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第92話 生け贄を救え

「え~い、うっとうしい」

私が呪文を唱えると野生モンスターは消え去った。私の顔を知らぬ野生モンスターは普通に襲ってくるからうっとうしい。そんな輩は容赦なく消し去ってくれる。これが私のやり方だ。


 その時だった。若い女性が飛び出してきて話し始めた。

「今の戦い見せていただきました。お強いんですね」

「それほどでもないが」

一応謙遜しておく。

「お願いがあります。私を助けてください」

「助ける?」


 女性は私の手を握り更に懇願してきた。

「この村はエレクトリカルドラゴンによって支配されています。毎月一人の生け贄と大量の貢ぎ物を出さないと酷い目に遭わされるんです」

「エレクトリカルドラゴン? 聞いたことがないぞ」

私の知らぬモンスターとは珍しい。早速ドラゴン図鑑で探してみよう。


「それで今月の生け贄が私なのです。どうかお助けください」

「なるほど」

今の世にこんな話があるのか? これでは昔話ではないか。でも、面白そうだ。助けてやろとするか。


「わかった。私に任せておけ」

「ありがとうございます。何てお礼を言っていいか」

女性は涙を流して喜んでいる。これは良いことをしたな。ところでどう助ければいいのだ?


 私達は村長と名乗る男のところに行って詳しい事情を聞いた。

「すると毎月エレクトリカルドラゴンにいろいろな要求をされるわけか」

「はい、生け贄は決まって若い女性です。この村の女性はかなり減ってきています。恐らくこのままいくと村は絶滅の運命が来るでしょう」

「できたらそのエレクトリカルドラゴンとやらを見てみたいものだ」

「もうそろそろ西の空に現れる頃だと思います」


 するとその時、若い男が村長の家に飛び込んできた。

「現れました。エレクトリカルドラゴンです!」

「おおグッドタイミングですな。是非見てください」


 私達が家から出ると西の空に大きな見たこともないドラゴンの姿が見えた。

「今月の貢ぎ物を伝える。美人タイプの若い女性と百日分の食料、そして金貨1000枚だ。いつもの場所に持ってこい。明日の午後6時が期限だ。少しでも遅れるとこの村は全滅することになるぞ。いいな!」

大きいな。あのようなドラゴンが存在していたのか。それにしても見たこともない電飾で飾られている。趣味が悪くないか?


「毎月この有様です。でも私達にあのようなドラゴンを退治する実力もなく言いなりになっております」

「わかった。生け贄の女性の代わりにこの女性を連れて行こう」

「ちょっとミーニャさん!」

なぜか私が指名したリーサが慌てだした。


「第一、私が生け贄になっても何も解決にならないじゃないですか!」

「なぜだ?」

「私が弱いからです! ミーニャさんが生け贄にならないと意味がないんです!」

「そうか。わかった」


 と言うことで私は生け贄用に用意された籠に乗った。

「お前たちも付き人として付いてこい」

「え~」

「ナナカ! 聞こえてるぞ」

こうして私は数名の男性に籠を担がれ、その後ろをリーサとナナカが付いてくる形で敵陣へと向かった。


「生け贄と貢ぎ物を持って参りました」

建物の入り口付近で籠が停まると一番先頭にいた男性が門番のモンスターに伝えるのが聞こえてきた。

「ご苦労。生け贄を確認する。籠を開けよ」

モンスターが私を見るのが分かる。

「確かに注文通りの美人だ。ところでこの2人の女は何だ?」

「付き添いの者です」


 暫く考えた門番は疑問をぶちまける。

「付き添いって何だ? 必要か?」

「はい、今回の生け贄は身分の高い女性ですので」

「ふうん。それにしても生け贄より付き添いの方が可愛いのはどうしてだ?」

「貴様! 何を言った!」

リーサとナナカが慌てて私を抑えた。


 建物の中に入ると私の籠は大広間中央に置かれた。

「籠を開けろ」

「はい」

籠が開けられ私を要求したエレクトリカルドラゴンが目の前に現れる。


「あ! お前は!!」

「ギャー!」

「ジーニアスドラゴン! どうしてお前がここに居るのだ!」

「ラスボス様こそどうしてここに?」

ジーニアスドラゴンは慌ててその場に土下座した。まあ奴の経歴を考えたら当然か。


「私を裏切り、突如として姿を消したお前がここで何しておる!」

「申し訳ありません」

「エレクトリカルドラゴンを語り村人を苦しめていたのか?」

「いえその」

「あのドラゴンはどうしたのだ?」

「立体映像を空に映しておりました」

「異世界らしからぬ物を使うな!」

「申し訳ございません」


「ところでジーニアスドラゴンよ。お前のしたことは許されぬものではない。覚悟はできているだろうな?」

「本当に申し訳ありませんでした。もう二度と悪さはいたしません」

「許されぬものではないと言っておるのだ」

ジーニアスドラゴンはゆっくりと顔を上げ、

「こうなったら最後の手段!」

と叫んだ。


 突如、警報がけたたましく鳴り部屋中に煙が充満した。

「何だこれは」

煙が薄れると部屋にはジーニアスドラゴンだけが姿を消していた。

「相変わらず卑怯な奴だ」

残されたモンスター達は全員深々と土下座をしている。

「仕方ない。こいつらを蹴散らして憂さ晴らしでもするか」


 モンスター達は更に深く土下座をして震えてる。その中の1匹が頭上高くリーサの写真集を掲げていた。

「ミーニャさん、部下に罪はないですよ」

リーサを使って許しを請うとは頭のいいモンスターもいるものだな。

「仕方ない。こいつらは助けてやるか」

こうして一瞬で村に平和を取り戻した私は村人に感謝されながら旅立つのだった。

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