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girl friend  作者: 柚木 ココ
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会いたいの解決法3


微妙かな?なんて思った忘れ物作戦だけど、繰り返すうちに癖になってしまったみたい。

最初は、ちょっとでもみやに会えたら嬉しいなって、1回だけ、って、思ってたんだけど。

みやの教室をのぞくことが楽しくて。

みやの教室での表情を見られることが新鮮で。

私はついつい、そのきっかけに、忘れ物を利用してしまっていた。

そんなきっかけがないと会いに行けない、私は意気地なしだ。




「…しのさあ、最近忘れ物多くない?」


今日も情報の教科書を借りにきた私に、みやは呆れ顔で言った。

私は、ぎくりとなる。


「前は忘れ物とかなかったのに。最近疲れてるの?大丈夫?」


呆れながらも心配してくれるみや。

優しいなあとじんわりしながらも、罪悪感が刺さる。


「いやあ、ははは…」


笑ってごまかすと、怪訝な顔をされた。


「でも、たまたま私が教科書を持ってきてたからいいものの、私だって同じ授業がなければ持ってないんだからね。忘れ物は気をつけないと」


「う、うん、そうだね!」


そう言いながらも、みやが持ってない教科書を忘れるわけない。

だって、みやのクラスの時間割を見て何を忘れるか決めてるんだもの。

…でも、そんなことは口が裂けても言えない。


「じゃ、じゃあ、私、パソコン室に行かなきゃだから…」


「ああ、うん、またね」


みやから借りた教科書を、移動教室用の手提げバッグに入れて、私は逃げるようにその場を離れようとした。

が、


「きゃ!」


教室に入ろうと走ってきた男の子にぶつかってしまった。

思わず手放した手提げバッグが落ちて、中身が散らばる。


「わ、ごめん!!」


ぶつかってきた子は慌てて謝り、散らばった教科書を拾おうとした。


「あ、えっと、大丈夫です!」


私も慌てて拾おうとして…


「あ」


と固まった。


「え、教科書、二冊…?」


みやが情報の教科書を拾い上げる。


「『篠原朝海』…」


教科書に書かれた名前を読み上げて、眉根を寄せる。

私は目を泳がせた。

教科書、忘れたつもりが、持ってきちゃってたんだ。

今までの学校生活で培ってしまった習慣が恐ろしい。

昨日の夜、移動教室用の教科書類は全部まとめてバックに入れてしまったのだ。

忘れ物をするのを忘れたなんて、なんたる失態。


「しの…どうゆうこと?」


みやの声に戸惑いと同時に怒りを感じる。

私はすっと背筋が冷たくなった。


「しの、こっちにきて」


みやに手をひかれて、私はおとなしくついて行く。

ぶつかってきた男の子はオロオロしていたけど、今はそれどころじゃない。

みやは怒ると怖いのだ。

いつもは優しいけど、その分、怒ると怖い。


「さて、どうゆうことなのかな?」


人目につかない階段の裏で、みやは両腕を組んで私を見下ろした。

私は小さくなるしかない。

後悔。

後悔。

なんで馬鹿なことしたんだろ。

みやが嘘とかずるいことが嫌いなのは知ってるのに。


「しのが忘れ物ばっかりって、おかしいと思ってたの。今までそんなことなかったから。持ってるのに借りに来てたんでしょ?なんでそんなことしたの?」


本当のこと話したら、呆れられちゃうかな?

おかしいって、気持ち悪いって、嫌われちゃわないかな?

逃げたいというずるい気持ちが顔をもたげる中…私は覚悟した。

やっぱり正直に話すしかない。

みやは誤魔化すのが嫌いだから。

嘘を重ねたら、それこそ嫌われちゃう。


「…みやに、会いたかったら」


「え?」


下を向きながら、小さな声で、口を開いた。

みやは、ぽかんとした顔で聞き返す。


「みやに、会いたかったから!」


私はもう一度、声を少し大きくして言った。


「…みやと、学校では会える時間、あんまりないから…みやに会いに行くきっかけが欲しくて…忘れ物するしか思いつかなくて…それで、ごめんなさい…だから…」


言葉を紡ぎながら、涙目になるのがわかる。

ああ、みやは私のこと、気持ち悪いって思うかな。

嫌われちゃうかな。

おそるおそる、みやの表情をうかがおうと、顔をあげようとした。

ら、ぎゅっと抱きしめられていた。


「み、みや…?」


「…もう、なに、馬鹿なことしてんの」


表情は見えないけど、耳元で聞こえる声が怒っていないことはわかる。


「忘れ物、私だっていつも貸せるわけじゃないと思うし、忘れ物ばっかりして、変な癖になったらこの先困るし、内申にだってひびくかもしれないんだからね」


「は、はい…」


「反省したならもう、こんなことはしないこと」


「うん…」


うなずくと、そっとみやは身体を離して、私の頭をぽんぽんとした。


「そしたら、もう泣かないの」


みやの優しい顔に、私はつい、ぼーっとしてしまう。


「みや、もう、怒ってない…?」


と、聞いたら、


「理由が可愛かったから許す」


と言って笑ってくれた。


「よかった…」


私はホッとして、一度引っ込んだ涙がもう一度でてきてしまう。


「こらこら、泣くなって言ったのに」


「ご、ごめん…」


みやは困ったように笑いながら、私の涙をハンカチで拭った。


「…しの、これ、貸したげる」


「え?」


「そんな顔で次の授業いったら、変に思われちゃうだろうから、ちゃんと顔拭いてからいくこと。…あと、ハンカチは後で返しに来てくれればいいからさ」


「う、うん!」


私はハンカチをきゅっと握りしめた。

嬉しくなる。

だって、それって、また、会いに行っていいってことだもんね?

急に明るい顔をした私を、みやは、「もう笑った」なんて言って笑った。

そして、ちょっと視線をそらしながら、こう言った。


「…あー、あとさ、よければ明日、一緒にお昼食べない?」


それは願ってもない嬉しい申し出で。

私はもちろん、と、こくこく頷いた。

みやはちょっと照れくさそうにしていて。


「ほら、もう次の授業行かないとやばいんじゃない?」


なんて言うから、私も、そうだって、そそくさとその場を離れようと背を向けたら、手首を掴まれた。

くいっと引き寄せられて、そっと耳元で囁かれる、みやの声。


「…会いたかったのは、私も、だから。明日、楽しみにしてる」


それは一瞬のことで、私が振り返ったときには、みやはもう背を向けてしまっていた。

そのせいで表情は見れなかったけど、きっと今の私と同じ顔をしてるんじゃないかと思う。

私もそのまま移動教室へと歩き出したけど、どきどきする鼓動は、なかなかおさまってくれそうになかった。


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