表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
girl friend  作者: 柚木 ココ
13/35

ランチタイムの楽しみ方

昼休み、教室前の廊下で。

って、みやと今朝約束したから。

私は4限目が終わったらすぐ、廊下に出て待機していた。

手には昨日の夜、お母さんと一緒につくったお弁当。

みやにも少し食べてもらえたらなって思って、おかずを多めに持ってきたので、今日はいつもより少しだけ、重たい。


そわそわしながら、みやを待つ。

昼休みになったばかりの廊下は、教室から出てきた生徒でがやがやと賑わっているけれど、目を閉じれば自分の心臓の音が1番大きく聞こえる。

いつまでたっても、このどきどきには、慣れないなあ。



「しーのちゃん!おまたせっ!」


「んぎゃ!?」


明るい声と共に後ろからぎゅっとされて、驚いた私は思わず変な声を上げてしまう。

みや…ではない。

知らない声に知らない香り。

甘い花のような、良い匂いだけど。

だ、だれ…?

おそるおそる振り返って顔を見ると、ポニーテールの女の子だった。


「やー、やっぱり小さいー!可愛いなあ!」


なんて言って、まだぎゅっとしたまま離してくれないので、私は困ってしまう。


「え、えっと…あの…」


とりあえず何も出来ず、じっとしていると、よく知っている声がした。


「こら、葉鳥!一番乗りで教室飛び出したかと思えば…しのが困ってるでしょうが」


その声の主がポニーテールの子を引き離してくれたので、私はやっと解放された。

心臓がばくばくしている。


「み、みや…」


私はみやの顔が見られてホッとする。

ポニーテールの女の子はごめんごめんと言いながら、ははと笑った。

話したことはないけど、この子のことは、知ってる。

みやと同じクラスの、みやのお友だちだ。


「しかも、葉鳥、お弁当忘れてるし」


そう言いながら、教室からふんわりボブの女の子が出て来た。

この子も、そう、よくみやと一緒にいる子。


「しのちゃん、ごめんね。バカがびっくりさせちゃって」


そう言ってふんわりと微笑まれて、私は慌ててぶんぶんと首を振った。


「いっいえ…大丈夫、です!」


そして、どういうこと?って気持ちを込めて、みやを見る。

みやは私と目が合うと、困ったような、申し訳なさそうな顔になった。


「ごめん、しの。振り切れなかったんだ」


「え?」


頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

フリキレナカッタ、とな?


