私の誕生日
私、中井陽子はいま、絶賛幸せ中です。
夫の孝宏と、毎日一緒に寝て起きて、ご飯食べてお風呂に入って。幸せすぎて、死んじゃいそうです。
新婚生活さいこー。
でも、悩みが一つあるんです。それは、孝宏がホラーマニアだからです。
こないだなんて、夜にホラー映画見せられて、眠れないかったんですから。酷いものです。
でも、私は孝宏のことが大好きなので、苦にはなりません。
ですが一度だけ、そう、あれは私の誕生日のことです。死を覚悟してしまうような事件がありました。
半年前のことです。
○ □ ○ □ ○
「おはよー、孝宏」
時刻は午前七時。いつものように私が先に目が覚め、一緒にベットで寝ている孝宏を揺さぶりながら、起こした。
孝宏のわき腹辺りを、肌の温もりを感じながら起こすのが、朝の楽しみでもある。
「んー、おはよー」
孝宏は目を擦り起き上がる。こうして、私達の一日は始まるのです。
「もうすぐ帰るから、美味しいケーキ、買ってくからねー」
プー、プーという音がなり、電話が切れた。
時刻は午後六時。孝宏の仕事が終わり帰る時間だ。私の幸せタイムでもある。だって、孝宏が帰ってくる時間だから。
ご飯の準備を早めに済まし、食卓に並べたのでもう仕事は無い。
いつもは読書をしたり、テレビを見たりするのだが、今日はたまたま読む本はなく、見たいテレビもないので、ソファーに座りボーッとしていた。
一時間ほどボーッとしていただろうか、普段は電話がかかってから三十分くらいで帰ってくる孝宏だが、何故か今日は時間がかかっている。
多分、ケーキを買っているからだろう。
--ガチャ
ドアが開く音が鳴り響いた。
帰ってきたかな。
私は出迎えに玄関へ行く。
「おかえり……えっ?」
玄関に立っていたのは、彼氏の孝宏ではなく、全身黒のコートにひょっとこお面を被った、男ともわからない人間が立っていた。
「えーと、どちら様でしょうか?」
鍵を持っているのは孝宏だけのはずだが、入ってこれたってことは、孝宏が渡したのだろうか。それは今はどうでもいい。
この人は誰なんだろうか。
「あのー、どちら様で」
と、突如奴は右手を前に出した。その手に持っていたのは、孝宏と婚約した時の婚約指輪だった。しかもそれは赤くなっている。
「ち、血⁉」
どうして、孝宏の指輪を。なんで血が。
私はパニクってしまい、状況が全く掴めなかった。
奴は指輪をポケットにしまうと、肩に背負ってあったカバンから、柄の大きな包丁をだした。そのポケットにも、真っ赤な血がべっとりとついている。
「え? なに、なんで⁉」
奴は一歩、一歩と近づいてき、包丁を向けてくる。
私は後ろへと下がる。
助けて、孝宏。お願い、助けて。
下がっていると壁にぶつかり、行く所がなくなってしまった。
もう、無理だ。
奴は包丁を私の体の前に向けてきた。
「た、助け……」
--バン
柄の大きな包丁の刃の部分がとれ、薔薇の花が出てきた。
「ハッピーバースデー、陽子」
「え?」
奴はひょっとこの仮面を取った。奴は孝宏だった。
○ □ ○ □ ○
そしてその後、私達はバースデーパーティをして、そこで孝宏からプロポーズをうけ、晴れて結婚することになったのです。
めでたしめでたし。




