ホットケーキミックスをぶちまけてくださいな
これを書いていたら、作者もホットケーキが食べたくなってきました。
※なお、この作品は「なろうラジオ大賞7」に応募しています。
何でも、ホットケーキが食べたいと言う。
「じゃあ、一緒に作ろうか」
と提案すると、
「死者は食えないんだろ。だから余計やだよ」
死神さんよお、と彼は不満の声を上げた。
まあまあそんなことは言わずに、と冷蔵庫から卵、牛乳やらを取り出していく。
「ねえ、早くそこからホットケーキミックス取って」
と言うと、はあい、と気の抜けた返事をしながらも、彼は言われたとおりにしてくれた。その間に私は牛乳と卵をどさどさボウルに投入する。
「じゃあ、ここにホットケーキミックスをぶちまけてくださいな」
「いや言い方」
死神さんよお、と呆れた声色が聞こえたが、聞こえないふりをして早く入れて、と急かした。
手早くかき混ぜて。
フライパンを火にかけて油を引いて。
「ここに、このドロドロを流します!」
言い方、と訴える目はもう見て見ぬふりをして、1枚目は私がお手本を見せる。うん、ひっくり返すのも上手くいって、なかなかの出来だ。
「次、やってみる?」
少々ひきつった顔の彼に、有無を言わさずボウルとお玉を渡す。
流すのは、上手くいった。
けれど。
「ああ! 早くひっくり返して!」
裏面がけっこう焦げてしまった。
「だから嫌だって言ったのによお」
死神さんよお、と彼は少し泣きそうだった。嫌だなんて、言ってたっけ? そういえば、作ろうと提案したときに、言っていたような……。
「まあ、大丈夫だよ。きっと香ばしいよ」
と蜂蜜をたっぷりかけている片手間に慰める。よし、焦げている方は、私が食べてあげよう。
「いただきます」
私も彼も、そう言うやいなやフォークとナイフを持ってホットケーキを切り始める。蜂蜜がとろりと垂れる様が、とても蠱惑的だ。
「あ、うめえ!」
彼が喜びの声を上げた。そう叫びながらも、口に入れる手は止まらない。
「もっとゆっくり味わって食べてよ」
私が窘めても、彼は聞かない。
「いやだって、ホントに美味いんだもん」
まあそれはわかる。彼が焼いた焦げている方ですら、その苦味がアクセントに感じるくらい美味しいのだから。
そこで、彼は何かに気づいたようで、食べる手が止まった。
「そういえば、何で俺食い物食えてるの? 死者なのに」
やっと気がついたか。
私は口の端についた蜂蜜を拭ってから、にっこりと笑った。
「まあ、死神の愛情がたっぷり入ってるからね」
やっぱ死神さんには叶わねえわ、と照れたような彼の声が聞こえて、見ると、彼は机に突っ伏しており、かろうじて見える耳は先まで赤くなっていた。
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