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断罪予定の私ですが、予定は未定だったようです。  作者: 夏嶋咲衣
2.オセロ

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5.

いつもありがとうございます!ハッピーバレンタインです!亀ペースの更新申し訳ありません!

(今日もユリウス様にお会いしていないわ…)


 婚姻式三日目の朝、自分と毛玉ちゃんしかいないベッドで目覚めたホノカは、いつもの様に朝の準備をステラに整えてもらって部屋を出た。


 本邸の廊下の窓から庭を覗けば、先日まで咲いていた、赤や黄色といった秋を思わせる木々や花々は鳴りを潜め秋の終わりを告げる小さな白い綿毛達が空をふわふわと舞っていた。


 窓を開け「はぁ」と息を吐くと自身の吐いた空気は白くなっている。


 どうりで寒いはずだ。


 ステラが背中に掛けてくれたウールのショールを首元へ引き寄せて、身体を小さく震えさせながらホノカは湖畔の別邸の事を考える。


(週明けには湖畔の別邸に行くのよね)



 正直気が重い。


 


 湖畔の別邸には、ユリウスを歪ませた義母マーガレットがいるから。


 ゲームの設定通りなら、自分の欲望の為ならば子供達すら売る女だ。


「あなたの為なのよ」


 と、笑みを張り付け優しい母を演じている。


 その偽りの優しさによって、ユリウスやマリアが傷付いたなんて夢にも思わない。


 夫が死に湖畔の別邸へ追いやられた時だって、


「あなたの為に自分を犠牲にしてきた母を捨てるの?」


 と、被害者振り涙を流していた。


 そんな自分一番のマーガレットがホノカに手を出さない訳が無い。


 本邸へ戻る為ならば自分の思うままに利用するだけではなく、ホノカへ害をなす手段にでるだろうとユリウスとジェイルは疑っているから、ホノカを近付けたくはなかった。


 それに、ユリウスは似ていると思っていたホノカとマーガレットが手を組む事を良しとしていなかったのだが、ジェイルを思って黙っていたんだから…。


 勿論今はホノカがマーガレットの手先などとは1ミリも思ってはいない。


 だが、そんな事は知らないホノカは悩んでいた。



(ユリウス様は私が湖畔の別邸へ向かう事を良く思ってないわよね?)



 やはり止めておくと断った方がいいのかと思うけれど、ジェイルは今回の訪問で決着を着けようとも思っているのかもしれないし…。


 思いを巡らせていると、廊下の反対側から見知ったシルエットが現れた。


 薄暗くシルエットのみだったけれど、顔が見えなくてもスラットした長身で影だけでもイケメンであると思わせる。


(ユリウス様だわ)


 ホノカは反射的に、



「ユリウス様、おはようございます」


 と、微笑み小走りでユリウスへと向かう。



 先日寝顔を見て以来会っていない夫にホノカは遠慮がちに声を掛けた。


 なぜだか眩しそうに目を細めたユリウスは直視する事なくさっと目を逸らす。


 そして、




「あなたはどうしたのです…?」




 一歩後退り距離を取りながら両目を擦りもう一度ホノカを見るのだ。


 意味が分からない。


 何日かぶりにあったユリウスは変な者を見る様な目で自身を見るのだから、彼女も不思議そうに訊ねるしかない。


「は?」




 ユリウスの問いかけに首を傾げたホノカは、彼との距離を縮めようと一歩足を踏み出すが、一歩進むと彼は後退する。その繰り返しで、何歩進んでも2人の距離は一向に縮まる事はない。




「ユリウス様、私、怒らせるような事をしてしまいましたか…?」




 もう嫌われてはいないだろうと安易に考えていたホノカだから、ユリウスの態度を誤解して自分が悪い事をしたと考えた。


 無意識に眉根を下げしょんぼりとユリウスを見つめるホノカの瞳にはぷっくりと涙が溢れる。


(あぁ!こんな事で泣いちゃいけないのに…!)


