山茶花( め )
そーだった。今日はモカが忘年会だったんじゃん。
これまで飲み会のお誘いとか断ってたけど、今日はせっかくのクラスの忘年会だから、今日くらいは歩季にまかせて、再履はサボることにしたんじゃん。
歩季との寄り道は、今日もお預けだあ。
ま、でも、こっちはこっちで、楽しいんだけどね。楽しいっていうか、もう念願?
ホント、久しぶりの金夜の飲みだあ。クラスのみんなで集まれるとか、めっちゃ貴重じゃーん。
「モカ~。なにニヤニヤしてんのさー」
「えー嬉しいんだもん。久しぶりにみんなで飲めてー」
「モカ、今まで再履がんばってたもんね」
「今日くらい思いっきり飲め飲めー」
「えーでもホントによかったのー? 今日サボっちゃって」
「だいじょぶだもーん。ちゃんと代返もしてもらったしー」
「あれ? モカ再履ぼっちだって言ってなかったっけ?」
「そっか言ってなかったっけー。実はねー、再履仲間いたんだよー」
「えー誰ー?」
「歩季ってわかる? 去年の実習で一緒だったんたけどー」
「あーあの赤い髪の?」
「あーなんかいたねえ」
「なんか一緒に発表やってた子か」
「そーそー。その歩季がいたのに途中から気がついてー」
「そーなんだー。よかったじゃんぼっちじゃなくなってー」
「えーでもだったらもっとモカ誘えばよかったよー」
「出席取るって言ってたからさー、いちおー誘うの遠慮してたんだよー?」
「えーごめんごめん、じゃーもっと誘ってー♪」
「え、じゃあ、そしたらさあ、来週とかどうよ」
「おお、早速来週?」
「そーそー。来週の金曜、うちらだけでプチ忘年会やらない? ちょーど授業も最後だし」
「いいね、楽しそう! あーでも、2週連続はさすがに、歩季に悪いかなあ」
「えー大丈夫でしょーそんくらい」
「そーそー。せっかく一緒なんだからさー」
「年明けから本気出せ」
「うーん……けど、冬休み前だから、課題とか出るかもしれないし……」
「それも教えてもらえばいーじゃん」
「そーそー」
「うーん……」
「そしたら別の日にするー? つってもどーせここ2人は、24・25日は先客アリか」
「じゃー月・火のどっちかにすればいーじゃん」
「あーごめん月曜あたしバイトだ」
「あ、火曜はモカがバイトだあ……。やっぱいいよー。みんなの大丈夫な日に集まりなよー」
「えーモカいないとつまんないよー」
「やっぱ金曜、サボっちゃいなよ」
「ちょっとくらい大丈夫だってー」
「うーん……」
「お待たせいたしましたー。レモンサワーのお客様ー」
「「「「 」」」」
「あっはい、私かなー? ――あ、すいませーん」
「空いてるグラスお下げしますねー」
「あ、はーい」
「あ、これも」
「それは?」
「まだ飲む」
「――えーそしたらさー……って、レモンサワー私さっき来たじゃん」
「いやめっちゃ飲んでるじゃん。うける」
「えーちょっとレモンサワー頼んだの誰ー?」
「あ、俺だー」
「ほれ」
「どもー」
「てかあたしのウーロン茶まだなんですけど」
「これもー誰か飲んじゃったんじゃない?」
「えーもっかい頼もっかなー」
「じゃー私もウーロン茶ー」
「あ、わたしレモンサワー」
「ほーい。モカは?」
「じゃーモカもレモンサワー」
「ほいほい。ってこれ反応悪いんですけどー」
「あ、こっちの使う?」
「――ねえ、友叶ちゃん、友叶ちゃん」
「ん? 奈緒子、どーしたの?」
「ねえ、さっき言ってた『歩季』って、9組の歩季ちゃんのこと?」
「え、歩季何組だっけ。あ、9組か。9組だねえ。え、歩季がどーかしたの?」
「うん、あの……さっき、歩季ちゃんに代返してもらったって……」
「ああそーなの。モカホントは今日の5限再履だったんだけどー、そっち出てたらこっち間に合わないからー、歩季に代返してもらったんだよねー」
