3.
いつもありがとうございます!亀ペースでの更新申し訳ありません!
出された料理はどれも最高に素晴らしかった。
ジェイルと半分こで食べたチーズオムレツはふわっと焼かれたオムレツにナイフを入れると、中からはとろとろのチーズがフォンデュの様に溢れ、卵をチーズフォンデュしているかの様な錯覚さえする。
一口頬張るとホノカは美味しさのあまり、お行儀は悪いのだけれどフォークとナイフを持ったまま天を仰いだ。
「そんなに美味しいですか?」
こちらもまたとろけそうな笑顔でホノカへ尋ねる。
口の中にあったオムレツをしっかり飲み込むと、こんな大人気なく表情を露わにしている自分か少し恥ずかしかったのだけれど、ホノカは大きく頷いた。
すまし顔は忘れなかったが、頬が高揚し赤くなっていたから、隠せてはいない。
「良かった。…あの、ホノカ様、週明けから別邸へいきませんか?」
「別邸へ?」
ジェイルの誘いにきょとんっとホノカは首を傾げ彼を見た。
「はい。モンスター周期でカートレット家の別邸が、人員不足となるこの時期に毎年本家からマテオスの率いる第ニ騎士団が配属されるみたいです」
ジェイルが『みたい』とあやふやに言葉を発したのは、彼自身はまだ8歳という事もあり、実際に目撃したのは5歳からの3年程だったから。
そして、今年がジェイルにとって認識する4度目の暗く寒い冬季の始まりだ。
本邸は首都近郊にあり、辛く凍えるような雪も、手足がかじかむ痛みも知らない者ばかりが住む。
だが、別邸があるいわばカートレット家の監獄と揶揄される湖畔の領地は、こちらで罰を犯した者が送られる孤島。
冬季は氷山に囲まれ侵入者を許さず、また、この屋敷から出る事も出来ない。
このゲーム世界がミステリーであるなら、殺人フラグが立ちまくりだったと思うのだけれど、ここはファンタジー乙女ゲームだから、殺人事件が起き犯人を推理する事はないはず。
「別邸って義母様がいらっしゃるところ?」
婚約を結んでからも触れられなかった義母の話題が夫になったユリウスからではなく、ジェイルの口から聞く事になるなんて…。
聞いてはいけない事でまだ小さいジェイルを傷付けてしまわないように慎重に言葉を出した。
「はい。僕も父様も何年も祖母にはあっていないし、別邸へ行く事もあまりないんです」
確か、ジェイルとユリウスと義母の仲は悪く、絶縁状態になっていたはずだ。
なのに何故…?
「いつもは僕達はなるべく関与せずに過ごしてきたのですが、今回はそうもいかなくて…」
「そうもいかないって?」
「今回は父様とホノカ様が結婚された初めての年でしょ?」
ジェイルは言い淀みながらも言葉を繋げた。
「父様はわざわざ会いに行く必要はないと言っていたけれど、お祖母様は全てを知っていたい人だから…」
『このまま黙ってるはずはない』
ジェイルはそう言いたかったのだ。
彼の止めた言葉の意を汲んだホノカは、
「行くわ」
と、静かに頷く。
「…本当に良いのですか?」
8歳とは思えない思慮深いジェイルの事だから、別邸へホノカを誘う事も随分と悩んだ事だろう。
永遠に会わなくて済むのなら会わないほうが良い。
でも、きっと祖母なら何かを仕掛けてくるにきまってる。
油断している時に仕掛けられるくらいなら、こちらから敵の懐に飛び込んだ方が策を練ることもでき、今までの決着をつけられるかもしれない。
それにしても、聞きたくなくても噂は入ってくるもので、人の口に戸は立てられないのだから、ジェイルは自身の生い立ちを何となくだけれど理解し、聡明さ故に達観していた。
だが、自身を可哀想だとか思った事はないし、これがジェイルへ定められた運命なんだと朧気だけれど自身を一瞥した義母に会った日に絵本や童話で読んだ理想のお祖母様像は木っ端微塵に崩れ去り実感した。
『母がいないのはこの人のせい』
幼きジェイルはただそう感じただけ。
あんな辺境の牢獄と言われる領地に閉じ込められていて何ができる?
ただいない者。
見えない者として扱い続ける予定だったのに…。
(もしホノカ様に何かしたら絶対に許さない…!!)
ジェイルは無意識のうちにギリギリと手にしたカトラリーを握り締めていた。
「ジェイル?」
心配そうにジェイルへと視線を送るホノカの声で、はっと我に返り、再び笑顔を作った。
「何でもないです。了承してくださりありがとうございます!」
「ううん。カートレット家の女主人の役目だわ」
(無邪気に笑うホノカ様を守りたい…)
ジェイルは改めて自分の心に知らないうちに住み着いた感情を反復するのだった。
「さぁ、食事を済ませて準備を始めないとね」
ふふっと優しく笑うホノカのピンク色の可愛い花の様な声を聞きながら、ジェイルは頷くとまた食事を再開し始める。
「そういえば、ユリウス様はご一緒されるのかしら?」
「父様はこちらで仕事があるので、別邸には行けないと思います…。それに今日は夜も一緒に食事を取る事は難しいと言ってました」
「そう…。お忙しいものね…」
ホノカは持っていたカトラリーを置くと溜息を零した。
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