 何故だか彼等の前では、弱気になってしまう自分に驚き、慌てて目をそらした。


「いや、そうじゃない!」


 ユリウスは躊躇わず否定した。


「では、どうかされたのですか?」



 心配そうに覗き込むホノカの視線から逃れようとユリウスは、ばっと勢いをつけて左斜めに顔を背けたが、ホノカの方が一歩上手で先回りしてユリウスの視線の先に移動したのだ。



「ユリウス様、私、申し訳ないのですが、人の気持ちの機微に鈍感らしいので、直接言っていただけないと直せません…」




 大きな瞳を更に潤ませながら、ユリウスに訴えかけるホノカに罪悪感が湧いているようだけれど、顎に手を当て考えている様だが一つも浮かんでいないのだろう。


 不思議だ。




「貴女はそのままでいい」




 ホノカはユリウスの声と両肩に置かれた手に一瞬びくっと身体を強張らせたが、ふにゃっと表情を崩し、



「でしたら、いいのです。でも!嫌な所があれば、是非仰ってください!」



 と、胸のあたりで両掌で握り拳を作りやる気をみせた。



「おぉ…。わかった…」


「はい!」

「では、私は執務室へ行くが、貴女は今日一日のんびり過ごすと良い。週明けに湖畔の別邸へ行くのだろ?」

「その予定です」


 「でも、貴方は良いのですか?」、本当はそう尋ねたかったが、喉の手前まで来ていた言葉は支えたまま出てこようとはしなかった。


「分かった。…あの動物は連れて行くのか?」


(動物?…あぁ。毛玉ちゃんの事ね)


「はい。あの子はまだ子供ですから」


 ホノカの返答にユリウスは顎に手を当て満足そうに頷いたが、まだ、不安は拭えておらず直ぐに瞳を曇らせた。


「わかった!では、また」


 だが、いつまでもここにいても解決しない。


 まずは、クラークに聞かなければいけない事がユリウスにはあったからだ。


 だから、急いで立ち去る理由はユリウスの中では簡潔していたのだが、ホノカは急に去って行ってしまった夫に困惑していた。


(あまり話せなかった。けれど、以前よりは話せている…。でも…もう少し…話したかったな…)


 消えかかっているユリウスの背中を見送りながら、浮かんだほわほわした感情がくすぐったかった。

  








************



「ご両親はここから去りましたわ」


 深紅のベルベットのマントを目深に着た女性と思われる人物が、シンヤに告げた。


(何を言ってる?…それに、珍しく玄関まで出迎えにいった父と母はこの人物の言う通りどこかへ行ったのか?)


 玄関からはこの人物のみが現れて、出迎えに行ったはずの両親が戻ってこない事にシンヤは訝しげに思いこの人物を見た。


「そんな目で見ないで」


 多分初対面の筈の人物の声は細胞の深い場所まで染み渡り、シンヤの身体を支配していく。


(不快だ。…だが、何故かこのまま、体を委ねていたくなる)


「シンヤ?」


(何故俺の名前を知っている?)



 フードを脱ぎながらシンヤと距離を縮める女は、極当たり前にシンヤの名を呼んだ。



「貴方は私の片割れになるの」




 杜若の腰まである髪を波立たせて、シンヤの腕に絡みつく。


「は?」


 女の無遠慮な仕草や物言いに苛立ちを覚えるのだが、体は言うことを聞かず固まった様に棒立ちになったまま、女が出す音色を聞いていた。


「初めて聞いたのかしら?…初耳であったのなら、不思議に思って当然ね。大丈夫。…シンヤは私の言う通りにしていればいいの。…そうすれば、何もかもが上手くいくわ」


 催眠術にでもかかった様に体がふわふわとする。


 女の言う通りにすれば、領地経営に頭を悩ます事はなくなるのか?


 幸せな子供の頃みたいにホノカとも笑いあえるのか?


 と、頭によぎり女の手を握ろうとした…


「ぴぃ!」


 甲高い鳥の鳴き声がし、ぼすんっとシンヤの胸に衝撃が起きた。


「お前!邪魔をする気なの!?」


 フードの女はヒステリックに叫ぶと白い小鳥を忌々しそうに睨見つける。


 何故だか小鳥が現れてから、シンヤから距離をとりタイミングを伺っているようだった。


 フードの人物と白い小鳥の間には息を飲むような緊迫した空気が漂い、どちらかが動き始めたなら一触即発で何か良からぬ事が起きるに違いないとシンヤを思わせた。


 それを破ったのは………



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