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断罪予定の私ですが、予定は未定だったようです。  作者: 夏嶋咲衣
1.物語の始まり

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番外編 2章へのプロローグ2

昨年は大変お世話になりました!本年もよろしくお願いします(人•͈ᴗ•͈)

 今年は例年にない豪雪だった。


 ベルツリー家の様に農家で生計を立てる者が多い領地の情勢は悪くなっていた。本来であったなら生活や領地の安全、そして、修繕にかける費用を後回しにした結果管理が行き届かなくなり、その皺寄せは最下層民とベルツリー領主が見下す領民にきていた。ただ、作物が育たないといったぐらいであったなら、今年の冬を持ちこたえる事もできたのだけれど、不幸にも体調を崩す者が出始めたと思ったら、爆発的な勢いで感染者を増やしている。伯爵邸を下った先にある農村部にまで疫病が流行り治療すらできないまま亡くなった住民の骸が伯爵家から一番近い大木の幹に積み上げられ続けている。住民の無言の抗議であり、静かな怒りだ。

 まずいと思った時には後の祭りで、何もしてくれず自分達から搾取するばかりのベルツリー家を慕うものはもうこの領地にはだれ一人存在しない。


 だが、当のベルツリー家は何も知らない。気が付かない。


 地の底まで落ちて地上へと登る術を探した時に、蜘蛛の糸はとうに存在しないと漸く気が付くんだ。


 

 


「よ、元気か?」


 1週間ほど前に拾った小鳥はまだ飛べるところまでは回復してはいなかったが、時折シンヤへ向けて歌のようなものを囀るのだ。


 簡素なシンヤお手製の寝床から、ぴょんっと飛び降り不器用ながらよたよたとシンヤに歩み寄ってくる小鳥を不思議と無下にしようとは思わない。


 自分らしくない…。


 こんな弱々しい生き物は自然に返せばすぐに淘汰されてしまう。


 助けたところで、ほんの少し寿命が延びるだけだ。


 また、あの時みたいに悲しい思いはしたくない。


 …なのに、俺は…。


 シンヤは大きく首を振ると自身に言い聞かせるように呟いた。



「気まぐれだからな…」



 誰に言うまでもなく言い訳めいた言葉を発してしまったが、きっとシンヤが何をしても本心では興味のない奴しか周りにはいない。


 強いて言えば、ホノカが唯一の存在だったのかもしれない。


 もうその妹ですらもシンヤの近くにはいないのだけれど…。


 意識せずについた溜息だけで、部屋中が埋め尽くされてしまうのではないかと思う程深い溜息が何度も漏れ、背中に鉛を乗せられてると錯覚するくらい、自分の体が重い。


 シンヤは愛用しているロッキングチェアーに倒れ込むと、右手で両目を隠し天を仰いだ。

 


 それもこれも両親のせいだ。



 ホノカが出ていってからは、全てがうまくいかない…。


 財産を増やそうと試みて見るが、空回りするばかりで増えるどころか無駄な投資を重ね減るばかりである。

 

 しかし、夫妻は箱入り故の苦労知らずから、散財を繰り返しベルツリー家の財産はさらに減り、底が見え始めあんなに馬鹿にしていた娘の力に頼るしかない現実があるのにもかかわらず、今もまだ好き放題する両親を心の内では蔑んでいながら、同じ道を生きるしかない、いや、他を知らないから別の行き方をする術が見つからないのだ。


 自分達の傲慢さには気が付かないまま、今まさに崖っぷちまできていた。一歩踏み出せば、奈落の底へと落ちて行くのみだったのだが、シンヤの気まぐれでおこした善意が引き止めてくれる今を作っていた。


「冷えるな…」



 メイドを呼ぶほどでもないので、暖炉に自身で薪を焚べるが、極僅かな火種が燻るだけで暖を取るには不十分だった。


 仕方なしに椅子から立ち上がると呼び鈴を鳴らしメイドの返答を待ったのだが、いつもすぐある返事もなく、不自然に静まり返った屋敷内は自分の家なのにまるで初めて足を踏み入れた場所の様で妙に居心地の悪さを抱えた。


「おい、誰かいないのか?」


 扉を開け廊下に声を放ったが、やはり誰の声もしない。


 冷たい風がシンヤの体に纏わりつく。


「おい!誰かいないのか?」


 人の気配もない凍てつく屋敷でただ虚しいシンヤの声が響くのみだった。




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