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十四話

朝練を笹井さんとこなし、朝食を食堂で食べ、礼装に着替え玄関ホールで紫苑と一緒に待つ。

明日は入学式なので朝練はなしになった。

靴の磨きが甘くないか、ネクタイは曲がってないかと確認していると徐々に皆が集まり集合時間5分前には全員きっちりと並び千歳先輩を待つ。

千歳先輩は時間ぴったりに礼装姿でやってきた。やはり私たちと違って着なれているせいか同じ服のはずなのにどこか違う。


「みんな揃ってるね。それじゃあ練習がてら行進しながら講堂へ行こうか」

「はい!」


皆が声を揃え返事をする。

返事に満足したのか笑顔で私たちを先導してくれた。ヨウセイたちも横に並び一緒に歩いている。

さすがにチハの歩幅では遅れてしまうのでチハは笹井さんの肩に乗っている。

 途中で他の班の人たちと合流したが他の班も行進して講堂に向かっているようだ。

私たちは4班の後ろについて講堂へ向かっていく。行進をチェックしている人がいたので少し緊張しながら進む。


 講堂へ入ると紅白のたれ弾幕がはられ椅子が並んでいた。行進のまま自分の席に行き姿勢を正す。

着席の合図で一斉に座る、どうやら行進は合格のようだ。そのまま式の進行を確認していき特に問題なく終わる。司会が隣のスーツをきた男性に声をかけると男性は壇上に上がり話し始める。


「皆さんこんにちは。魔導士協会日本支長の安部明晴です。みなさん入学おめでとう。

明日は式典に参加できないので今日挨拶させてもらいます。」


一瞬あたりがざわつく。


「みなさんはこれから魔力を制御する力をつけるのと同時に有事に対応できる力をつけてもらいます。近年生態系は変化し、狂暴化したヨウセイの発見例もあります。」


ニュースや新聞でもヨウセイの狂暴化なんて報道されていない。被害が出ていないからだろうか?もしくは混乱を避けるために隠ぺいしているのかもしれない。


「幸い魔導士が迅速に対応し被害はありませんでしたが、これからどうなるかはわかりません。

魔導士の卵であるあなたたちは自衛手段を学び、有事の際は人を守れるようにならなければなりません。」


魔導士は世間が思っているよりずっと危険な仕事だった。

未知の生物と戦い、災害があれば軍隊と同じように劣悪な環境での救助活動。

ただでさえ候補生が少ないのに魔導士になれる人数はもっと少ない。


「こんな話をされて不安かもしれませんが、まずは魔導士協会の認定試験に合格することです。魔導士にならなければ危険なことをすることはありませんから。私からの挨拶はこれで終わりです」


そういって支部長は壇上から降りる。支部長の話を聞いた新入生の空気は重い。

 私は何を目指すのだろうか?そもそも魔導士を目指してこの学校に入ったわけではない。制御を学ぶために強制的に入れられた人間だ。でも危険が迫っていることを知っていて、守れる力があるのに知らないふりをして生きることは私には出来ない。でもせめて両親や友人くらい守れるようになりたい。


