第9話 グレートスペシャルウルトラドラゴン
この娘を鍛えるとは言ったもののどこから始めるかが問題だな。まずどの程度の実力か把握する必要がある。取り敢えず能力を確かめることにするか。問題はどうやって確かめるかだが・・・・。やはり手頃なモンスターと戦わせてみるのが一番か?
「リーサ、私はお前の実力を知りたいから適当なモンスターと戦ってもらうがいいな?」
「適当なモヌターですか? スライムとか?」
「おお丁度あそこにグレートスペシャルウルトラドラゴンが見える。あいつを倒してみろ」
「ひえええええ! どこが適当なモンスターなんですか!? そんなの無理に決まってます!」
「名前の割には弱いドラゴンだぞ」
「そもそも私はドラゴンと戦えるような身分じゃありません! レベル10の魔法使いですよ」
「まあ、いいから。何事も挑戦だ。がんばれ」
「ええー! そんなこと言われましても無理なものは無理です・・・・」
私が口笛を吹くとグレートスペシャルウルトラドラゴンが私たちに気が付いらしくこちらを見た。
「ちょっと! 嘘ですよね? 嘘ですよね?」
やがてグレートスペシャルウルトラドラゴンはまっすぐにこちらに向かってくる。
「ひえええええ! 助けてー!」
「逃げるでない。戦え」
「この状況では逃げるに決まっています! 大体あのドラゴン10m以上はあるじゃないですか。戦う前に踏み潰されて終わりです」
「人間、死に物狂いになれば何とかなるものだ」
「なりません! 自ずと限度があります!」
「大丈夫だ」
「何を根拠におっしゃっているのですか? 私はレベル10ですよ。スライムプラスを倒すのがやっとなんですよ! この前も普通のスライムに危うく倒されそうになったんですから!」
「いいからやれと言ったらやれ!」
私はわざと機嫌の悪い声で言ったみた。それにしてもレベル10ならスライムに倒されるわけがなかろう。
逃げられないと悟ったリーサは居直ったのかドラゴンに向かって両手を上げた。
「ええい! こうなったらやけくそです。私の秘技をお見舞いします。食らえライスシャワー!」
「ドラゴンにお米を降らしてどうするんだ?」
「だったらこれならどうでしょうか。ドラゴンを吹き飛ばして見せます。風神の怒り!」
心地よい風がグレートスペシャルウルトラドラゴンの頬を撫でる。
「名前の割にショボい魔法だな」
「わかりました。こうなったら私の究極の最終奥義をお見せするしかないようです。ハートホスピタル!」
「相手のHPを回復してどうするんだ」
全く才能が感じられん。これがスライムにてこずる原因か。戦術がひどすぎる。それにしても、これほど弱い人間が存在するものなのか? 本当に世の中とは広いものだ。この娘を強くするのはかなり手こずるぞ。
私がそんなことを考えているとグレートスペシャルウルトラドラゴンが大きく前足を上げ、リーサに振り下ろそうとした。
「おい!」
私が一声かけた瞬間、グレートスペシャルウルトラドラゴンと私の目が合った。
「はひ?」
「言っておくがこの娘は私の親友だ。もし傷つけたらわかっておるな?」
グレートスペシャルウルトラドラゴンは『え? 嘘? 何でラスボス様が?』と言った表情で私を凝視している。
「もう一度言おうか? この娘は私の親友だ。もし少しでも傷つけたらわかっておるな?」
グレートスペシャルウルトラドラゴンは振り上げた前足でリーサの頭にちょこんと触れると突然仰向けに倒れもがき苦しみ始めた。
「キャー! あれ?」
「よし、とどめを刺すんだ! リーサ」
「は、はい。悪しきドラゴンにとどめを! 轟きの強弓!」
空からキューピッドが放ちそうな小さな可愛らしい矢がグレートスペシャルウルトラドラゴン目掛けて飛んだ。その可愛らしい矢は強靱なドラゴンの背中に刺さることもなく失速して地面へと落ちた。
「え?」
グレートスペシャルウルトラドラゴンが『あの? これ?』と言った顔で私と落ちた矢を交互に見ている。そして暫く考えた末グレートスペシャルウルトラドラゴンは突然、
「うわあああああ!」
と言う悲鳴を上げて逃げ去っていった。
「下手くそが・・・・」
私は作戦失敗を確信してリーサを見ると、
「私、勝ったのですね。あの強そうなモンスターに勝ったのですね」
とはしゃいでいるではないか。もしかしてこの娘、単純なのか? まあいい、このまま続けよう。
「そうだ。お前は勝ったのだ。凄かったぞ」
「でも私の矢って当たりましたっけ?」
鋭いところを突いてきた。
「細かいことは気にするな。勝ちは勝ちだ」
「そうでしょうか?」
「これで少しは自信が付いたか?」
「はい! 付きました! 私でもドラゴンに勝てるのですね」
リーサは飛び上がるようにぴょんぴょんと跳ねた。やはり単純な奴だった。
まあこれだけ喜んでいるならいいとするか? 強くするにはまだまだ手こずりそうだが。
「でも・・・・」
「今度は何だ?」
「経験値が上がらないのはなぜでしょうか?」
「だから細かいことは気にするな」
「あれだけのモンスターを倒したのですから決して細かい話ではないと思いますが」
「いいからいいから」
「もし手違いでしたら政務局に連絡して・・・・」
「気にするなと言ってるだろうが!」
太い声で言って見た。
「はい、気にしません」
何とか強引に言いくるめた私は意味なく高笑いをして誤魔化すのであった。




