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断罪予定の私ですが、予定は未定だったようです。  作者: 夏嶋咲衣
1.物語の始まり

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27/66

大切な人と…。

いつもありがとうございます!

「ホノカ様!」


 ジェイルの叫び声を聞きつけユリウスが開かれたままのホノカの扉から部屋へと視線を移すと、ホノカとあの小動物が黒い球体の中に閉じ込められていた。


 ホノカは気を失っているのか、きつく目を閉じたままぷかぷかと漂っている。

 ホノカの銀糸の髪は黒い液体の中で身体に纏わりつくようにたゆたう。


 その球体の横にはグレーの長髪に深紅のルビーの様な瞳の男が怒りを滲ませ立っている。


 陶器の様な白い肌、ルビー色の瞳を縁取るグレーの睫毛は艷やかで美しく、筋の通った鼻は綺麗だ。


「何者だ!」

「はっ、当主様がいらっしゃったようだな」


 フューリアスが挑戦的な言葉をユリウスに投げ掛ける。


「何者だと聞いている!」

「俺は闇の一族の次期王だ」

「闇の一族?闇の一族が何故我が妻を閉じ込める!」


 憎々しげにユリウスを一瞥すると、


「この女が弟を誑かしたからだ」


 と、球体の毛玉ちゃんを指し答えた。


「弟?…って、もしかしたらこの犬の事か?」

「犬ではない!…誑かすだけでは足りず我が弟を侮辱するのか?」


 怒りで体を震わせたフューリアスは球体を浮かせた反対の左手から、黒水晶の粒を出現させるとユリウスに向かって放った。


 不規則な直線を描きながらユリウスへと向かう漆黒の小さな塊達であったが、ユリウスに当たる寸前でピタリと止まった。


 まるで時が止まっているような不思議な感覚にフューリアスは息を呑み、探るようにユリウスの次の動向を待つ。


「スノウドロップ…」


 ユリウスの声に従うようにパラパラと地面へと吸い込まれる様に落ちる姿は、黒い雪の様である。


「お前は氷の使い手か?」

「いや。…私に操れないモノはない。だが、強いて云うならば我がカートレット家は火の使い手の家系。返して貰うぞ!」


 フューリアスの手元から離れた黒い球体はユリウスの胸元まで近付くと音も無く気体へと変化した。ホノカと毛玉ちゃんを覆っていた膜は消えホノカの本来の姿が顔を出した。まだ瞳は閉じたままだったが、銀糸の美しい髪はホノカ·ベルツリーその人だ。


 球体から解放されたホノカは重力に反する様に浮遊していたが、羽根の様に軽やかにゆっくりと引力に引きつけられ、ユリウスの胸にすっぽりと抱きかかえられたのだ。


 一緒に球体から解放された毛玉ちゃんは、ジェイルが無事にキャッチした。


「リオン!」


 フューリアスの怒気を纏った声が響く。


「妻は返してもらった」


 ユリウスは忌々しそうに自分を見ているフューリアスから距離を取り、次の一手に備えジェイルに耳打ちをする。


 ユリウスは真剣な眼差しをして、ジェイルを見ていた。


 その優しげな表情に驚き戸惑いを隠せなかったジェイルだったが、それに応えるようにゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。


「僕はまだ覚醒前です…。失敗したら、ホノカ様に何が起こるか分かりません…」

「だが、本当の父の血を引いている、ジェイルにしか出来ない」


 暗黙の了解でジェイルに本当の父親がいる事は、みんな知っていた。

 だが、言葉にしてジェイルに伝える事は初めてだった。


(こんな時に言うつもりはなかったんだがな…)


「大丈夫だ。お前を信じている」


 ジェイルは深く頷くと、毛玉ちゃんを抱いたままホノカの頭に手を添え、呼吸を整えると他人には聞き取れない程の声で詠唱した。


「やらせるか!ブラックレイン!」


 ジェイルの詠唱を防ごうとフューリアスは黒の粒子を頭上に作り、それをジェイル目掛けて放つ。


「ホールド!お前の相手は私だ!」


 抱きかかえていたホノカをジェイルに託し、ユリウスはフューリアスの攻撃を防ぐと矢継ぎ早に詠唱を繰り返し攻撃を仕掛けた。


「面白い。貴様らは闇の一族に敵対するというんだな?」

「そちらが仕掛けたんだろ?売られた喧嘩は買う主義なんだ」


 ユリウスは腰に帯刀した剣を抜き、静かに構えフューリアスの次の攻撃を待っていた。

 


 

 

 


 

 




(誰が騒いでるの…?)


 ホノカは両手で耳を塞いだ。


 だが、喧騒はホノカの眠りを邪魔するかのように大きくなるばかりだ。


(静かにして…まだ、もう少し眠っていいたいの…)


「では、この世界で君を守ろう」


 聞いたことがあるテノールボイスがホノカにそっと囁き掛けた。


(まだ、眠っていて良いの?)


 微睡みながらホノカはその声に尋ねると、その人は優しい声で囁いた。


「あぁ。ゆっくり眠りなさい○○○の花嫁…」


(花嫁…?あぁ。私はユリウス様と結婚したものね…)


 ふわふわと心地よい何かに包まれ、ホノカの意識は段々と消えていった。


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