騎士は悩むと…。
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『指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます』
「うわぁ!頭がおかしくなりそうだ…!」
カートレット家の騎士クラークは、信じられない場面に直面し自身の今までの考えを覆さざるおえない…とまではいかないながらも、あの呪文が脳裏を離れず思わず叫んでいた。
当たり前だが、この世界には針千本飲ますなんていう歌はないのだから、彼が戸惑うのも無理はない。
(あれは何なんだ…。針千本飲ます?笑みを浮かべながら怖いことを言っていたぞ…ジェイル様を殺す気か?…ユリウス様狙いだと思っていたが、それだけではないのかもしれない。あの腹に一物をもつベルツリー家の娘なのだから、私達が想像もつかない悪巧みをしているという事もあるしな。ジェイル様の事もいつも以上に気を付けないといけない…)
クラークは針千本飲ますの呪文に気を取られているあまり、ホノカが自分の本心を見抜いている様だという事もおざなりになっている。
警戒するに越した事はないが、先ほどのホノカを見てしまうと噂を鵜呑みにすることが果たして良いことなのか分からなくなる。
(だが…ジェイル様を心配した様子は演技とは思えない…)
う~んと顎に手を当て考えるが、簡単に結論が出るわけもなく、また同じ事を延々と考える羽目になるのだから、真面目すぎるのも辛いものだ。
「クラーク、難しい顔してどうしたんだい?」
白髪のマテオスが肩に剣を乗せて歩いてきた。
横には名前と同じ青い髪をツインにしたアオイが纏わりついている。
(これでもナンバー2なのが信じられない)
「いや、ホノカ嬢だが、怖い呪文を唱えていた…」
「怖い呪文?」
「あぁ。約束を破ったら、針を千本飲ませるらしい…」
「怖っ!」
アオイは自分の体を抱きしめると恨めしそうな目で、クラークを見た。
「アオイ…なんだその顔は」
「どうして呪いなんて掛けられないように叩き潰さなかったのよ」
「はいはい!落ち着いて」
マテオスは二人の間に入り、
「ホノカ様、噂通りの令嬢だった?」
と、軽い感じでクラークの肩に手を掛け尋ねる。
顎に手を当て何やら考えていたクラークが独り言の様にぽつりと呟いた。
「全く違うな」
「ふ~ん。良い子って事か…」
大好きなマテオスの返答にむっとしたアオイは、クラークを睨み上げ念を押すように言葉を投げた。
「ちょっと!クラーク騙されてやしないわよね?」
「最後まで聞け」
30センチ近く背の高い男からの威圧に少しは怯んだかと思いきや、この少女はつんっと横を向き「ウルサイ」と吐き捨てる。
「ちょいちょい、喧嘩腰にならないよ」
アオイの頭をマテオスが撫でるものだから、アオイは破顔して両頬を押さえて下を向いた。
自覚無しにやってるからこの男はたちが悪い…。
「続けるが、噂で出回るような傲慢な女ではなさそうに思える。だが、俺の本心を見抜いたり、油断のできない女だな」
「クラークの?」
「あぁ。敬語は使いたくないのでは?と言われた」
マテオスは驚いた様に目を大きく開くと、
「それはまた、はっきりとした物言いだ。頑張って」
クスクスと可笑しそうに笑う。
「他人事ではない。今日、暗殺者にジェイル様が狙われたのは聞いただろ?」
「うん。氷の魔術を使う刺客だそうだね」
「あぁ。ユリウス様は、多分マーガレット様の手の者ではないかと考察されている」
マテオスとアオイも深く頷く。
「だから、私達三人が交代でジェイル様の護衛をする事になった」
アオイは驚き声を上げ、
「え?でも、坊ちゃまは殆ど屋敷内にいらっしゃるから、結界魔法で守られてるでしょ?私達いる?」
と、訝しげな顔でクラークに尋ねた。
「今まではな」
「は?どういう事よ」
クラークに怒りをぶつけても仕方ないとは分かっているが、自分より少しでも詳しい者に聞いてしまうのも仕方ない。
「ホノカ様と外出される。だから、結界の保護下から外れる」
「で、僕達に白羽の矢が立ったってわけか」
うんうんと頷くマテオスとは対象にアオイの顔はだんだんと赤味を帯びていく。手は拳をわなわなとさせて誰が見ても怒りを我慢しているのが分かった。
「まじ、なんなのよ。あの女。マテオスの近くに女がいるだけでも、鬱陶しいのに…。絶対追い出してやるんだから!」
アオイの不穏な言葉はあまりにも小さ過ぎて誰の耳にも入らなかった。
自室のベッドに浅く腰掛け、ジェイルは自分の小指をうっとりと眺めていた。
「指切りげんまん…」
小さく呟きホノカが絡めた小指を見ているだけで、当たり前のように存在している物が特別に感じ、まるで宝物でも手にいれたみたいだった。
優しく包み込むような声でホノカに名前を呼ばれるだけで、胸がざわめき、ふわふわとした浮遊感に襲われる。
「ホノカ様は…僕の事が好きなのか?」
自身の唇から思わず零れ落ちた言葉に驚き、烏の濡羽色の睫毛をぎゅっと閉じ、両掌で瞳を覆ってベッドへと倒れた。
「…息子として…。でも、『一人になんてしない』と言ってくれた。今はそれでいい。…約束したんだから」
右の小指をもう一度眺め愛しそうにキスをすると、ホノカの顔が浮かびまた頬が緩む。
「明日は何をしようかな…」
(乗馬、ティータイム…はありふれている。もっと、わくわくしてホノカ様も喜ぶ事…そうだ!)
ベッドから勢いよく起き上がると明日の準備の為にクラークを呼んだのだった。
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