初めて出会った人と…。
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次の日。
3ヶ月も行方を眩ませた弟を心配しない筈はない。
灰色の髪を靡かせ空を駆けると、フューリアスは弟のリオンの魔力をたどり、カートレット家へと辿り着いた。
バルコニーに降り立てばより強い弟の気配が感じられる。
「リオン」
そっと弟の名を呼んでみるが、まるで返事はない。
「リオン」
もう一度呼ぶ。
気配は感じるのだから、ここにいないはずはない。
「リオン」
「うるさいな!」
窓の隙間から飛び出てきた小動物は何やら牙をむき出し威嚇しながら、フューリアスを睨みつける。
「リオン!」
「だから、うるさいって!」
他者にはキャンキャンと犬が鳴いているようにしか聞こえないが、フューリアスには弟の声が脳内に響いた。
「リオン、何故そんな可愛い姿をしているんだ?」
「理由があるんだよ」
冷たくあしらう弟に少し悲しくなるが、闇国に帰ってから詳しい話を聞けばいい。
「さぁ、リオン帰るぞ」
両手を広げ弟が胸に飛び込んでくるのを当たり前の様に待ったが、反応は冷たいものだった。
「帰らないよ」
冷たい声で、つーんっとそっぽを向く姿は小憎たらしいが可愛い。
「我が儘言うんじゃない。この俺が3ヶ月も捜したというのに、その態度は何だ!」
「ちょっと。静かにしてよ。ホノカ様に気づかれたらどうするのさ」
さっきよりも牙を剥き出して威嚇する弟から、初めて聞く名前が出てきて首を傾げながら、
「ホノカ様って誰だ?」
「毛玉ちゃん!」
メゾソプラノの声が、誰もいなかった筈の部屋に響いた。
「あれ?毛玉ちゃん、どこ?」
毛玉ちゃんと声を掛けながら、段々とホノカの声がバルコニーに近付いてくる。
(マズイ!)と身を隠そうとしたが、少し遅くバルコニーから離れようと体を斜めにして手摺を跨ごうとしているところで、ホノカに見つかった。
固まるホノカとフューリアス。
「きゃあぁぁぁ!」
「マズイ!」と声に出てしまったらしい。フューリアスに向かって、近くにあったクッションやらを一心不乱に投げながら、
「マズイ!って何なんですの!誰かぁ!泥棒です!!」
と、ホノカは叫んだ。
リオンも何故かホノカに加勢して、フューリアスに牙を剥く。
だが、フューリアスは魔族の時期王だ。どんなにリオンが牙を剥き、フューリアスが力を出していないところで、覚醒前のリオンはフューリアスにとっては正に子犬の様な存在。
太刀打ち出来る筈がなかった。
「リオン!いい加減にしろよ。何が気に食わなくてそんな反抗的な態度をしているんだ」
「うるさい!帰れ!帰れよ!」
怒りを抑えきれないリオンに、今何を言っても無駄かもしれない。
じゃあ、どうする?
捕獲するしかないだろ…。
フューリアスはリオンに向かって左掌を向けると、彼の人差し指から黒い液体状の物が生まれ液体は1本2本と左手を包み込むまでに範囲を広げていく。
それはまるで生きているモノの様に、リズミカルに動き小さな球体となった。
(黒い地球儀みたい…)
ホノカの脳裏に幼い頃我が家にあった、地球儀が浮かんだ。
一点を軸にしてクルクル回る姿は地球儀そのものだった。
ただ、この球体からは禍々しい力の様なモノが漏れ溢れホノカの胸を締め付ける。
昔、こんな悪意に飲み込まれた…。
鈴木ほのかが?
それとも、ホノカ·ベルツリーだった?
浮かんできた疑問を打ち消す様に頭を振り、
(これはゲーム。いくつかあるバッドエンドの1つを思い出しただけ…。今は、断罪されないように頑張ってるじゃない…)
と、自分に言い聞かせ自分の意思では止められない体の震えを抑えようと強く自分の体を抱きしめた。
「ホノカ様…?」
リオンはホノカの異変に気がついていたが、目の前の兄が作り出したモノの動向から目を離す事はできず、じっと球体の正体を探る。
うごめく姿はこれが地球の始まりだったのかもしれないと思わせるように、球体の中で液体状の何かがマグマの様に動いていた。やがて、動きは小さくなり、今は水の様に静寂だ。
フューリアスが作り出した球体は自らと弟の間で、ただぷかぷかと浮いている。
リオンは見た事ないこの物体に警戒し、距離を保つしか今は術がない。
この小さな体でホノカ様を守れるか?それとも、狙いは自分だけだから、ホノカ様には害はないか?
ぐるぐると思考が渋滞するが、結論には辿り着かない。
ただ、自分と球体を睨みつけるリオンにフューリアスは静かに尋ねた。
「リオン、最後の確認だ。本当に帰らないのか?」
「帰らない!」
フューリアスは一度大きく息を吐くと、
「行け」
と、指を弾く。
フューリアスの声を合図にして、球体は彼の手から放たれ一度液体に分裂し幾千もの粒になり、リオンを飲み込んだ。
リオンは水の中で溺れている様で、何とかそこから逃れようと足掻くが彼の空気の粒はかぽかぽと上に上がっていくだけだ。
「毛玉ちゃん!」
ホノカは手を大きく伸ばし、リオンを捕える黒い球体に自ら体を委ねた。
「ホノカ様!」
勢いよくホノカの寝室の扉が開けられ、マテオスとジェイルが部屋へ飛び込んでくる。
「マテオス!ジェイル!」
ホノカの悲鳴に似た言葉は泡の粒になり、2人に届く事はなかった。
(やだ…何か眠くなってきた…)
ホノカは重くなった瞼を閉じると同時にぼやけた意識を手放したんだ。
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