「みや、ひどいなー!私たちがお邪魔みたいに!」


ポニーテールさんがそう憤慨すると、みやはズバッと「みたいじゃなくて、お邪魔!」と言いきった。


「いいじゃん、いいじゃん!私たちだって、しのちゃんと一緒にお昼食べたいー」


そう言いながら、また私をぎゅっとしたけれど、今度はすぐにみやに引きはがされた。


「だから、しのを困らせないでってば!」


「みや、ひどいよー!冷たいー!私だって、しのちゃんと仲良くしたいんだもん!」


ポニーテールさんがバタバタとする。

隣でボブさんもにこにこ笑っていった。


「いいじゃん、お昼一緒にしたって。私も、しのちゃんと話してみたかったんだー」


「あのねー」


みやが渋い顔をしているので、私はおそるおそる手をあげた。


「あ、あの…私は別に、いいですけど」


「わー、しのちゃんっ!いい子っ!」


「しのちゃん、ありがとー。ほら、みや、しのちゃんもそう言ってるし」


今度は両脇から2人にくっつかれた。

2人ともそれぞれ良い匂い。

女の子って柔らかいなーとか、ちょっと考えてしまう。

みやは、額をおさえて、はあーとため息をついた。


「しかたないな…じゃ、喫茶スペースいくか」


わーい、と、ポニーテールさんは両手を上げて、ボブさんは「お弁当、自分で持てよ」と言って、ポニーテールさんにお弁当袋を突き出した。



***



ポニーテールさんは、葉鳥沙奈佳(はとりさなか)ちゃん、ボブさんは、島野花(しまのはな)ちゃんというのだと、自己紹介してくれた。

2人とも良い子そうで、人見知りな私はちょっとホッとする。


喫茶スペースは夏場はうっすらと冷房が効いていて、涼を求める生徒たちで賑わっている。

簡単な購買と自動販売機が隅にあって、生徒たちがその場で食べられるようにとテーブルが配置されているのだけれど、空いている席を見つけるのはなかなか容易じゃない。

でも、はとりちゃんがさっと動いて、4人分の席を確保してくれた。


「相変わらず、あんたは席を見つけるのが得意だよねー」


花ちゃんが半ば呆れたようにそう言うと、葉鳥ちゃんは得意気にニヤッと笑った。


「こーゆーのはねえ、ばっと見つけてさっと座るのがコツなわけよ!躊躇ったらその時点で負けだね!」


「…はいはい、それより早く食べましょね」


花ちゃんは軽く流してお弁当を出す。

私たちもそれぞれお弁当を広げたけれど、みやは菓子パンをひとつ出しただけ。


「…あれ、みやは今日、お昼、それだけ?」


思わず聞くと、みやは困ったように笑った。


「やー、今朝、寝坊しちゃってさ。お弁当つくれなかったの」


みやの家は母子家庭。

お母さんが遅くまで働いてるから、お弁当はみやが自分でつくってるのは知ってる。

みやも、大変なのだ。

…でも、今日はつくれなかったというなら、ちょうどよかったかな、と思って、私は自分のお弁当と別にしていたタッパーを取り出した。


「…今日、せっかく一緒にお弁当食べるからって思って、おかず、多めに作って来たの。よければ、食べて?」


ドキドキしながら、反応を盗み見る。

料理は慣れないながら、頑張った甲斐もあり、見た目はまあまあだとは思うんだけど…

余計なことを、とか、いらない、とか、言われ…ないよね?


「え、すごい!しのがつくったの?」


私の心配をよそに、みやはすぐ、目を輝かせてそう言ってくれた。

私は少し恥ずかしくなる。


「…お母さんと一緒にだけど」


「わー、しのちゃん、すごい!美味しそう!私ももらっていいー?」


葉鳥ちゃんも身を乗り出したのを、みやがさっとタッパーを引き寄せた。


「だめー!これ、私の!」


「えー、何それ!みやのケチ!」


葉鳥ちゃんが口を尖らせて言う。

みやは毛を逆立てて餌を守る猫みたい。

私は思わず笑ってしまう。


「たくさんあるから…みんなで食べて」


そう言うと、


「わ、ありがと。いただきます」


と言って、花ちゃんが一番に箸を出して、玉子焼きを取った。


「「あ」」


出遅れたみやと葉鳥ちゃんはポカンと口を開ける。

花ちゃんは構わずモグモグして、にっこり微笑んでくれた。


「しのちゃん、じょうずー。すごく美味しいよー」


「あ、ありがと…」


ちょっと呆気にとられながら、私もホッとして笑顔になる。

みやと葉鳥ちゃんも、我先にと食べ始める。


「それ、私のコロッケ!」


「その玉子焼きは私がもらった!」


なんて言いながら。

その隙を花ちゃんがとってパクパク食べる。

…としているうちに、あっという間に完食してしまった。


「しの、美味しかった!ごちそうさま!」


そう言って笑ってくれたみやが可愛くて、私はキュンとなる。

がんばって作って来てよかったな…なんて思って。

心の中で小さくガッツポーズ。

みやがいつも自分でごはんつくっているのは知ってるから、たまにはひとが作ったごはんも、食べたくなるものね。

また作ってこよう、なんて小さく決意したりして。


「しのちゃん、本当美味しかったー!また作ってね!」


「本当に、ごちそうさまー」


葉鳥ちゃんと花ちゃんもそう言ってくれる。みやのために作ったごはんだったけど、こうしてみんなで食べるのも楽しかったから、私はよかったなって、嬉しくなる。


「でも、本当に今日、しのちゃんと一緒にお昼できてよかったなー!」


「ねー」


「よくしのちゃん、みやに会いに私たちの教室きてたでしょ?可愛い子が来てるなーって思っててさ!」


「でも、みやってば、お願いしても全然紹介してくれないんだもん。まるで、しのちゃんを守るナイトみたいに」


葉鳥ちゃんと花ちゃんが茶化すように言う。

みやは少しあかくなって、


「うるさいなー、だって、あんたらみたいに騒がしいのがきたら、しのがびっくりするかなって思って、それで…」


なんて、もごもご言ってた。


私は少しくすぐったいような気持ちになる。

やっぱり、2人で居る時とはちょっと違うみやが見れて、それはそれで可愛くて、嬉しい。

葉鳥ちゃんと花ちゃんも良い子だし、最初は、みやと2人きりじゃなくて残念…とか思ったけど、これはこれでよかったのかもしれない。


また一緒にお昼しようね、なんて約束して、私たちは教室に戻った。

私は、次はノニちゃんも誘ってみようかな、なんて思う。

ランチタイムは賑やかにするのも、楽しいもの。


そして、あれって、思い出した。

そういえば、みやがみやのお姉さん…すみれちゃんから聞いた穴場スポットって何処だったんだろ?

まさか、喫茶スペースは穴場とはいえないしなあ…

って、ひとり小さく、首を傾げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