13. 首都、ジーベ
お城から出ると、馬車ならぬ魚の乗り物が用意されていた。
大型の魚が二匹、手綱を付けられた状態でキャビンに繋がれている。煌びやかな貝などで装飾された箱状の白いキャビンに乗り込むと、お尻をふわっと包み込むような柔らかな感触で、とても心地が良い。
「少し揺れるかもしれませんが、ご気分が優れないようでしたら言って……仰ってください」
私の向かいに座ったギース隊長がそう言ったけれど、実際御者が合図して車が発進すると、新幹線並に揺れが少ない。
これ、すっごい快適だわ。二匹のお魚さんもピンク色で可愛いし、目がきゅるんとしていて可愛いの。
「乗り心地、凄い良いですね」
「ありがとうございます。これはマーランといって、魚を使った車で主に王族が乗るもので、お、私も数回しか乗った事がないのです」
「隊長さんは、魚にダイレクトに乗るんですか?」
なんとなく映画のイメージで言ってみた。守備隊だから、陸でいう騎士みたいに、魚に乗って仕事しそうだもん。
「そうですね……私達守備隊はトキシリナという大型の魚に乗ります。力も強く、速いスピードで敵に追いつく事が出来ますから。ちなみにマーランはアティルカという、とてもおとなしい魚が引いていますよ」
丁寧に説明をしてくれる隊長さんの声に聞き惚れていると、辺りがサンゴ一帯から街が見えてきた。
「本当に、異世界だあ」
海の中だから辺り一面が青く、白い砂のように地面が明るく平らに整備され、民家や商店のような建物、他の人魚が道を泳いでいる。
皆色とりどりのヒレだから、スキューバダイビングしてるみたい! 地底国って、真っ暗な感じだと思ったけれど全然違う。すっごい綺麗だなあ。
四角い民家は様々な色で、外国の家を見ているよう。首都というだけあって建物も人魚も沢山いて、私はキャビンに嵌められた窓越しに辺りを見渡した。
「カンシーラ国の首都、ジーベです。チヅル様のいた世界とは、大きく異なりますか?」
あまりに見入っていた私に、ギース隊長が声をかけてくる。真剣になると険しい顔をしてしまう私の癖のせいで、ホームシックになったのかと心配になったのだろうか。
「私のいた国は日本というのですが、そこは同じ色の建物が多かったんです。例外もありますけど……。でも、この国のカラフルな家や街並み、とても素敵ですね。昔からですか?」
「十数年前に、隣国からの攻撃にあい壊滅的被害が出ました。カンシーラ国の建物はその時建てられたものが多いので、比較的新しい、のです。色彩豊かなのは、現国王がその時就任して復興に大きく関わった為、その影響が大きいですね。ドン・ギョ王は鮮やかな色を好みますから」
こんな平和そうなのに、隣国から攻撃されるなんて。この国も苦労しているんだな。
「チヅル様、街におりてみますか?」
「いいんですか?」
「その方がこの国を体感できると思います。国王から許可は得ていますので、ご心配なく」
「じゃあ遠慮なく。それから、私に対して敬語や様付けはやめてください。普通に話してくれればいいですから」
先程から、ギース隊長が時折言葉を閊えるのが気になっていた。多分普段はもっと砕けた話し方をするのだろうな。
でも、彼はそれに対して少し困ったような顔をして「それはできません。王命に背きます」と告げた。
「私としては、元は同じくらいの年齢だし突然この国にきて右も左もわからない状態で様付けされるとすごい変な感じなんですよね……。本当に、普通のおばさんでしたから」
「体が変化するという事はありますが、年齢が大きく変化するというのはあまり聞いた事がありません……。失礼ですが、チヅル様は……」
「御年四十歳になります。こちらでの皆さんの平均年齢はわからないのですが、大体人生の折り返し地点くらいの歳ですね」
うう、自分の年齢を改めて言うの恥ずかしい。見た目が若くなっているから余計に。
そしてギース隊長の顔も凄い事になってる。ザ・驚愕という感じで。それでもかっこいいのがずるい。
「吃驚ですよね~おばさんで」
自虐ネタっぽく笑ったら、ハッとした彼が「す、すみません! 決してそういう意味ではなく!」と頭を下げてきた。
「この国の平均寿命を聞いても?」
「カンシーラ国も、チヅル様と同じくらいです。そして私も丁度四十になります」
まさかの同い年キター!




