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断罪予定の私ですが、予定は未定だったようです。  作者: 夏嶋咲衣
1.物語の始まり

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番外編 2章へのプロローグ1

いつもありがとうございます!

「とんでもなく恥をかかされた!」

「本当ですわ!」


 顔を真っ赤にして憤慨を表す両親をシンヤは一瞥し、先程まで読みかけだった本に視線を戻した。


 両親が双子の妹ホノカの婚姻式に出席すると息巻いてこの田舎の邸宅を出たのは4日前だ。


 シンヤも出席しろと言われたが、領地の会議があり自分がいないと成り立たないと嘯いて辞退した。

 勿論会議なんてないし、予定もない。ただ、自分の玩具であったホノカが誰かのモノとして、お披露目される場にいたくなかっただけだ。


「ホノカの奴、婚姻式だといっても公爵に相手もされず、いいとこ壁の花だろう。我が学院の為に売ったんだから、せめてガッポリ資金援助を約束させねばな」

「そうですわね!見かけしか良いところがないんですもの。それを使わない手はありませんわ。ですが、あの子だけではあてになりませんし、私達が一言添えなければいけませんわね」

「ああ。それに女といえどベルツリー家の子どもだし私達が欠席というわけにはいかんだろう」


 なんて言っていたのに、このザマだから、血がつながっているという事さえも恥ずかしくなる。


 同じ人間の筈なのに、異国の言葉の様に何を言っているか分からなくなる。

 ざわざわとただの雑音にしか聞こえない。

 

 とても耳障りだ。


(あぁ。うっせぇよ)


 下品に笑う声もホノカをこきおろす言葉も全てが気に障る。


 この二人は第三者を貶める事でプライドを保っているのだから。


 ただ、近くにいて自分達が馬鹿にして害のない人間。

 それがホノカというだけだった。


 まぁ、()()()()同じなのだが…。


 まだ、グチグチとホノカを罵倒している二人を後目にシンヤはロッキングチェアーから席を立つと、この汚く重い空気が漂う屋敷を出て、馬舎に向かい愛馬に跨ると領地の最果てにある崖へと闇夜を駆け出した。


 森へと繋がるあぜ道を駆ける度にホノカと同じ銀糸が、風を受け大きくうねる。


 長閑なことしか長所がないこの領地では若者が遊ぶ場所などなく、特にシンヤの様に領主を父に持つ子供は産まれた時から上下関係が決まっており、上辺だけの付き合い。いや、閉鎖的な付き合いでしかなかった。


 俗に言う井の中の蛙。


 自分の能力を知るには、そう時間は掛からなかったのだが、認めたくはない。


 違う。


 ここから出なければ、自身が無能だと認めなければならない事は起こらないし、もっと下のホノカがいいればシンヤは領地の主でいられた…。

 それが、裸の王様なのだとしても。


 


 崖に辿り着き馬から降りると、シンヤはいつものように木の幹へ手綱を縛りつけ岩へと腰を降ろした。


 ここにいる間は不思議とまっさらな自分に戻る。


 まだホノカとも仲が良かったあの頃の自分に。


 もう、そんな時は訪れないのだけれど…。


 トンッと衝撃を感じた。


「なんだ?」


 自分の肩にあたり地面に落ちた何かを拾うと、羽根に怪我をした一匹の小さな小鳥だ。

 小さな体躯は心臓に合わせ早い時を刻んでいる。


「鷹にでも襲われたか?」


 こんな小さな鳥が一羽でいれば、たちまち捕食されるのは仕方がない。弱肉強食が世の常だから。


 だから、自身もやられないように虚勢を張ってきたし、他人を傷付け続けた。

 攻撃が最大の防御なのだから。それに妹は負けただけ。


 小さくて弱い姿がホノカと重なり、何故だが少し胸がざわついた。



「玩具を見つけただけだ」



 気まぐれだと自分に言い聞かせこの弱き鳥を懐のポケットへと入れる。


 ふと顔に冷たい粒が当たり空を見上げると白い物が空から落ちてくる。


「雪か…」


 今年も終わりを迎える一月目だが、もう白く小さな結晶が空を舞い始めた。


 その雪ははらはらと降り始めシンヤの服に落ちると、小さな染みへと形を変える。


 染みはやがて大きくなり、シンヤの心にも消えない跡を残していった。

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