ゆったりとした時間と…。
いつもありがとうございます(人•͈ᴗ•͈)
「ホノカ様、今日のお茶は何ですか?」
「今日はシンプルにダージリンよ。デザートは苺のショートケーキなの!」
「わぁ、僕苺のショートケーキが一番好きです!」
キラキラと目を輝かせてホノカに答えるジェイルとそれに優し気な微笑みを浮かべ喜ぶホノカ様。
クラークには最近気づいた事があった。ホノカは意識して笑顔を作ろうとすると、引き攣った怖い顔になるが、無意識下ではちゃんと普通に笑える。
ただ、当の本人は気が付いていないので、彼女が気を許した者以外は見ることも出来ない天然記念物並みにレアなものだということに…。
けれど、ジェイルは自分がホノカの笑顔を許された特別な存在である事を知っている。息子として…。その気持ちを逆手に取った戦略なのだが、この勝負誰の手に渡るのだろう?
(寧ろ、懐いてないか?)
護衛騎士クラークは先日から幾度となく浮かんでは消えるジェイルの変化が確かな物へと変わっていく瞬間を実感していたのだ。
ホノカに対するジェイルの言動は、「良い関係を築いた方が良い」と父親に言っていた様な、表面的なものには到底思えない。
時間があれば、ホノカと食事やティータイムを過し…いや、なければ無理矢理にでも作る。
率先してホノカとの時間を作っていた。
(指摘すれば、怒るだけだから言わないが…)
ホノカ様護衛は今日はクラークの当番だ。
ユリウスからホノカを見張っておけとの命令だから、三騎士達は交代で任務に励んで入るが、宝探しの後からアオイはホノカに心を許しており、客観的な目で見る事は出来ていない。
マテオスは何を考えているのかわからない。
あれ以来アオイを煽る様にホノカを褒める事はなくなったが、ホノカを完全に信頼した訳でもなさそうだ。
そして、クラークはユリウスの忠臣だから、ホノカを信じる事はまだ出来ないのだ。
「クラーク、ユリウス様がお呼びよ」
「あぁ」
アオイがやって来てユリウスからの呼び出しを告げたので、彼女に暫しバトンタッチする事になった。
アオイやホノカも女子同士だと会話が弾んで楽しいみたいだ。
クラークもホノカと2人だと何となく居心地が悪いので、この毎日の定期報告は気が楽でもある。
だが、この定期報告は毎晩定時に行われていたので、何故今呼び出しがあったかは謎だ。
別邸の暗い小道を足早に抜け本邸に入り、きちんと整えられてい廊下を進み、ユリウスの部屋の前に立つと扉をノックした。
「入れ」
「失礼致します」
ユリウスの許可を得て扉を開けると、彼は窓際に立っていた。自身でもホノカを見張っている様だ。
クラークを見る事もなく、
「変わりはないか?」
と、尋ねた。
「ホノカ様に変わりはございません。しかし、ジェイル様に少し不思議な点がみられます」
「ジェイルに?」
外から視線を外しクラークの腹を探る様にじっと見る。
「はい。あの、私にはジェイル様はホノカ様に心を許しておいでのように思えます…」
「はっ⁉あの子が心を許すだって?」
「…はい…」
「クラーク、前に言っていた外出だが、明後日に決めた。それから、私も同行する事が条件だ」
突然のユリウスの決定にクラークは驚いたと同時に、料理長やメイドも大変になるぞと溜息しか溢れない。
「何だ?問題でもあるか?」
「いえ。ジェイル様とホノカ様にお伝えします」
「ああ。いや、ホノカ·ベルツリー嬢には私から言う。部屋へ来るように伝えてくれ。さぁ、もう下がって良い」
ユリウスはまた、窓へと視線を向け、別邸の庭へと視線を移すと先ほどと変わらず銀糸の彼女は表情は乏しいながらも時折ぎこちない笑顔を浮かべてジェイルと午後のティータイムを楽しんでいる。ジェイルもまた、ホノカとの時を楽しんでいる様だ。
(ジェイルを誑かしたのか?)
そうでなければ、あのジェイルがそんな行動に出るわけがない。
幼い頃から見てきたジェイルは怜悧な少年であり、子供らしくない程に冷静であった。
他の子供が感情で行動する時もジェイルは周りをよく見て自身の損になる事はしない。
悪くいえば狡猾、よくいえば聡い子だ。
(そんな子が侮られかもしれないリスクを犯している…。もしかしたら、私が思い込んでいただけでジェイルは年相応に母親を恋しがる子供だったのかもしれない…)
ユリウスの考えは検討外れなのだが…。
首都から馬車で半日程かかる緑豊かな小さな街がベルツリー家が治める領地だ。春には赤や黄色の花が咲き誇り、秋になると果物が鈴なりになる。
そんな自然豊かな田舎の領地がベルツリー家は嫌いだった。社交のパーティーに出れば、首都で暮らす奴らには馬鹿にされるし、流行りもシーズン遅れでやってくるので、なんだか時代遅れで野暮ったくなってしまう。だから、週に何度も商人を呼んでは服だとか靴だとか身の回りの物を大量に買っていたら、家自体が傾き始めた。
それに連鎖してベルツリー家が田舎コンプレックスから4代前の当主が建てた学院も財政難になるという悪循環。まぁ、学院の資金をも使い始めた結果なのだから、当然である。
「はぁ、今日もつまんねーな」
邸宅の庭にある小高い丘に寝転んで長閑なこの領地を眺めていたら退屈すぎて大きな欠伸が出た。この男はシンヤ·ベルツリー。ホノカの双子の兄だ。
「お坊ちゃま!」
この緩やかな登り坂を汗をかきながら小走りで来た男はベルツリー家の従者であり、シンヤがホノカを見張る為に度々送っている男だ。
「なんだ?」
「あの女から封書を預かっております!」
「あぁ」
従者から封書を受け取りポケットに雑にしまうと、シンヤの様子に何やら満足した男がボロボロと汚い言葉でホノカを罵り始めた。
「公爵の婚約者になったからといって、まるで自分の品位も上がっていると勘違いしておりましたよ!あんな別邸なんかに追いやられている様では出戻ってくるのも時間の問題ですね!いやぁ、本当に下品なお」
従者の言葉はシンヤの拳により先を伝える事を許されなかった。何度も振り下ろされる右手によって、顔はどんどん腫れ上がり、気力をも奪っていく。
「もうし…ゆる…」
涙を零しながら許しを請うが、何故自分がこんな事をされているか分からない。だって、普段からシンヤや家族が話していた事だから。
暫く殴り続け少し気分がマシになると、シンヤはボロ布を捨てる様に従者を投げ捨て、もう意識がない男へ向かって言葉を吐いた。
「あいつを傷付けていいのは俺だけなんだよ」
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