「……ってことは、今日歩季ちゃん、学校来てたんだ……」
「うん。そーだよ。それがどーかしたの?」
「……あのね、実は私、歩季ちゃんとフランス語の授業で一緒なんだけど、今度の月曜、ペアでスピーチやらなきゃいけないことになってるんだ。でも歩季ちゃん、先週からずっと授業に来てなくて、準備が全然できてなくって……」
「えっ? 歩季、授業来てないの??」
「うん。先週も今週も来てないの。それで、クラスの人に聞いてみたら、他の授業も全部、先週から急に来なくなっちゃったって言ってて……」
「うそ……」
「なんかクラスの子も軽い感じで、『このまま一生来ないんじゃない?』みたいなこと言ってたから……」
「そんな! そんなわけ――……でもそうだ。たしかに歩季、先週再履も休んでた……」
「そうなんだ……それじゃあやっぱり……」
「でっ、でも! それはたまたまバイトが休めなかったからって言ってたもん! そんな、そのまま来なくなっちゃうなんてことないよ! だって今日はちゃんと学校来てたし! 代返したよーってLINEもくれたし!」
「そっか……」
「だから、きっと先週とかはさ、たまたまバイトが忙しい日が重なっただけだよ! きっと来週からは、また普通に来るはずだよ! 来る……はずだよ……」
「…………」
「ねえ、その、クラスの子はさ……」
「でも、そしたらスピーチどうしよう」
「えっ?」
「歩季ちゃんが来ないなら、スピーチはもう無理ですって、先生に言おうと思ってたんだけど……」
「ああそっか。スピーチ、困っちゃうよね」
「ねえ友叶ちゃん、歩季ちゃんのLINE知ってるんだよね? そしたらちょっと、歩季ちゃんに聞いてみてくれないかな?」
「え、モカが?? 奈緒子、歩季のLINE知らない感じ?」
「うーん、同じグループLINEには入ってるから、連絡取ろうと思えば取れるんだけど……」
「なら直接聞いてみなよ! その方がいいって!」
「うーん……」
「大丈夫だよ! 歩季さ、髪とか赤くてちょっと怖いかもしれないけど、中身はめっちゃまじめで、ちゃんとしてるから!」
「そう……?」
「そうそう! 単位とかも落とさないようにしなきゃーってがんばってるからさ、むしろスピーチのことも、ちゃんと教えてあげて! 多分忙しくって忘れちゃってるだけとかだと思うから! スピーチあるってわかったら、歩季、めっちゃがんばって、用意とかしてくれると思うからさ!」
「そっか……」
「そうだよ! ほら、まだ土日もあるし、今からならまだなんとかなるよ! 連絡してみなって! ね?」
「そっか、そうだよね……そうしてみる! よかった、友叶ちゃんに聞いてみて」
「モカでいいよ。みんなそう呼んでるし」
「いいの? なんかもう、12月で、今更だけど」
「えー今更とかないよー。今からでも呼んでよー」
「じゃあ……モカちゃん。その……ありがと」
「どーいたしましてっ」
「じゃあ、あの、戻るね。急にごめんね」
「いえいえー」
「奈緒子ー。なに話してたのー?」
「歩季ちゃんのこと。スピーチのことで。モカちゃんが、歩季ちゃんのこと、知ってたみたいで……」
「…………」
「えーモカー、じゃーどうすんのさー?」
「えっ?」
「26日のことだよー」
「あ、ああ……」
「やっぱサボって、こっち来ちゃいなよー。その方が楽しいってー」
「――……ごめん。やっぱりモカ、その日は授業出る」
次回は、12月26日(金)18時頃の更新予定です。
(追記)
次回の更新は、制作の遅れにより延期とさせていただきます。
楽しみにお待ちくださっていた皆さまにおかれましては、大変申し訳ありません。
更新日が決まりましたら、近況ノートおよびXにてお知らせいたします。
気長にお待ちいただけると幸いです。




