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#2

 それからの俺は、ヒデを凌ぐ勢いでギターにのめり込んでいった。


 ヤツが丸三年かけてもマスターできなかった曲を軽々と弾きこなせるようになるまでに、ものの半年もかからなかった。


 次第に俺の部屋は、自作の曲を収めたデモテープや、ありとあらゆるジャンルのLP・CDアルバムでいっぱいに。


 気がつくと、受験勉強にかかりきりになって忙しくなったヒデとは、時々しかつるまなくなっていた。






 地元のバカ高校に進学するやいないや、俺は待ってましたといわんばかりに誰彼構わず声をかけ、ついに口説き落とした同級生ふたりと、念願だったサイケロックバンドを組んだ。


 記念すべき初ライブのオーディエンスは、もちろん、進学校で課題やら期末試験やらに追われ大層忙しかったろうに、それでも律儀に約束を守って駆けつけてくれたヒデ。と、当時ヤツが付き合っていた、感じの悪ぃ無愛想な女。そのふたりだけ。


 かつての俺のように、ニヤニヤしながら俺らの演奏を見守ってくれていたヒデのあの小憎たらしいツラ、きっと死ぬまで忘れないだろうなぁ。






 高校卒業以降の俺の半生は、別段どうってこともない、どこにでも転がっているような労苦と挫折に打ちのめされるばかりのものだった。それも、わざわざ好き好んで。


 まず、苦労して稼いだバイト代をそっくりそのままスタジオ代や機材費に溶かし、閑散としたライブハウスにしがみつき続ける十数年があった。


 次に、三十路に突入しても夢の損切りに踏み切れず、いくつもの別れと出会いを重ね、しぶとく腕を磨き続けているうちに、あちこちの地方を回れるようになっていった十数年があった。


 だけど、それでも腐れ縁のバイト生活から綺麗さっぱり抜け出すというわけにはなかなかいかず、ようやっとギター一本でギリギリ食っていけるようになったかと思ったら、もう四十代後半。


 ハタから見ればパッとしない音楽人生なんだろうが、俺は一ミリたりとも後悔なんてしちゃいない。


 なぜってそりゃあ、毎度毎度、ステージへ上がる度に堂々と大往生できるのが俺たち演者の役得だからさ。はっきりいって、これに勝る幸せはありえないね。断言できる。


次回へ続く

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