目が見えないお嬢と暗殺者の俺
[知らぬが仏]
「あんたなんか産まなければよかったよ」
そうだ今日は俺の誕生日だった。
今の俺は何歳だっけな?
私には空の青さは分からないけど、君にはどう見えるのかな?
スラム街に捨てられた俺は、一人寂しく道を歩いていた。地面に足をつく力すらなく重力に頼りきって足を置く。
一歩一歩ゆっくり踏み出して、未来に向かいたいけど、俺は何のために生きているのだろう。
親からは罵倒され、道ゆく人に暴言をかけられ、挙句の果てには公園で遊んでいるあ子供に石を投げられる。親も私を庇う訳なくそそくさとどっかに歩いていく。
きっとこの赤髪が全て悪い。
俺の親は本当に酷い。
俺を捨てたのは、暗殺の技術力が馬鹿みたいに高かったから。
暗殺の技術を教えたのはお前らなのに……。
裏の人間にも見捨てられた俺は誰にも好かれるはずはない。
俺はただ死に場所を探して彷徨った。
一四歳の春俺は一人になった。
ここ一体の領地を務めるお屋敷の跡取りは目が見えないという噂がある。
そんな跡取りは一人の部屋、優雅にお茶を飲んでいた。
私の目は元々見えていた。
だけど昔暗殺された時、目の中に何かが入ったんだ。
最後の景色は鮮明な赤。昔遊んだ初恋の人もその髪を持っていた。私はあの赤をまだ探している。
片目は眼帯もう片目は見えないが瞳の色はしっかり残っている。
そんな私の周りにはいつも誰かが居た。
お父さんでもお母さんでも執事でもメイドでも誰かしらは居た。
でも今は見えないから、誰がいるのかわからない。
七歳の頃から私の視界には誰も入ってはこなかった。
俺は公園へ出た時物珍しいと目を見開く出来事にあった。
昼下がりの事だった。
暑い日が続き少しの風でも有難いと思う。
完全に貴族の服をきた眼帯。その後ろには嫌々と傘をさす執事の姿。
なんであの人は嫌われているんだ?
少し見覚えのある気がする貴族は男かと思ったが、女にも見える。
どちらなのかと呑気なことを考えていた時、後ろの執事が妙な動きをし出した。
ガサゴソと鞄を漁る。
そこから出てきた黒く光る塊。どこをどう見ても本物の拳銃だ。
日の光に当たりやり輝く拳銃はとてもその場に似つかない程美しかった。
その拳銃の先は貴族の背中にあたる。
恨みでも買ったのかと思い、助けようなんて微塵も思わなかった俺は白状なのかもしれない。
だって貴族なら拳銃くらいすぐに気づくと思っていたから。
だけど貴族は気づかない。何故だ?
完全に後ろを向いている。なのに気づかない。もしかして……、盲目なのか。
殺しの技術を叩き込まれた俺は人の行動で動きが鈍い場所、動かない場所がわかる。
さっきから貴族は手を使いながら周りに物がないか確認していた。きっと盲目なんだろう。
だからといって俺が助ける理由はない。
俺はそそくさとその場を後にしようとしたその時、
「まだ生きてたのかよ。ダッセ」
そんな声と共に背中に痛みが走った。
固くて丸い……石を投げられたのだろう。
てか今、そんな大声を出すなよ。
執事にバレたらどうする。俺は恐る恐る貴族の方を見る。
その時執事の鋭い眼光が俺の瞳に刺さった。
あ、これはやばい。バレたのだ。
逃げても駄目、相手は鍛えられた大人だ。
ならば戦うしかないな……。
俺は姿勢を低くして地面を強く蹴った。物凄いスピードで執事に近づく。そして拳銃を蹴り落とした。〈ガシャン〉と音を立てて地に落ちる拳銃を他所に俺は盲目の貴族の手を取った。
目が見えていないならば言葉で説明と思い、俺は口を開く。久々に開いた口はカラカラだってが、俺は構わず喋り出した。
「貴族のお嬢。今、テメーの、執事が殺そうとしてたぜ」
「ゴホッゴホッ」
「この領地の娘だろ?」
「ッはい」
「連れてくから大人しく着いてこい」
「わかりました」
「ゴホッ、グェッ」
駄目だ、いきなり喋ったから喉がやられている。それにしてもコイツ、警戒心ゼロか? コノコノとついてきちゃ駄目だろ。
俺は大きなお屋敷の前に着いた。
いつもは遠くから見ていたからわからなかったがやばいほどでかい。これ程とは……。
でもなんだろう? 見覚えがあるな。いつも遠くから見ているからか。
なんだ此処、てかなんだよこれ石か?
