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あなたに教えてもらったこと

作者: 流昂貴

なんか中途半端な感じですみません。

あなたに会えたこと、私は覚えていたい。

忘れたくない。


どうして私は忘れてしまうんだろう。

覚えたいことも忘れたくないことも全部、自分の意思に関係なく忘れてしまう。



どうしてこんな身体に生まれてしまったんだろう。





あなたに教えてもらったこと





「あかりーっ!」


誰かを呼んでいる人の、声。

女の子の、多分私と同じくらいの。


振り向くと、彼女は私の顔を見て笑いかけた。



――誰だっけ。



思い出せない。

でも彼女は私を知っている。



彼女は私に駆け寄って、息を切らしながらこちらを見た。


「どうしたの?あ、もしかしてわからない?私は、雪奈。あかり・・・――あなたの友達だよ!」

「とも、だち・・・・・・?」


それでも私にはわからない。

自分の名前さえも、思い出せない。



私の名前は『あかり』っていうの?

そしてあなたはその『あかり』の友達なの?



――わからない、覚えてない。



「まあ、仕方ないんだけどね」


そう言って笑う彼女の話によれば、私は一日経つとその日あったことを忘れてしまう病気らしい。

名前もない、記憶を忘れる以外は至って健康、というそんな変な病気。


なんでそんな病気になったのかはわからない。

ただ、気付けばなっていた。



「あ、そうだ。あかりが毎日つけてる日記があるんだよ!明日の自分が困らないようにって」

「・・・日記・・・・・・?」


その日記に書いてあったのは、私の覚えていない生活。

一枚一枚めくっていくと、ふと中に違う文字が混ざっていた。


めくる度に何度も何度も見かける、その私とは違う字。


どうやらそれは記憶がない中で私が出会った、ある男の子らしかった。

その男の子と、私はまるで交換日記のように日記で会話をしている。



――そして最後のページ。

彼で終わっているそれは、私への言葉だった。




『君はこれを読むとき、僕のことは覚えていないと思う。

それでもいい。


ただ、一人だなんて思わないで。


君は一人じゃないよ。

家族も、友達も、いるから。


僕のことは忘れてもいいから、

これだけは覚えていて欲しい。


忘れてしまっても、何度もこの日記を読んで、思い出して欲しい』




名前も、顔も、存在すら覚えていない。

なのに、涙が出た。

涙が出て、止まらなかった。

ありがとう。

きっと明日はまた忘れてしまうだろうけれど、また明日もこうして私はあなたを知る。


この日記を書く限り、私はあなたを忘れない。




――また、明日。

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