第91話 ミーニャの初恋
私達は森を少し入ったところでピンチに立たされていました。山賊もどきに絡まれたのです。
「おい、持ってる物を全て置いていけ」
「ははは。言いたいのはそれだけか?」
ミーニャさんがいますからピンチでも何でもないんですけどね。
「悪いことは言わぬ。今すぐ立ち去れ」
ミーニャさんが余裕の台詞を言います。
「何だとー! 俺たちを嘗めてんのか? 女だって容赦しねえぞ!」
あ~あ、余計な言葉を言ってしまいました。『女だって』なんて言ったら終わりですよ。
「ほお、面白い。どうするつもりだ?」
「おい、ブス! それだけの口を叩くからには覚悟はできてるんだろうな?」
これははっきりと禁句ですね。言ってはならないワードを使ってしまいました。間違いなく消え去る運命だと思われます。
その時です。予想外な言葉が聞こえてきました。
「止めろ! 女性に手を出すとは許しがたき奴! この私が成敗してくれる」
3mほどの高さの木の上に誰かいます。目の周りが隠れる変な仮面を付けて、更に黒マント姿。いつの時代の正義の味方でしょうか。
「とおー!」
颯爽と飛び降りてきました。あ! こけましたね。はっきり言ってダサいです。
「おい、山賊共。この私が相手だ。覚悟しろ!」
山賊は3人です。果たして勝てるのでしょうか?
「しゃらくせーやっちまえ」
「おー!」
山賊が身構えます。
「ふん、3対1とは卑怯な」
やはり勝てないようですね?
「お前ごとき私一人で上等だ」
山賊のボスらしき人物が正義の味方を名乗る人物の前に立ちました。
「ほお、いい度胸だ。その勇気だけは褒めてやろう」
「言っとくが俺は山賊武術5段だぞ」
そんなのあるんですか?
「ははは、私は正義の味方道7段だ」
こっちの方があり得ないと思います。
結局は子どもの喧嘩のようなつかみ合いをして引き分けでした。
「覚えてろよ! 今度会ったら容赦しないからな」
山賊達が逃げていきます。こうなると判定勝ちでしょうか?
「お嬢さん方、おけがはありませんでしたか?」
「ありがとうございます。むしろあなたの方がおけがをしているようですが」
「ははは、これくらいかすり傷ですよ」
思いっきり血が出ています。
「私の名前は正義の味方仮面。名乗るほどの者ではないのですが」
誰も聞いてませんけど。しかもこれ以上ないほどダサいネーミングです。
「あ、ありがとう」
あれ? ミーニャさんどうしたんですか? 顔が赤いですよ。
「ピンチの時は私をお呼びください。直ちに駆けつけます」
「どうやって呼ぶのですか?」
思わず聞いてしまいました。
「大きな声で『正義の味方仮面~』と呼んでいただければ結構です。
それって半径100m以内にいた時に限りますよね?
「あの~、せめてお名前をお聞かせください」
「正義の味方仮面です」
「いえ、できれば本名を」
「大変申し訳ないのですが、正義の味方はどこの誰かを隠すものなのです」
「そんなあ」
「では、失礼します。たー!」
ミーニャさん、まさかの初恋ですか?
ミーニャさんが過ぎ去っていく正義の味方仮面を見つめながら指を組んでいます。恋をするにしてももう少しましな人にしてください。
「ミーニャさん、ああいう人がタイプなんですか?」
こくりと頷いています。何て初々しいのでしょう。思わず抱きしめたくなります。
「ミーニャ。あの男はきっとイケメンじゃないぞ」
「そんなことはない! 絶対イケメンだ!」
恋は盲目ですね。でも、もう会うこともないでしょうからそっとしておきましょう。
「何か不思議な気持ちだ」
ミーニャさんが俯き加減でぼそっと言いました。もしかして恋をしたのに気付いてませんね。
「私はどうしてしまったのだろう?」
う~ん。間違えないですね。ミーニャさんも年頃の女性だったと言うことでしょう。ミーニャさんのこんな姿を見るのもなかなか面白いですね。
彼との再会はわずか1時間後でした。まさかもう一度会うことになるとは・・・・。
「待て! 話し合えば分かる」
思いっきり負けてますね。これは惨めかもです。
「私の正義の味方に何をする!」
「あなたは先ほどの。ここは危険です。お下がりください」
この人もしかすると女性の前で格好を付けるタイプでしょうか?
「殺すぞてめー」
「ひええー!」
かなり格好悪いですね。
「許さぬ。えい!」
ボカン! 柄の悪い人達は全員すっ飛んでいきました。相変わらずミーニャさんの攻撃は凄いです。
「た、助けて~!」
正義の味方仮面が這いながら逃げていきます。ミーニャさん、自ら墓穴を掘ってしまいましたか。
「まあ、他にもいい男はいるよ」
「そうですよ。世の中広いんですから」
私とナナカさんが一生懸命ミーニャさんを励まします。
「お前たち何を言っているのだ?」
「え?」
「今回のことで改めて確認するとこができたぞ。私の好きなのはリーサだ!」
ええーーー! 遂に公言してしまいましたよ! 私にはそんな趣味はないですからね! この様子をナナカさんはニヤニヤ笑って見ているのでした。




