風邪のようかと…。
いつもありがとうございます!短めでごめんなさい(_ _;)
穏やかな風が新緑の木々を揺らす。
初秋の今がミラージュ王国では一番過ごしやすい気候だ。外にいても照り付くような太陽の暑さもなく、また、梅雨の様に不安定な天気の変動も少ない。外遊びには絶好の時期なのだ。
だからか、屋敷の外へ出ると子供達のはしゃぎ声が聞こえる。
(ジェイルにも親しい友達が出来ると良いんだけれど…)
目の端でジェイルを見るが、毛玉ちゃんと楽しく遊んでいるようだ。時折聞こえる声には笑い声が混じる。
「ジェイル〜、私も入れてくださる?」
ホノカの声に目を輝かせてこちらを見たジェイルは、満面の笑みで頷き走り寄ってきた。だが、ホノカまであと2メートルの距離まで近付き止まり、ボールを見せる。
「これで今遊んでいたんですよ。投げますね」
「あ、待って!」
ホノカの頭上を軽々と飛び越えたボールは幾度かバウンドした後、誰かの足元まで転がると動きを止めた。
「ごめんなさい!」
「今日はボール遊びか?ホノカ嬢は何かを投げたり受け止めたりする遊びが好きみたいだな」
声の主はユリウスだった。
(ピクニックでの事があって、変に意識してしまうわ…)
自分の感情を悟られないように、無表情でユリウスへと視線を向けた。
ユリウスはボールを拾うとホノカへ直接手渡そうとしたが、ジェイルが無邪気な笑顔で、手を差し出すので、息子の右手に落ちないようにそっと乗せた。
「バドミントンの事を仰ってるのですか?でしたら、あちらはシャトルを打ち合う遊びです」
「そうか」と独り言のように呟いたユリウスが、チラリと毛玉ちゃんに視線を移したが、すぐにホノカへと移し軽く咳払いをした。
「何もないか?」
「え?」
「変わりはないか?」
「特には…」
あるとするならば、彼に見つめられると体温が上昇するくらいだ…。それにしても、何故こんなふうに聞かれるのか分からないが、どうやら自分を気に掛けてくれるのだとは認識したホノカは、笑みで答えようとまた不自然に口角を上げた。
ユリウスの目が少し見開かれ、何か言おうと口を開いたり閉じたりしていたが、はぁっと額に手を当て溜息を付くと、
「邪魔をしたようだな」
と告げ、くるりと後ろを向いてこの場を立ち去ろうとした様だったが、一度足を止めこちらを向かないまま、言葉を発した。
「じきにシャーリーがドレスのデザイン画をもってくると言っていた。…貴方の希望があるなら、その時に伝えると良い…」
「ありがとうございます!」
「あ…できればドレスの色はエメラルドグリーンだと」
「父様の瞳の色ですね」
「体裁だ」
ジェイルの言葉に慌ててユリウスは言葉をかぶせた。
「新婚早々、不仲だと思われるのはカートレット家としてはよろしくない」
「わかりましたわ」
ホノカの声を背中で聞き、ユリウスは今度こそ自室に向かって歩き始めた。
「どうして私はこうなんだ…」
ため息交じりに呟かれた声は誰にも届く事はなかったんだ。
「ねぇ、毛玉ちゃん。私の笑い顔ってそんなに怖いかしら?」
ホノカの問いかけに首を傾げ見つめる毛玉ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
抱き上げたまま自室のロッキングチェアーに体を預け、膝に毛玉ちゃんを乗せゆらゆらと揺らした。
椅子の揺れるリズムに合わせて、頭を揺らす毛玉ちゃんの可愛さで、先程のもやもやは少し晴れてくる。
「私ね、人前で表情を作るのが苦手なの…。さっきも、ユリウス様、変な顔をしてたわよね?…はぁ。多分、不気味な顔になってたんだわ…」
しょんぼりと項垂れるホノカの頬を毛玉ちゃんが、ペロッと舐めた。
「ありがとう!励ましてくれるのね…」
再度毛玉ちゃんに抱きつくと、顔の周りにもふもふの毛が当たり、それがなんだかくすぐったいが温かな気持ちを芽生えさせてくれる。
「いつか…上手く笑えるといいな…」
毛玉ちゃんを抱きかかえたまま、ホノカはいつの間にか眠りの世界へ落ちていったのだった。
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