第96話 私の自慢
町で見かけた宣伝に『あなたの自慢を教えてください』と言うのがありました。投票用紙に自分の自慢を書いて入れると抽選で限定のスイーツが当たるようです。フルーツたっぷりに生クリームがどっさり。とても美味しそうなスイーツです。食べてみたいです。とは言え私に自慢できることなど何もありませんね。強いて言えば究極の金欠時に食べるものを計画的に食いつなぐ能力でしょうか。ファーストフードのポテトだけで3日間耐えきったことがあります。
「ナナカさんは自慢できることってありますか?」
「まあ、お菓子作りかな? 私オリジナルのお菓子も作れるし」
確かにナナカさんの作るお菓子は絶品です。
「ミーニャさん・・・・」
「どうした? 途中で聞くのを止めて」
ミーニャさんに聞いたら怖いことを言われそうです。
「私の自慢を聞きたいんだな? 仕方ない教えてやろう」
聞いていないのですが言いたそうですね。
「1度に100匹のモンスターを殺したことがあるぞ」
やっぱり。
「よし、これを投票してみるか?」
「そんなの投票したらラスボスだってバレますよ」
「そういうリーサは何かないのか?」
「私は特に・・・・」
本当に私って自慢できる物がないですよね。どこにでも居そうなキャラですし。
「あ、得意な物があります。暗算です」
「安産? 付き合った彼氏もいないくせに子どもを産んだことがあるのか?」
「暗算です! 紙に書かずに計算することです!」
「ほお、そんなことがきるんだ?」
「問題を出してみてください。すぐに答えますから」
「じゃあ、3+5は?」
「嘗めてるんですか? 8です」
「おお~!」
絶対に嘗めてますよね?
「5桁以上の数字でお願いします」
「5桁というと531とかか?」
「ミーニャさん、もしかして数学苦手ですか?」
「この世界では計算など必要ないのだ。学校もないし」
学校ないんですか? 何と羨ましい! もし私がこの異世界で育っていたら人生変わっていたかも知れません。
「だったらナナカさんお願いします」
「じゃあ、59623+74513は?」
「134136」
「早い!」
ナナカさんが驚きの表情で私を見ます。
「どうですか?」
「でも、今の答え合ってるの?」
「合ってます! 疑うのでしたら紙に数字をメモしてから出してみてください」
「わかったわ。だったら39875+88216は?」
「128091です」
「合ってる! どんな仕掛けがあるか教えてよ」
「手品じゃありません!」
私は小さな時から算盤を習っていましたからこれくらいできるのです。今思えばあのときはまだ家にお金がありましたっけ。
「かけ算もできますよ」
「何だそれは?」
もしかしてかけ算を知らない? 異世界ってある意味凄いです。
「じゃあ、思いっきり難しい問題出すよ」
ナナカさんが意地悪っぽい言い方で言います。
「235968×513628は? さすがにこれは無理でしょう」
「ええっと121199771904ですね」
「嘘でしょ! 合ってる! これって作者が必死で電卓叩いて答えを書いたレベルの数字よね?」
「リーサ! これは十分に自慢できるぞ!」
「そうですか?」
「勿論だ!」
何か嬉しくなってきました。人に凄いと言われたのは初めてです。
「私これを投票します!」
そして後日私達の所に手紙が来ました。どうして旅先の私達に届けることができたのでしょう。何かフクロウのような鳥が運んできました。異世界って凄いです。
『先日は『あなたの自慢を教えてください』に投票していただき誠にありがとうございました。私の自慢大賞が決定いたしましたのでご報告いたします。第1位は『1度に100匹のモンスターを殺したことがある』と投票してくださったミーニャさんです! 審査員の全員一致で決まりました。おめでとうございます。以下の順位は下記のようになっています。多くのご応募ありがとうございました。またこのような企画がありましたらよろしくお願いします』
どういうことですか!? これでよくラスボスだって疑われませんでしたね? しかも本名まで載せてるじゃありませんか! 大体本当か嘘か分からないですよね? これで決まるのはおかしいです。私のは10位以内に入っていません。予選通過者50人にもありません! どうしてなんですか?
でも1位がミーニャさんってことは限定スイーツも届くってことですよね? だとしたら一口位は分け前を貰えるかも知れませんね? 早速ミーニャさんのご機嫌を伺うことにしましょう。
「ミーニャさん、優勝おめでとうございます。凄いですね~」
「それほどでもないぞ」
ミーニャさんが満足そうにふんぞり返っています。
「あれ? ミーニャさんの口元に生クリームのような物が付いてますけど・・・・」
「さっき限定スイーツが届いたので食べたのだ。とても美味しかったぞ」
ガーン!!!
今度こんな企画に出会ったら思いっきり大げさな嘘を書いてやろうと誓う私なのでした。




