ジェイルのお誘いと…。
おはようございます!いつも遊びに来てくださり感謝(人•͈ᴗ•͈)
『その花は無条件に美しい。ただし、毒を持っている』 【恋の勝利は誰の手に?】より
「ジェイル、今日はご招待ありがとう」
ホノカがドレスを摘み綺麗なカーテシーをすれば、ジェイルが右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出すようにするボウアンドスクレイプで返した。
鈴木ほのかはこの貴族の挨拶が大好きで、『恋勝』でも使ったくらいだ。
社交でのお辞儀は一部の儀礼的な場を除いてはボウアンドスクレイプはほぼ消滅している。しかし、男性が女性の手にキスをするときは、必然的にお辞儀が必要となるため一部の文化圏では残っている。
「いらしてくださり嬉しいです」
ジェイルの部屋がある本邸は奥まった別邸とは違い、眩しい日光が差し込みじかに当ってしまった肌がちりちりと焼け付く。
(それにしても、お庭で何をするのかしら?)
昨夜ホノカの部屋にティータイムの準備をしてくれたメイドさんが、ジェイルからの招待状を運んでくれた。
肩すれすれの濃紺の髪とスッキリとした切れ長の瞳が印象的。女性にしては高めな身長は多分160センチ代後半。
「ありがとう」とお礼を言うと前回の様にまた驚いたようだった。
「ジェイル、それで今日は何をするの?」
動きやすい服装という指定だったので、乗馬の時と同じパンツスタイルにしようと思ったが、シンプルなパープルのドレスにした。
「宝探しです!」
「宝探し?」
えっへんと胸を張る姿がなんだか可愛らしくて、クスッと笑ってしまった。
「ホノカ様?」
頭を横に倒しホノカの名前を呼ぶジェイルは昨日とはまるで別人だ。
無理に背伸びしている感じはなく、年相応の8歳の少年である。
「何でもないのよ」
「そうですか?」
ホノカが穏やかな笑みを浮かべ頷くとジェイルは安心したように笑い、騎士三人に声を掛ける。
ジェイルの呼び掛けに三人は横並びに整列をして、礼をした。
「ホノカ様、クラークは昨日会いましたね。マテオス、アオイ、自己紹介を」
マテオスは一歩前に出ると、恭しくホノカの手を取りキスをした。
体が強張ったホノカだったが、ゲーム内で騎士の挨拶を自身が設定していた事に気が付き、「これはただの挨拶よ」と言い聞かせ動揺した心を落ち着かせる。
ただ、心がざわざわしたのは自分だけではなく怖い顔をしたアオイに気が付いたからだ。
今にもギリギリとした歯ぎしりが聞こえてきそうな程に露骨に敵視している。
(そうか…アオイはマテオスが好きだったのだわね)
「マテオスです。これから私も護衛に加わりますので、よろしくお見知りおきを」
「交代にでしょ。私はアオイ」
「ふんっ」と擬音が出てきそうな程、露骨に不貞腐れた顔でホノカに挨拶をするアオイをクラークが鋭い目つきで威圧するが、アオイは何処吹く風だ。
(やれやれね…)
「アオイ、失礼だよ」
ピリピリした空気を破るように、ジェイルの声が響いた。
ビクッと顔を強張らせ服の裾を両手で握りしめたアオイは、小さく「ごめんなさい」と呟いた。
「気にしないで!さぁ、ジェイル、宝探しのルールを教えて」
パンっと両手を合わせて話を宝探しへと持っていったホノカを見て、マテオスはにんまりと笑う。
それに気がついたクラークは「やれやれ」といった表情で、
「ユリウス様の婚約者であり、次期公爵婦人だぞ」
と小声でマテオスに耳打ちした。
「わかってるよ」
その様子を苛立ちを隠しきれないアオイが見ていた事も知っている。
むしろ好都合だ。
何かを企んでいそうなマテオスの笑いに嫌な予感しかしない。
しかし、この女性の本性を探る機会かもな。
「昨日ここにいる三人に宝物を3つ隠してもらいました。僕もどこに隠されているのか知りません。制限時間は1時間でより多く宝物を見つけた方が勝ちです」
「分かったわ。…そうね、勝った人にご褒美をつけたらどうかしら?」
「ご褒美?」
わくわくした顔で尋ねるジェイルの瞳は期待感でキラキラしている。
「えぇ」
「何を貰えるの?」
そこまではまだ考えてなかったホノカは顎に手を当て少し考えると、
「負けたほうが勝ったほうの言う事を聞くのはどうかしら?」
とジェイルに確認をした。
少し考えている様子を見せたジェイルだが、ぱっとホノカを見て、また少し視線を落とし、恐る恐る口を開いた。
「何でもいいの?」
ホノカはコクリと頷いた。
「あ!でも、互いに出来る事って条件をつけましょう」
「分かりました。…僕が勝てばホノカ様が僕の願いを叶えてくれる…」
「そうよ。私が勝った場合はジェイルが私の願いを叶えてくれるの」
「はい!」と元気に返事をしたジェイルを微笑まし気にマテオスは見ている。
「では、宝探しスタートです!」
ジェイルの掛け声で宝探しがスタートされ、二人は各々の探したい場所へと小走りでこの場から離れて行った。
「ジェイル様の心を掴むし、無条件に美しい花は違うな~」
「何よそれ」
「アオイ知らないの?ホノカ様が世の男性に言われてる事」
ムッとした顔でマテオスを見たアオイを更に煽る様に言葉を続けた。
「知らない!」
ふいっとマテオスから顔を逸らすが、横目でちらちら気にしている。
「ふ~ん。傲慢で棘があったって、恐れる事なく美しい花に惹かれ手に入れようと思う男は案外多いんだよ」
「…マテオスも…?」
不安そうなアオイの瞳には気が付かない振りのマテオスは意味深に笑うばかりで、明確な答えを出してはくれなかった。
何度も好意を示したが、痩せっぽっちで女性らしいスタイルではない自分は、マテオスの恋愛対象ではないんだと知らされるばかりだ。
ホノカへ視線を向けると男好きする顔、それから、スタイルの良さがアオイにとって疎ましく、まさしく目の毒だった。
もしかしたら、マテオスはあの人が好き?
顔を左右に振りアオイは自身の考えを否定した。
正式に会うのは今日が初めての筈だ。今はまだ、恋愛感情はないだろう。いや、そう思いたい。
だったら、どうする?
恋が芽生える前に摘めばいい。
アオイは笑顔を張り付かせホノカの元へ歩んだのだった。
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