2. 梅雨は明けていました
部活頑張った。定期テストも頑張った。
なんだかんだと、皆、部活と勉強の両立しているみたいで、私の頑張りはまだまだ足らないっていう成績でした。進学校だけあってハンパない記憶力を持つ方々が沢山いるんだよね。私なんかホント平凡な普通の子になっちゃった。
それでも充実した高校生活を送っている。彼はいないけど…そのことで悲しんだりはしていない。形だけだけどフィアンセはいるし。
梅雨が明けた。
夏休みまで後もう少し。
学校に通う合間にパスポートをとって、大きなキャスター付きバッグも買った。いや買ってもらった。親に。嘘いっぱいついているだけでも心苦しいのに、私のために散財させることが更に心苦しい。心苦しいと思うくらいには親子関係は良好なんだな。
シュリさんは例の皇子の招待って話を両親にして、ニューカレドニア大使館のサイン入り書類を見せて納得させてしまった。うさ君の従者パネエ。
裏月にいくのはお盆前の8月4日から14日の10日間。行き帰りの飛行機で2日取られるから実際裏月に滞在するのは8日間弱。前回と同じくらい。
今回はフィアンセとして行くから、国民へのご挨拶とパーティくらいは参加しなくちゃならないけど、殆ど観光と避暑で済むみたい。
ニューカレドニアで空港から次元ゲートがある島へ行けば観光は出来そうだし。
初海外にちょっとドキドキしている。入国審査は英語で良いのかな? フランス語が公用語だよなあ。日常会話くらいは知っておいた方がいいか。ボンジュール…英語より話すのが恥ずかしいんだけど。
夏休み前から親にも周りにも、部活と勉強を一生懸命している姿をみせて(本当に頑張ったんだよ!)、宿題もほとんど終わらせた私はえらい!
友達には春に知り合ったの伝手で短期留学しに行くと話をした。へんぴな所に行くからお土産は期待しないでと言って。
一週間に1度はシュリさんと会って、お茶しながら話して、着々と裏月へ行く準備を整えました。
「姉ちゃん、海外かあ。良いなあ。俺も行きてえ。」
弟の孝幸がソファに寝そべって、棒付きアイスを食べながら恨めしそうな視線を私によこす。
「受験生が何言っているの。あんたの第一志望、うちの高校より上のとこでしょ。勉強してなさい。」
「そりゃそうなんだけど、さあ。…姉ちゃんこそ余裕だよな。いったい何処がそんなに気に入られたんだか。」
あー、頭良い弟なもんで、怪しいぞの視線がビシバシ突き刺さる。うう、知らんぷり知らんぷり。
前回は往復夜の自家用機で景色なんて見ていない、向こうではお屋敷から出なかったという怪しさまんてんの説明だもん。無理ありすぎ。今回は出来るだけ説明出来る景色を覚えてこなくちゃ。
そして私の何処が気に入ったか、私にもわかりません。
説明はしたいけど、異世界のこと勝手にバラしたら私は裏月の犯罪者ですよ。秘密なんです。ヘタしたら抹殺されちゃう。
気配りの人であっても、胃痛なんてものには縁が無かった私だけど、最近胃だか心が痛むことがある。秘密を持っていることに対して、人並みの罪悪感は持っています。でもあえて忘れる。…私は図太い、気にしないと自己暗示をかける。
初めての海外旅行で本当は浮かれたいとこだけど、我慢我慢。
弟よ、君の質問はにこって笑って流すよ。
8月に入った。
暑い中部活に通う。図書館にも通う。
4日、シュリさんと牛さんことバックスさんのお迎えで成田空港へ向かう。この暑い中バックスさんはスーツを着ている。私とシュリさんはポロシャツに半ズボンにサンダルでリゾートで過ごすための格好だ。
バックスさんが持つと荷物が小さく軽そうにみえる。まあ、下着と最低限の洋服しか持って行かないから、バッグの中はガラガラだ。
バックスさんはここまで。シュリさんと2人で残りは移動です。
空港でキョロキョロしてしまうのは許して。機内食に目を輝かせたのも見逃してほしい。
成田を飛び立った飛行機は真っ青な空を下降して、真っ青な海に囲まれた島に着陸した。
ニューカレドニア、到着です。まさにザ海外に来たーって感じの所。日本と全く違う。感動だわ。
でもあれよあれよというまに小型の船に乗せられて…揺れる揺れる、船酔いしてます。なんでいつも裏月絡みで気持ち悪くなるのよとわめきたいけど、私は青い顔して長いすにへばりついていた。
側にいるシュリさん、何ともない。いつもながら流石です。
カナックと呼ばれるメラネシア人の男の人3人の案内で、1時間ほどして緑の多い島の一つに到着した。
ジープのお迎えが来ていて、乗り換えです。ああ、地面は有り難し。見たこと無いほど青い海はきれいで感動したけど、気持ち悪い原因となれば海はもうお断り気分。
ジープには若い人とおじいさんがすでに乗っていた。
「透子ちゃん、お疲れ様。あともう少しだからね。この方はここの次元ゲートの管理人よ。」
しわが多くて日に焼けたクルンとした白髪のおじいさんに頭を下げて日本語で挨拶する。感情をこめて。これでいいんだよね。
『新たなお仲間に会うのは久しぶりだな。ここで次元ゲートがつながるのは夜だ。それまでゆっくりするがよい。』
時差は2時間とはいえ、ここまで成田まで3時間、フライトに8時間、船で1時間と家出てすでに半日が過ぎたのだ。疲れました。浮かれ気分はすでに消えました。
コテージのような南国感多めの建物の応接間でフルーツジュースをいただく。お腹はあいにく空いていない。
たぶんさっきのおじいさんはシュリさんのような獣人だ。世界中にいるのかな? ラジオからは綺麗な楽器の音と声が聞こえている。半分目をつむり、音楽に揺られて時間をつぶした。
夜空にいつも見えるのとはちがう南半球の星が見えた頃、次元ゲートへと案内された。
南国の木々のあいだに真っ白い石造りの囲い、灯されているランプの陰が柱に大きく映る。
囲いの中心に立ち、荷物を足下に置き、持ち手を掴む。反対の手でシュリさんと手をつなぐ。シュリさんは大きなスーツケースの他に、巨大なリュックサックをしょっている。
おじいさんが腕時計に目をやり、大きく深呼吸してから低い声で歌のような言葉を紡ぎ出した。歌声がゲートへ吸い込まれていく気がする。
『行ってくるが良い。』
うさ君顔を思い浮かべる。小学生ではない、今の皇子となった姿を。
再び私は裏月へ向かった。
説明ばっかりで長くなってしまいました orz
次回から再び裏月での生活です。