「近衛ちゃん? 寮に戻るよ」


千歳先輩に呼ばれハッとあたりを見回す。他の班は班ごとに講堂から出ていた。

慌てて皆と合流して、寮に向かう。

 寮に戻り各自制服に着替え食堂に向かうと、談話室で待機と言われる。

しばらく待機していると千歳先輩が呼びに来た。


「おまたせ~。皆食堂へ行こう!」


ハイテンションな千歳先輩を追うようについていく。

食堂の扉をなぜか千歳先輩は開けず、前にいた藤原君に勢いよく開けるように指示する。

藤原君が不審そうに扉を勢いよくかけるとパンッっとクラッカーのなる音と紙吹雪が私たちを襲う。

皆驚いて固まっていると


「ようこそ第一寮へ!」


先輩たちが一斉に歓迎の言葉を言い、こっちこっちと私たちを中へ誘導する。

中に入るといつものテーブルと椅子は端に片付けられ、長テーブルの上にたくさんの料理が並べてある。

私たちが誘導された位置に着くとと寮長が前に出て挨拶を始める。


「新入生諸君! ようこそ我らが第一寮へ。まずは寮生の証を君たちに渡そう」


寮長が手をたたくと寮長の後ろにいた先輩がバッジを制服に着けてくれる。

先輩の制服を見るとラインが3本なので三年生だろう。バッジは鷹が羽を広げているデザインでかっこいい。


「よく似合っているぞ。寮章については後で佐藤指導学生から説明があるのでしっかりと聞くこと。

では食事にしよう!」


皆が料理を取り食べ始める。何人かの先輩に声を掛けられ自己紹介をする。にぎやかな昼食だった。

 昼食も終わり千歳先輩に談話室に連れていかれる。


「寮章について説明するね。寮章は通信機の役割があって通常は5班全員に通信が行くように設定されています。寮章に触れながら個人名を設定して通信すると個人に発信できるよ」

「どうやって通信するんすか?」

「デバイスが来てからになるけど魔力に言葉を乗せる感覚かな。こればっかりは感覚で覚えるしかないけどね。受信だけならデバイスがなくてもできるからこれからの全体連絡や班内連絡は全部これ」


――こんな感じに連絡するからね。一応タブレットにも全体連絡は来るから―― 


頭に声が響く。なんとも言えない奇妙な感覚で笹井さん以外の人が顔をゆがめる。


「徐々に慣れて来るから大丈夫だよ。私もすぐになれたし」


最初は船酔いのような症状を訴える人もいるから症状がひどい場合は寮章の裏にあるボタンでオフにするといいと教えてくれた。


「明日の予定だけど入学式後はデバイスと学生証を受け取ったら寮に戻ってきてね。

昼食後に格闘術と魔法戦闘術の装備点検をするから作業服2種できてね。黒のほうだよ」

「はい」


皆がばらばらに返事をする。


「作業服はそれ専用の通信機があるから寮章はつけてこないように。

それと明日から課題がぐんと増えるから覚悟するように。それじゃ解散!」


千歳先輩は恐ろしいことをいって談話室から出ていく。


「おい、まじかよ。今でさえきついのにこれ以上増えるのかよ」

「やるしかないでしょう。卒業したかったら」

「そ、そうだね。がんばろう!」

「少しなら私も手伝えるから皆頑張りましょう?」

「勉強は無理だが格闘術なら教えられる。だからそんな絶望した顔をするな」


そういって成人組がフォローしてくれた。その言葉をきいてなんとか頑張ろうと自分を奮い立たせる。とりあえず解散することになり部屋に戻る。


まずは今日の課題を終わらせなければと思い課題を進める。明日から今よりもきつくなるならば自由時間は今よりもっと減るだろう。

頭の中で何となくスケジュールを組んでみると座学の授業は参加自由なので、時間的にはそんなにきつくないと思えた。

課題を終わらせて時計を見るといつもより少し早く終わった。課題を提出すると通信が飛んでくる。


――近衛ちゃんおつかれ~。自由選択単位は何を取るか決めたかな? 

期限明日までなので提出するように以上――

すっかり忘れていた。急いでタブレットで選択できる科目を調べる。

 科目はほとんどが必須科目の応用が多く残りは語学だった。

選択科目は4つだったのでとりあえずと格闘術応用、魔術戦闘術応用は資料に必須と赤字でコメントが書かれていたので選択する。

残り2つは英語となじみのあるドイツ語を選択して千歳先輩に提出して夕食を食べに食堂に向かう。

 食堂には何人か先輩が食事をしていたので空いている席について食事をする。

先輩たちは食べながらタブレットを操作しているようで、なんだか忙しそうだ。

食事を終えて部屋に戻ると紫苑が私のベッドの上で寝ている。

紫苑をどかすのはかわいそうなので起こさないようにベッドにもぐりこんで眠りにつく。 


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