表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

古栗鼠Ber 其の二

これを書いた時…それは夏と言う季節でした。

 ここは深夜のとあるBer。

 今宵も疲れた心を癒しに、一匹の古栗鼠がそのドアをくぐった。

「いらっしゃいませ」

「こんばんはマスター。今日はいつもよりキツイのを…」

「かしこまりました」

 やつれた体をカウンターに預けるようにその古栗鼠は腰を掛けた。

「…ずいぶんとお疲れのようですね」

 私はコースターに乗せたグラスを滑らせるように差し出した。今夜の一杯目は団栗酒ロックのストレートだ。

 いつもなら水割りなのだが。

「ありがとう。…うん、そうだね、ちょっと疲れてるかな。ハァ…」

 ふと、彼の尻尾を見ると、いつの間にか見事に全て抜け落ちてしまっていた。それだけでも彼のストレスの大きさが想像付く。

 その上、夏毛に抜け替わっただけでは、こうも体が小さくなるものでは無い程、やつれ切っていた。

「何かあったんですか?」

 こんな事は本来なら聞いてはいけないのだが、私はどうしても言わずにはいれなかった。

「あはは…いえね、こんな事、マスターに言ってはいけないのかも知れないけど…。仕事がね。いま団栗酒の原材料調達についての原住りすとの話会いとか、工場の出荷の遅れとか、こり蔵さんの新商品開発の試食とか、こりす先生の新規計画『海の家でガッポリウハウハ♪副産物も手に入れちゃうぞ♪作戦』とか…なんだかとても一杯一杯で…」

 深いため息と共に彼は大きくうなだれた。私は思わずその姿に涙が滲んでしまう。

 そうだ!ここは一つ、何とか彼を勇気付けれないものだろうか?私は黙ってグラスを拭きながら必死で考えた。

 そして私は、おもむろに手に持っていたグラスに氷と団栗酒を入れて決死の覚悟で口を開いた。

「こ…こり男さん、これは私からのサービスでシマウマ!」

「し、しまうま?」

 驚いた顔のこり男さん、恥ずかしさで顔から火が出そうな私たちを店内の静かな音楽がそっと包み込んだ。

 ここは深夜の古栗鼠Ber。

 貴方ももしお疲れなら是非お寄り下さい。静かな音楽と寛げる空間、そしてリスの為に作られた団栗酒をお出しします。

 ……もちろん、駄洒落だじゃれは抜きでございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