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枝先の彼女【一年かけて季節を一周する短編集】  作者: 笠原たすき
山茶花

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32/33

山茶花( め )

 そーだった。今日はモカが忘年会だったんじゃん。


 これまで飲み会のお誘いとか断ってたけど、今日はせっかくのクラスの忘年会だから、今日くらいは歩季にまかせて、再履はサボることにしたんじゃん。


 歩季との寄り道は、今日もお預けだあ。


 ま、でも、こっちはこっちで、楽しいんだけどね。楽しいっていうか、もう念願?


 ホント、久しぶりの金夜の飲みだあ。クラスのみんなで集まれるとか、めっちゃ貴重じゃーん。


「モカ~。なにニヤニヤしてんのさー」


「えー嬉しいんだもん。久しぶりにみんなで飲めてー」


「モカ、今まで再履がんばってたもんね」

「今日くらい思いっきり飲め飲めー」

「えーでもホントによかったのー? 今日サボっちゃって」


「だいじょぶだもーん。ちゃんと代返もしてもらったしー」


「あれ? モカ再履ぼっちだって言ってなかったっけ?」


「そっか言ってなかったっけー。実はねー、再履仲間いたんだよー」


「えー誰ー?」


「歩季ってわかる? 去年の実習で一緒だったんたけどー」


「あーあの赤い髪の?」

「あーなんかいたねえ」

「なんか一緒に発表やってた子か」


「そーそー。その歩季がいたのに途中から気がついてー」


「そーなんだー。よかったじゃんぼっちじゃなくなってー」

「えーでもだったらもっとモカ誘えばよかったよー」

「出席取るって言ってたからさー、いちおー誘うの遠慮してたんだよー?」


「えーごめんごめん、じゃーもっと誘ってー♪」


「え、じゃあ、そしたらさあ、来週とかどうよ」


「おお、早速来週?」


「そーそー。来週の金曜、うちらだけでプチ忘年会やらない? ちょーど授業も最後だし」


「いいね、楽しそう! あーでも、2週連続はさすがに、歩季に悪いかなあ」


「えー大丈夫でしょーそんくらい」

「そーそー。せっかく一緒なんだからさー」

「年明けから本気出せ」


「うーん……けど、冬休み前だから、課題とか出るかもしれないし……」


「それも教えてもらえばいーじゃん」

「そーそー」


「うーん……」


「そしたら別の日にするー? つってもどーせここ2人は、24・25日は先客アリか」

「じゃー月・火のどっちかにすればいーじゃん」

「あーごめん月曜あたしバイトだ」


「あ、火曜はモカがバイトだあ……。やっぱいいよー。みんなの大丈夫な日に集まりなよー」


「えーモカいないとつまんないよー」

「やっぱ金曜、サボっちゃいなよ」

「ちょっとくらい大丈夫だってー」


「うーん……」


「お待たせいたしましたー。レモンサワーのお客様ー」


「「「「 」」」」


「あっはい、私かなー? ――あ、すいませーん」

「空いてるグラスお下げしますねー」

「あ、はーい」

「あ、これも」

「それは?」

「まだ飲む」


「――えーそしたらさー……って、レモンサワー私さっき来たじゃん」

「いやめっちゃ飲んでるじゃん。うける」

「えーちょっとレモンサワー頼んだの誰ー?」

「あ、俺だー」

「ほれ」

「どもー」

「てかあたしのウーロン茶まだなんですけど」

「これもー誰か飲んじゃったんじゃない?」

「えーもっかい頼もっかなー」

「じゃー私もウーロン茶ー」

「あ、わたしレモンサワー」

「ほーい。モカは?」

「じゃーモカもレモンサワー」

「ほいほい。ってこれ反応悪いんですけどー」

「あ、こっちの使う?」


「――ねえ、友叶(ともか)ちゃん、友叶ちゃん」


「ん? 奈緒子(なおこ)、どーしたの?」

「ねえ、さっき言ってた『歩季』って、9組の歩季ちゃんのこと?」


「え、歩季何組だっけ。あ、9組か。9組だねえ。え、歩季がどーかしたの?」

「うん、あの……さっき、歩季ちゃんに代返してもらったって……」


「ああそーなの。モカホントは今日の5限再履だったんだけどー、そっち出てたらこっち間に合わないからー、歩季に代返してもらったんだよねー」

「……ってことは、今日歩季ちゃん、学校来てたんだ……」


「うん。そーだよ。それがどーかしたの?」

「……あのね、実は私、歩季ちゃんとフランス語の授業で一緒なんだけど、今度の月曜、ペアでスピーチやらなきゃいけないことになってるんだ。でも歩季ちゃん、先週からずっと授業に来てなくて、準備が全然できてなくって……」


