6.
いつもありがとうございます!片頭痛の為短くなってしまい申し訳ありません!修正あると思います(T_T)
カートレット家から馬車で10分程西へ領地の街道を進んだ所にある街へ、今日はホノカとジェイルは湖畔の別邸へ向かう準備の為にやって来ていた。
今にも曇天の空からは冷たい雨粒が落ちてきそうで、冬本番を迎える今の時分は肌寒く、町並みを歩く人々もコートやマフラー、ブーツといった装いでしっかりと防寒を怠らない。
勿論、ホノカやジェイルも銀狐のショールをしっかりと巻き、ドラゴンのブーツで足元を守っている。
(ジェイルのつやつやの黒髪に銀狐の毛皮が映えるわ!)
気が付かれないように横目でこっそり愛息子の横顔を見ては緩む頬が幸せだ。
「ホノカ様!旅支度と冬支度のお買い物の後は、カフェに行きませんか?」
ホノカが馬車を降りると嬉しそうにアオイが声を掛けてきた。
「カフェ?いいわね!どこかオススメのお店があるのかしら?」
「やった!実は、最近出来たばかりのシフォンケーキという物を出すお店が、人気だそうなんですよ!」
胸のあたりで両手をグーにして目をキラキラ輝かせながらホノカを見上げた。
そんなアオイを平静を装ったまま、見つめていたが、内心では額に手を当てて天を仰いでしまいそうだ。
(いや…まさかね…)
「あ、そう。何ていうお店なの?」
「スウィート·シフォンだそうですよ」
うっとりと両頬を包み込み、「食べたいな」と呟くアオイをホノカだけでなくステラまでも、無言で見つめる。
いや、茫然自失だった…。
(あぁ。私がカートレット家に内緒で始めたお店だわ…)
ステラの兄カインがお菓子作りが得意と聞いたホノカはパティシエの修行をしてもらい、お店を共同経営で始めるとシフォンケーキのふわふわと口で解ける食感や厳選した茶葉のお茶は若い女性達の間でたちまち人気になった。
有り難い。
今はカートレット家の皆とは多分良い関係を築けていると思うけれど、ゲーム補正で何かが起き、また断罪や追放をされる事態が起こらないとは限らない。
如何なる場合にそなえるにも資金が必要だと思い、財産を増やそうと思った。
だけど、何をやればいいのか分からない。
投資…?
には、資金が足りない。
ゲームの世界では、ヒロインが経営の才能があったり、幸運に恵まれる…とかあったりするのだが、ホノカの中身は鈴木ほのか…という、平凡なプログラマーだ。
この世界に引き込まれた以外には、特に変わった事はなく日々生活をしてきた。
ゲームの世界に入る事事態が稀有な経験なのだが…。
(私には何が出来るのかしら?)
と、頭を悩ませた結果『鈴木ほのか』が得意であったお菓子作りを主軸にして、資金を稼ごうと行き着いたのだ。
問題は一人でお店をみることは難しいわけで…。
(ステラに相談して良かった)
本当、ステラのお兄さんがお菓子作りが得意であったのは、ラッキーね。…もしかしたら、これもゲームの世界のラッキー現象かしら?
ん?
でも、私はヒロインではないし…などと物思いに耽っていると、ふいに触れた柔らかな温もりと自身の名を呼ぶ優しい声がする。
「ホノカ様?」
ジェイルの小さな手がホノカの右手につんつんと触れながらもう一度名を呼びホノカを現実世界に戻した。
若杉の様な瞳はしっとりと濡れ、ピンク色の桜貝のような唇は不思議そうに『?』でいっぱいだ。
「ごめんね!何でもないの。」
即座に返答するホノカをただじっと見ていたジェイルだったが、小さく頷きホノカの手を握る。
それに答えるようにホノカも小さな手を包み込み、ピンクトルマリンの瞳を細めジェイルへと笑顔を送った。
「さぁ、では買い物へ行きましょうね」
「はい!」
(…きっと、カインがなんとかしてくれるはず…!)
不安は拭い切れないけれど、来週の準備をしないわけにはいかない。
チラリとステラに視線を送れば、なんども気まずい顔でホノカへと首を傾げるのだ。
(アオイにも話した方がいいかしら…)
結論なんてすぐに出るわけもなく、まずは買い出しへと向かう為、遊歩道を歩き始めたのだった。
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「おやおや、シンヤ様、来客様ですのに、こんな立ち話はいけませんよ」
ふいに声がした方を向けば、ベルツリー家の護衛騎士シューマンが屋敷内にいた。
何人か昔からの使用人や乳母の姿も見えたが、ただそこにいつも偉そうにふんぞり返っているベルツリー夫妻の姿だけがなかった。
「お坊ちゃま、そちらのお客様は本日よりご滞在されます、レティシア様でございます。旦那様が昨日話されたのをお忘れでしたか?」
「あ、あぁ。そうか。そうだったな…」
昨日の記憶を引き出そうとしたが、白い靄がかかり思い出す事は出来ない。
だが、なんとなくだが、シューマンの言う事は正しいと思う。
その理由はわからないのだが…。
「父上の客か?」
「シンヤ様!」
シューマンはオニキスの様な目を大きく見開き、ひどく驚いた様にシンヤを見ると、言葉を続けた。
「レティシア様はシンヤ様の婚約者になられた方ではないですか?」
「婚約者!?」
初めて聞いた筈だ。
流石にシンヤであろうとも、自分の将来の事を受け流すとは思えない。
(片割れとは…そういう意味だったのか?…)
「シンヤ様、どうかされましたか?」
「いや!」
弾かれたように扉へ近付くシンヤの後を追い、白い鳥は何かを訴えた気に絶え間無く鳴き続ける。
(さっきから、よく鳴くな…)
いつもは静かで穏やかな小鳥が激しく鳴く様子に違和感は感じたのだが、シンヤの思考を遮るようにシューマンが言葉を紡ぐ。
「シンヤ様、レティシア様をお部屋へお通しいたしますね。案内して」
シューマンは部屋係のメイドへ指示を出すと、シンヤへ向けて口角を上げた。
部屋へと案内をするメイドの後ろ姿を見ながら、レティシアが去った後もまだ、激しく鳴き続けている。
まるで、シンヤを責めている両親の様で心臓がうるさく騒ぎ立てる。
(うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい…)
妙に苛立ち今すぐにでも音の無い世界にしたい。
静寂。
不思議な衝動にかられた…。
耳障りな音はシンヤの奥深くまで沈み込み素肌が粟立つ嫌な感覚が、彼の全てを支配する。
可愛らしく癒されていたはずの小鳥の声は、今はもはやただの雑音だ。
(何故こんなにも鳴くのか!?)
「シンヤ様、お部屋でお話しましょう」
杜若の瞳が謎めいた笑みを浮かべる。
「あぁ。その鳥を籠へ閉じ込めておけ」
しらずしらずシンヤはシンヤはシューマンへと指示を出していた。
己の意思は分からないままに…。
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