14.
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自室の窓を開け、紺碧の夜空を見上げるとミルクをこぼした様に星が煌めき、辺りを柔らかな光が照らしている。
海面に反射した星達はまるで宝石の様にキラキラして綺麗だ。
「星がとても綺麗だわ……」
「はい!昨日の野営といい、こちらの星空は美しいですね」
思わずこぼれた言葉にジェイルが同意してくれるから、ホノカは頬を緩ませ頷いた。
カートレット家で生活するようになってから、ホノカにとって初めて経験する事が多く感情がうまく処理出来ずに戸惑うが、これはきっと幸せな事なんだと思う。
『鈴木ほのか』も知らなかった感情……。
だからこそ、処理能力が追いつかないのだ。
「ホノカ様?」
繋がれていた左手に力が入り、ホノカを見上げる瞳は不安そうに揺れていた。
知らず知らず表情が強張ったのだから、ジェイルが不安を感じても仕方がない。
完全にホノカの配慮不足だ。
「なんでもないのよ。ただ、星達が綺麗過ぎて見惚れていたの」
「ホノカ様も美しいモノが好きなんですか?」
「もちろん!ジェイルは?」
「僕も……大好きです!」
咲き誇る花の様に微笑むジェイルは、今までホノカが見たどの笑顔よりも柔らかくて可愛くて、庇護欲を揺すぶられる。
「宝石かしら?」と勘違いするほど透き通った瞳にまるで吸い寄せられるかの様に、体は動かずぼんやりと夢見心地で世界一美しいサファイアに引き寄せられそうだ。
あぁ……。
世界一美しい宝石はもう一つあった。
ホノカは本邸で執務をしている筈であるユリウスを思い出し、ジェイルの瞳とかさねた。
新緑の様な透き通った輝き。それを縁取る烏の濡羽色の豊かな睫毛。
ユリウスが幼かったのなら、きっとこんな感じであろうといとも容易く想像させた。
(やっぱり血がつなかってるのね。ユリウス様にとてもよく似てる……)
「ホノカ様……?」
はっと我に返るとそこには、首を傾げホノカを見つめるジェイルがいる。
ホノカは慌てて、
「う……ううん」
と、返事をすると顔を背けた。
両手で頬をはさみ動揺を隠すが、ジェイルの笑顔越しにユリウスが消えてはまたあらわれを繰り返すものだから、直視なんてできない。
(ユリウス様は今なにをしてらっしゃるのかしら……?)
本邸で煌めく宝石を思い出しざわざわと心は落ち着かず、心臓はうるさく波打つばかりだ。
「ホノカ様、気分が悪いのですか?」
「ううん。大丈夫。今日の夕食が楽しみね!」
ホノカの言葉に笑顔をそのままにして頷いたジェイルだったが、その瞳は何かを探ろうと瞬き一つせずに大好きなホノカを見つめている。
(いつか、ホノカ様も同じ熱量で見てくれる?)
ジェイルの想いはホノカと見ている星空のように、輝いていた。
他人からみたら幼い想いかもしれないけど、ジェイルからすれば初めて手にした大切なぬくもりを抱えながら……。
**********
「こちらが、夕食の場所です。メインは魚料理か肉料理か選べるようになっておりますが、当宿場は港町ですので、魚料理がおすすめでございます」
本日滞在の宿屋の女将さんに案内された場所は、宿屋に隣接した建物で昼は食堂であり夜は飲み屋兼レストランとして経営されている。
レンガ造の外観は隣の宿屋と雰囲気を近くし、浮かないようにしていて、クラッシックな雰囲気は、ゆっくりと時を過ごしたい客には最適だった。
「ありがとう。私は魚料理にするけど、ジェイルはどうする?」
「僕も魚料理にします」
「かしこまりました」と返事をすると、女将さんは騎士団の何名かそれぞれからも注文を聞くと厨房の奥へと消えていった。
どうやら、料理も担当しているらしい。
小さな宿屋では、人件費を削減する為に家族経営も多いのだから、当然といえば当然なのだが、ホノカからしたら何でも出来るスーパーマンにしかみえない。
感心した気持ちで厨房を見ていると、ステラとアオイが近付きホノカ達へ声をかけた。
「明日は海岸へ行ってみますか?」
ステラからの問いにホノカは少し考え返答した。
「そうね。今晩の遠目からみた浜辺も素敵だけれど、太陽を反射してきらきらしてる海も見てみたいわ」
「はい!では、明日の予定は港で船に乗ったり、魚釣りもいいですね!それで、釣った魚を捌きディナーにしてもらいましょう!」
「わぁ!釣りたての魚楽しみですね!」
『釣りたての魚』というワードに目を輝かせたアオイが、ホノカに同意を求める。
