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ホットケーキミックスをぶちまけてくださいな

掲載日:2025/12/01

これを書いていたら、作者もホットケーキが食べたくなってきました。


※なお、この作品は「なろうラジオ大賞7」に応募しています。

 何でも、ホットケーキが食べたいと言う。


「じゃあ、一緒に作ろうか」


 と提案すると、


「死者は食えないんだろ。だから余計やだよ」


 死神さんよお、と彼は不満の声を上げた。


 まあまあそんなことは言わずに、と冷蔵庫から卵、牛乳やらを取り出していく。


「ねえ、早くそこからホットケーキミックス取って」


 と言うと、はあい、と気の抜けた返事をしながらも、彼は言われたとおりにしてくれた。その間に私は牛乳と卵をどさどさボウルに投入する。


「じゃあ、ここにホットケーキミックスをぶちまけてくださいな」


「いや言い方」


 死神さんよお、と呆れた声色が聞こえたが、聞こえないふりをして早く入れて、と急かした。


 手早くかき混ぜて。

 フライパンを火にかけて油を引いて。


「ここに、このドロドロを流します!」


 言い方、と訴える目はもう見て見ぬふりをして、1枚目は私がお手本を見せる。うん、ひっくり返すのも上手くいって、なかなかの出来だ。


「次、やってみる?」


 少々ひきつった顔の彼に、有無を言わさずボウルとお玉を渡す。


 流すのは、上手くいった。

 けれど。


「ああ! 早くひっくり返して!」


 裏面がけっこう焦げてしまった。


「だから嫌だって言ったのによお」


 死神さんよお、と彼は少し泣きそうだった。嫌だなんて、言ってたっけ? そういえば、作ろうと提案したときに、言っていたような……。


「まあ、大丈夫だよ。きっと香ばしいよ」


 と蜂蜜をたっぷりかけている片手間に慰める。よし、焦げている方は、私が食べてあげよう。


「いただきます」


 私も彼も、そう言うやいなやフォークとナイフを持ってホットケーキを切り始める。蜂蜜がとろりと垂れる様が、とても蠱惑的だ。


「あ、うめえ!」


 彼が喜びの声を上げた。そう叫びながらも、口に入れる手は止まらない。


「もっとゆっくり味わって食べてよ」


 私が窘めても、彼は聞かない。


「いやだって、ホントに美味いんだもん」


 まあそれはわかる。彼が焼いた焦げている方ですら、その苦味がアクセントに感じるくらい美味しいのだから。


 そこで、彼は何かに気づいたようで、食べる手が止まった。


「そういえば、何で俺食い物食えてるの? 死者なのに」


 やっと気がついたか。



 私は口の端についた蜂蜜を拭ってから、にっこりと笑った。


「まあ、死神の愛情がたっぷり入ってるからね」


 やっぱ死神さんには叶わねえわ、と照れたような彼の声が聞こえて、見ると、彼は机に突っ伏しており、かろうじて見える耳は先まで赤くなっていた。

お読みいただきありがとうございました!


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