動揺を隠しきれてない俺は、足が進まない。そんな事をしていたら警備がこちらに走ってきた。うわっめんどくさい。
「赤髪のお前何者だ!」
「こちらのお嬢を届けにきました。」
「ではっ」
俺は足早に去ろうとする。だけどそれを許さない人物が居た。
「お前ら下がれ、おい君少し待ってくれ」
「ゴホッ、なんだお前……。」
「私の執事になる気はないか?」
「はぁ?」
「衣食住を保証して、休みも与える。」
「……お、う?」
「どうだ!」
確かにこんな好条件で雇ってくれる場所はない。それに衣食住を保証してくるときた。
俺が悩んでいると、貴族が声を上げる。
「取り敢えず、家の中で話そう!」
俺は手を引かれ、家の食堂に連れてかれた。
スラム街から来た俺は硝子シャンデレラや光る家具に目が慣れなかったが、なによりもこの綺麗な空間に目を疑った。
ここまで綺麗な場所に俺を連れてくるのは場違いだろう。
「で、どうだ!」
俺は出てきた水を疑ったが雨水よりはマシだろうと思い、一気に飲み干す。
乾ききった喉が潤うのがよくわかる。
「いいぜ。だが一つ条件がある」
「なんだ?」
「最高の死に場所を用意しろ」
「なにっい「これが出来ないなら此処には雇われない」
「……わかった準備しよう」
「おけー」
「てかなんで俺が欲しいんだ?お嬢」
「あぁ、強いしその私に屈しない態度が気に入った」
「そうかよ」
この態度ね……。
「父上に紹介は私がしとくから君は風呂に入って飯を食って着替えてくれ!」
「わーたよ」
「では!」
貴族はタッタッと走り、どこかに行ってしまった。俺はその様子を近くで見ていたメイドに連れられ温かいお湯に入れられ、綺麗な燕尾服に手を通し、ほかほかな飯を食い、順風満帆な時を過ごした。
「また会えて嬉しいよ」
彼女は父上に会いに行く途中こう呟いた。
「おい、お嬢」
「なんだ?」
曇った空からでる月明かりに照らされる貴族は昼と違って儚さを持ち合わせていた。
美しい顔立ちと痛々しい眼帯が美しさと狂気さを共存させている。
「俺は、テメーの世話なんて出来ないからな」
「知っとるわ」
「あと、すぐ死ぬからな」
「なんで?昼も思ったけどなんでそんなに死にたいの?」
「生きる場所がないし、俺は人殺しだ。」
「生きる場所は私が用意するよ。人殺しは私が共犯だ」
「はぁ?」
「君が死ぬなら私も死ぬ。君に私の目となって欲しいんだよ」
「そ、そうかよ」
「君の生きる意味は、私に沢山の景色を見せてくれ。」
「……………」
「そう言えばなんで呼べばいい?」
「お好きにお嬢」
「じゃあ君は今からナギサだ。名前を変えて新しい人生を君に」
「そうかよ、カッコつけやがって」
「今はどんな空かな?」
「綺麗な星空だよ」
ねぇ、ナギサ……ここから星空は見えないよ。
「ねぇ、君の瞳はどんな景色を映すんだ?」
「色褪せた景色だ」
「そうか」
「……お嬢さ目、なんで見えなくなったの?」
「昔暗殺されかけたんだ」
「そ、そうか」
「その暗殺者の顔覚えてるか?」
「赤い気持ち悪い髪だったよ。その時の衝撃もあってより怖く見えたよ」
「そうか」
貴族もいやお嬢も俺の顔を見たら失望するだろう。いや今は此処がいいな。
お前は目が見えない方がいい。
君の生きる理由を与える為に共犯者になってやるよ。
私の目を壊した暗殺者。
さっきの話でやっと確信を持てたよ。
でも正直私は最後の景色が君で良かったと思う。
あの美しいく気持ち悪い赤い髪のナギサが最後でよかった。
あの鮮明な赤は私の血かそれとも……、
あの美しい顔に私は心を奪われた。
だから君を手元に置けるのがなによりも嬉しいんだ。
私の視界を無くしてまで、私は君に恋をした。
君に殺されまもいいくらい。
私の初恋を奪った罪は重いのだ。
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