「あら、アオイは今日は魚じゃないの?」
「私はガッツリ肉料理にしました!騎士は体力勝負ですから」
アオイはガッツポーズを見せるが、残念ながら袖のある騎士服では筋肉は分からなかった。
ただ、アオイはレイピアとはいえ二刀流なのだから、きっと鍛えている。
以前、鳩尾をアオイからくらった時の衝撃を思い出し、苦笑いがこぼれるけれど、味方としては頼もしい限りだ。
「ステラは何にしたの?」
「私も魚料理にしました。今日は白身の香草焼きだそうなので、楽しみですね。そうだ!毛玉さんとマリモさんにも先程お食事を差し上げました」
アオイは「食事?」と首を撚っていたが、
「あぁ。出掛けに料理長から渡された、カリカリした粒ですよね?」
と、ステラにたずねていた。
カリカリした粒……。
あぁ。
ドライフードね。
「最近贅沢になっちゃったみたいで、マリモちゃんの食べが悪いと聞いたわ……」
「そうなんです。栄養不足になってしまうので、なんとか食べていただきたいのですが、頑として口を閉じたままで……」
ステラは眉尻を下げ大きく息を吐く。
「お腹すけば食べますよ」
あっけらかんとアオイが答えれば、ステラもまたかわいそうと反論する。
正反対の2人のように見えてなかなか馬が合うようだ。
「2人は仲良しさんね!」
「「仲良くないです!」」
ぴったり反論も揃うのだから、どんなに否定しても他者には仲が良い2人にしか見えない。
思わずこぼれた笑みにジェイルがコテッと頭を傾ける。
「微笑ましいから笑っていたのですよ」
「微笑ましい……から?」
8歳のジェイルにはまだ難しかったのかもしれない。
「周りの人達が仲良くしていると、嬉しくなるの。ジェイルもそうでしょ?」
「……僕は……僕とホノカ様が一番仲良しが良い……」
ぷいっと拗ねて顔をそらすジェイル。
(なんて可愛いの!)
声に出そうになった言葉を慌てておさえたが、目ざとく気がついたジェイルは、もう一度ホノカの名前を呼ぼうと口を開けた。
「ホノカさ」
「お待たせいたしました。グリーンサラダのハーブドレッシング掛けでございます」
女将さんの声で会話は中断し、ジェイルの言葉は中途半端で告げられる事はなかった。
けれど、これ以上ごねたところで勝算はない事はわかっていたし、子供地味た態度は自分を不利にするだけだ。
「わぁ!美味しそうね!」
にこにこと微笑むホノカを見ているだけで、今は幸せなのだから。
(今はまだこれで十分だよ……)
「はい!いただきます」
サラダから始まった軽いコース料理は、白身魚も肉料理も絶品だった。
肉料理は実際にはホノカ達は食べてはいないが、アオイが焼き加減が最高と皿まで食べそうな勢いで完食していたし、男性騎士はおかわりをする者も何人もいた。
幸いな事に、最後のデザートにとシャーベットを口に運んでいる時までホノカ達の貸し切り状態だ。
(大所帯だから良かったわ。それにしても、このオレンジの様なシャーベット美味しい!)
柑橘類の果物は口をさっぱりさせる効果がある。
現実社会でも、料理に多く使われているのは、そういった類からだろう。
酢豚にパイナップル有り無し論争は永遠だと思う。
なんて事を考えていたら、残り僅かになってしまい、ちびちびと一口が小さくなる。
最後の一口という時に、カランカランと来客を告げるベルの音が店内に響いた。
「はーい」という返事と共に、布巾で手を拭きながら女将が厨房から顔を出した。
「いらっしゃい」
「こんばんは。……今日は軽く頼むよ」
「あら?お疲れみたいね」
「昨夜から患者が多くてね。女将も気をつけた方がいいよ」
常連客であろう身なりをきちんと整えた初老の男性が、ため息混じりで女将の近くであるカウンターへと腰をおろした。
「寒暖差が激しくなったからかしら……?」
「いや……。どうやら、感染症のようでね」
「感染症?」
女将は眉をひそめた。
「あぁ。身体に赤い発疹が……」
ホノカ達がいる事に気がついた医者であろう男性は声をひそめるが、近くの席に座っていたのだから、後の祭りだ。
(前の街でも感染症が増えてると言っていた……)
「ねぇ、アオイ」
「はい?」
自分の名前を呼ばれたアオイは頭を傾げ、ホノカへと視線を向けた。
「食事がすんだら、夜のお散歩でもしましょうか?」
「は……えぇ?」
アオイの戸惑う声を尻目にホノカはシャーベットの最後の一口を口に運ぶのだった。
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