「えっ? 歩季、授業来てないの??」

「うん。先週も今週も来てないの。それで、クラスの人に聞いてみたら、他の授業も全部、先週から急に来なくなっちゃったって言ってて……」


「うそ……」

「なんかクラスの子も軽い感じで、『このまま一生来ないんじゃない?』みたいなこと言ってたから……」


「そんな! そんなわけ――……でもそうだ。たしかに歩季、先週再履も休んでた……」

「そうなんだ……それじゃあやっぱり……」


「でっ、でも! それはたまたまバイトが休めなかったからって言ってたもん! そんな、そのまま来なくなっちゃうなんてことないよ! だって今日はちゃんと学校来てたし! 代返したよーってLINEもくれたし!」

「そっか……」


「だから、きっと先週とかはさ、たまたまバイトが忙しい日が重なっただけだよ! きっと来週からは、また普通に来るはずだよ! 来る……はずだよ……」

「…………」


「ねえ、その、クラスの子はさ……」

「でも、そしたらスピーチどうしよう」


「えっ?」

「歩季ちゃんが来ないなら、スピーチはもう無理ですって、先生に言おうと思ってたんだけど……」


「ああそっか。スピーチ、困っちゃうよね」

「ねえ友叶ちゃん、歩季ちゃんのLINE知ってるんだよね? そしたらちょっと、歩季ちゃんに聞いてみてくれないかな?」


「え、モカが?? 奈緒子、歩季のLINE知らない感じ?」

「うーん、同じグループLINEには入ってるから、連絡取ろうと思えば取れるんだけど……」


「なら直接聞いてみなよ! その方がいいって!」

「うーん……」


「大丈夫だよ! 歩季さ、髪とか赤くてちょっと怖いかもしれないけど、中身はめっちゃまじめで、ちゃんとしてるから!」

「そう……?」


「そうそう! 単位とかも落とさないようにしなきゃーってがんばってるからさ、むしろスピーチのことも、ちゃんと教えてあげて! 多分忙しくって忘れちゃってるだけとかだと思うから! スピーチあるってわかったら、歩季、めっちゃがんばって、用意とかしてくれると思うからさ!」

「そっか……」


「そうだよ! ほら、まだ土日もあるし、今からならまだなんとかなるよ! 連絡してみなって! ね?」

「そっか、そうだよね……そうしてみる! よかった、友叶ちゃんに聞いてみて」


「モカでいいよ。みんなそう呼んでるし」

「いいの? なんかもう、12月で、今更だけど」


「えー今更とかないよー。今からでも呼んでよー」

「じゃあ……モカちゃん。その……ありがと」


「どーいたしましてっ」

「じゃあ、あの、戻るね。急にごめんね」


「いえいえー」


「奈緒子ー。なに話してたのー?」

「歩季ちゃんのこと。スピーチのことで。モカちゃんが、歩季ちゃんのこと、知ってたみたいで……」


「…………」


「えーモカー、じゃーどうすんのさー?」


「えっ?」


「26日のことだよー」


「あ、ああ……」


「やっぱサボって、こっち来ちゃいなよー。その方が楽しいってー」


「――……ごめん。やっぱりモカ、その日は授業出る」

次回は、12月26日(金)18時頃の更新予定です。


(追記)

次回の更新は、制作の遅れにより延期とさせていただきます。

楽しみにお待ちくださっていた皆さまにおかれましては、大変申し訳ありません。

更新日が決まりましたら、近況ノートおよびXにてお知らせいたします。

気長にお待ちいただけると幸いです。

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