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girl friend  作者: 柚木 ココ
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会いたいの解決法2

「みやっ!」


私が駆け寄ると、みやは頭をポンポンとしてくれた。


「しの、犬みたい」


「…うー、わん!」


「ばか」


そう言って笑うみや。

私は胸の奥がきゅんとなる。

本当に私が犬だったら、耳をピンとたてて、全力で尻尾を振っていると思う。

きっと、みやの周りを駆け回って、まとわりついて、全身で喜びを表現するよ。

そのくらい、会えて嬉しい。


「それで、どうしたの?」


私が尋ねるとみやは、ああ、と思い出したように言った。


「次、日本史なんだけど、資料集忘れちゃってさ。持ってたら貸してくんない?」


「資料集ね!持ってるから、ちょっと待ってて」


私はすぐに自分のロッカーから資料集を取り出した。

みやのところへ戻って、私はそれを手渡す。


「はい、私今日はもう日本史の授業ないから、返すのは放課後でいいよ」


「さんきゅー」


みやはそう言うと、またね、って、頭をポンポンして、自分の教室へ帰って行った。


あれ。

取り残された私は思う。


…それだけ?!

って。


だって、せっかく久しぶりに会えたのに!っていっても、朝会ってるから久しぶりではないんだろうけど…

それでも、もうちょっと何か話したりしたっていいんじゃないだろうか…

私が犬だったら、きっと今は耳をうなだれて、尻尾も力なく下を向いてるよ…


「しの、なんか背中に哀愁が漂ってるみたいだけど」


気がつくとノニちゃんが後ろにいた。


「もうすぐ授業始まるから、席についた方がいいよ。さっき予鈴なったから」


なるほど、先生が既に教壇に立っている。

私は慌てて、自分の席へ戻った。



授業中、私は考えた。

考えて、閃いた。

とっても簡単なことだけど…

学校にいる間にも、みやに会える方法。

さっそく明日、実行しようって、こっそり思った。



***



翌日。


1時間目が終わった後の休み時間、私はどきどきしながらみやの教室を覗き込んだ。

別のクラスって、自分のクラスとは教室の雰囲気も全然違う気がする。

ロッカーも、机も、全部同じ造りのはずなのに、こうも違うのはやっぱり構成する人の問題なのだろうか。

今月の目標が書かれた黒板も、世界地図が貼られた壁も、漫画本が並んだロッカーの上も…なんだか新鮮な気がする。

他人の部屋を覗いているようで、少し緊張した。


きょろきょろすると、窓際の後ろから2番目の席に、みやを見つけた。

みやは自分の席に座って、周りの友だちと話しているみたい。

ポニーテールの女の子と、ふんわりしたボブの女の子。

2人とも、たぶん高校に入ってからのみやの友だちで、よく一緒にいるのを見かける。みやの話題にもよく出てくる子たちだと思う。


遠くから眺めて、ああ、みやは教室ではこんな顔をして笑うんだなって思う。

何が違うというわけではないんだけど、何かが違う気がして。

なんだか私の知らないみやがいる気がして。

私はちょっと…不思議な気分になった。


「あの…誰かに用ですか?」


「はっ」


背後から声をかけられて、振り返ると、眼鏡の男の子が立っていた。


「…いや、僕、このクラスで、中に入りたいんですけど…」


そう言われて、はじめて自分が入り口をふさいでしまっていたことに気づく。


「ご、ごごごごめんなさい!」


慌てて入り口から離れると、男の子は不思議そうに首を傾げた。


「それで、誰かに用事じゃないんですか?」


親切そうな子なのだけど、私は少しきょどってしまう。


「あ、あああの、みやをっ!」


「みや?」


「あ、本宮裕さんを…呼びたくて」


「ああ、本宮さんね」


男の子はそう言って、私のすぐ後ろに目を向ける。


「…もう、いるみたいだけど」


「え?」


振り返ると、みやが立っていた。

呆れたように私を見ている。


「…しの、なにしてんの?」


「み、みやー」


私はなんだか脱力してしまい、弱々しくみやの名前を呼んだ。

いつものみやが目の前にいて、ちょっとホッとした自分がいる。


「…じゃ、大丈夫そうだから、僕はこれで」


「ああ、ありがとね、西田」


そう言って教室へ入っていく男の子に、みやがお礼を言う。

良い子だな、西田君。

私もそっと心の中でお礼を言った。


「…それで、しの、どうしたの?」


「ああ、そうだ!」


今日、私がここに来た、目的は。


「次美術なんだけど、色鉛筆忘れちゃって、貸してくれないかな?」


「ああー、いいよ」


みやはそう言うと、色鉛筆を持って来てくれた。


「しのが忘れ物なんて、めずらしいね」


なんて言って。

私はこっそり、ギクリとした。


「そ、そうかなー」


私が笑ってごまかすと、みやはふーんと言った。


「それより、次美術なら移動教室じゃん」


「あ、うん、そうなんだけど…」


せっかく会えたんだから、何かお話を…と思ったんだけど。


「美術の美坂先生、準備遅いと怒るから早めに行った方がいいよー」


なんて、背中を押されて、私は、うん、と言うしかなかった。


「また返しに来るね」


って言って、手を振って、みやと別れて、私はひとり、ため息をつく。

うーん、忘れ物作戦、微妙、かな?



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