なコミュニケーションくらいなら取れるぞ」

「私は海外に友人がいるのである程度ならしゃべれるかな」

「私は苦手です。ドイツ語ならある程度できるんですが」

「蓮さんはドイツ語がしゃべれるの?」

「ええ、祖母がドイツ人なので。意外ですか?」

「納得かな? 蓮ちゃんは背が高いし目が光に当たると明るい緑色できれいだから」

「蓮さんはダークグリーンに見えるけど?」


そういって二人が眼を見ようと顔を近づけてくる。


「二人とも近いです。一応ヘーゼルに分類されるんで光の当たり方とかで色が違って見えるんです。」


二人から逃げるように笹井さんの後ろに隠れて説明する。


「俺は純日本人だが目はヘーゼル色だぞ。ほぼ茶色だが」


そんなことを話していると今までしゃべらなかった藤原君が顔色を悪くして話し出す。


「俺……選抜落ちるかもしれない。英語をしゃべるどころか高校で赤点しかとったことないんだ」

「だ、大丈夫だよ! 今から頑張れば間に合うって!」


春華さんがフォローするが藤原君の顔色は悪いままだ。どうしたものかと考えていると


「そろそろ談話室に移動しようと思うんだけど、大丈夫そう?」


千歳先輩が訪ねてくる。大丈夫ですと答え皆で談話室に移動する。


「選抜試験の事なんだけど、最低条件が基礎教養の単位と英会話。マナーやダンスなんかは合格後に覚えればいいからとりあえず単位を取らなきゃいけない。」

「踊るんですか?」


ダンスなんて踊ったこともないが大丈夫だろうかと不安になる。


「うんワルツをね。礼装で参加だから性別関係なく女性をエスコートしないといけないけど。私なんて小さい子どもと踊ってる見たいなんて相手に言われたからね」

「俺、英語全然ダメなんですけどどうすればいですか?」

「皆には毎日英会話の動画を見てもらいます。シチュエーションと会話を頭に叩き込んだらひたすら発音練習。試験一週間前は寮内での会話は全部英語になるからそれまでに頑張って」


なんというスパルタ教育。しかしそんな方法で大丈夫なのだろうか?ネイティブの人と話せばすぐにボロが出てしまうだろう。


「実は【翻訳】って魔法を使うからある程度コミュニケーションが出来れば英会話は合格なんだ。」

「なんで初めから魔法を使わないんですか? そうすれば勉強しなくて済むのに」


藤原君が不満そうに聞く。


「魔力を感知されてはいけない状況で【翻訳】なんて使ったら拡声器を使って話してるのと変わらない。

私たちは有事に備えて行動しなきゃいけないからできることを増やさなきゃいけないの」


 最近はテロもなく忘れていたが、数年前までは世界各地でテロ行為が行われ多くの人が被害にあった。

日本ではテロが起こることはなかったが交流会はスイスで開催される。もし何かが起こっても英語がわからなければ避難すらまともに出来ないだろう。


「まぁ交流会の警備は厳しいから大丈夫だよ。ただ治安がいいとはいえ日本とは違うってことはおぼえておいてね」


不満そうにしていた藤原君は真剣に話を聞いていた。


「選抜についてはこれでおしまい。もう一つ言い忘れてたけど5月下旬に学年ごとの演習があります。

詳しくは授業で聞くと思うから話さないけど、結構きついから覚悟したほうがいいよ」


一年目は夏休みまであっという間だったと遠い目をして思い出を語っていた。


「明日は初めての授業だから頑張ってね。おやすみ~」


千歳先輩はあくびをしながら談話室を出ていったのでおやすみなさいとあいさつをして皆部屋に戻っていくった。私も部屋に戻り寝る準備をする。


明日はいよいよ授業だ。制服で行くよう指示されているのでいきなり訓練ではないだろう。

どちらにせよ初めての事なので楽しみだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