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断罪予定の私ですが、予定は未定だったようです。  作者: 夏嶋咲衣
1.物語の始まり

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理解した気持ちと…。

いつもありがとうございます!

(今日はいないのか?)



 ユリウスはいつもの様に書斎から窓の外を見るが、ホノカの姿らしきものは見えず、思わず溜息を漏らした。


「いや、いや、待て…!」


 先日のピクニックからホノカが気になり始めた。


 でも、それを認めるわけにはいかない。


 好きという感情は知らない。誰かを愛しく思う気持ちなんて、カートレット家の人間は持ち合わせていないんだから…。


 だから、これはほんの少し見直しただけだ。


 だが、母のスパイではないと信じては良いだろう。

 少しは距離を近くしても、ジェイルを傷付けるかもしれないという心配は無い。


 何よりもジェイルは仲良くする事を望んでいる。

 だから、婚姻式も挙げたし、彼女が喜びそうな花で神殿も飾った。


 だが、昨日の夜別れたきりで、夫婦になって初めての朝食も昼食も一緒にとっていない。

 なんなら、顔も合わせていない…。


 夫婦のベッドルームで一緒に寝ようと誘うことさえできなかった。


 とんでもなく自分は情けない男だと確信し、新婚ながら明るくない未来が見え落ち込んだ。


 それにもう一つ懸念がある。


 あの、小型の動物の事だ。


 あの小型の動物から魔族の気配を感じ気になるが、ホノカが可愛がっているので、取り敢えず今は様子を見ておこうと思う。


 あの小型動物からは悪意を感じない。いや、寧ろホノカを気に入っている様子が見受けられる。


 だからといって、心配しないわけではないんだけれど…。


 『それを表に出せないのがユリウスね』と穏やかに笑う姉。


 彼女もあの事があるまでは、明るく活発で表情豊かな女性だった。


 今は仮面の様に幾つもの偽りの顔で、民衆の前に立っているのだ。


 それは私も同じ。


 優しさや穏やかさだとかいうモノに暫くふれていない間に、私は表情を失くした。


 だからといって、ホノカ嬢にとった態度は正直酷く、自分でも最悪だと思う。


 態度だけでなく、クラーク達にも見張らせたのは本当に駄目だ…。


 ホノカ嬢から良い印象を持たれるはずは無い。


 なのに、彼女は笑おうと努力をする。


 ただ、その無理に笑う彼女を見ると私の心はざわつき、どうしようもない感情に支配され深い海に突き落とされた様に息苦しくなる。


 もっと自然に笑って欲しい…。


 出だしから遅れた。いや、スタートダッシュで逆走した私は、今数十メートルも後方に立っている。そんな私が願うのは図々しい事は分かっているが、彼女の笑顔を求めてしまうんだ…。


 彼女が喜ぶかもしれないと、婚姻式でドレスを贈ったり、アクセサリーも作った。


 貴族の女性が喜ぶと聞いたプレゼントも提案したが、困った顔で首を振るばかりだ。


 なんとか喜んでくれた花も彼女の笑顔を私に与えてはくれなかった。


 やっぱり彼女は硬い表情で笑顔を作るんだ。


 最初は頬を引き攣らせて笑った顔を作っていたので、それに比べたら大きく進歩したとはいえるが…。


 やはり、ジェイルやメイドのステラに向ける笑顔とは違う。


 いや、仲の良いジェイル達と比べるほうが間違いなのだ。だが…私にも…


 私にもなんだ…!?


 自分の脳裏に過った想いにユリウスは愕然とし、それを否定しようとした。


 だが、否定できない程溢れ出してくる初めての感情に戸惑いを隠せず、しかし、認めたくなくても、認めざるおえない。

 ユリウスの耳は段々と赤色に染まっていき、心拍数が上がるのを感じた。


(私は…ホノカ嬢が好き…なんだ…)


 認めてしまえばいとも簡単に納得出来た今までの戸惑いや、息子のジェイルに対しての苛立ち。


 何故彼女を喜ばせたかったんだという自問自答には、今なら簡単に正しい答えを言う事が出来た。


 彼女に好かれたいからだと…。


 大きな溜息を吐きながら、


「今日はいないのか…」


 とクラークに問えば、惚けた顔で聞いてくる。


「どなたの事でしょうか?」

「ホノカ嬢だ…」

「今日はマテオスの当番ですので…。ユリウス様がお部屋を訪ねられたらいかがでしょうか?」

「私が行ったらおかしいだろう」


 クラークに再び背を向け庭を見たが、やはり彼女はいなかった。


「ホノカ様はユリウス様の奥様です。夫が妻に会いにいくのに理由が必要ですか?」

「…しかし、私が会いに行ったら煩わしいだろうし…」

「お言葉ですが、何故昨日はご自身のベッドルームでお休みされたのですか?」


 誘えなかったからだ!と言ってしまえば簡単だが、プライドが許さない。


「……」

「まぁ、理由はお察ししますが、このままでは何も変わらないんじゃないでしょうか?」


 クラークの正論にぐうの音もでずに、暫しクラークを睨んだが、本当に正論なので、少し考えてみた。


 いや、簡単だ。私が勇気を出して声を掛ければいいはなしだ。


 断られるかもしれないが…。


「クラーク、お茶を一緒に楽しみ、夕食を誘ってみるというのはどうだろうか?」

「良い選択です」


 ニッコリと笑ったクラークに背中を押され、ホノカのいる別邸に向かおうと体の向きを変えた。


 その数秒後、ユリウスの顔は硬直し、一気に体温が下がった事を感じた。


 何かをまた失くしてしまうのではないかという恐怖…。


(違う!そんな事なはない!)


 急に屋敷の空気が自分とは違う黒い物に包まれた。

 ピンと張り詰めた空気を感じ、クラークがユリウスへと視線を向けたのと同じくして、ユリウスは自室の扉を開けて駆け出していたんだ。












 




 

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