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第89話 一生に一度の願い

 森の奥深くでとんでもない物を見つけた。

「まさかこんな所にあったとは」

森の木々に隠れるように存在する小さな建物。看板には『魔法の館』と書かれている。


 古くからの言い伝えによると魔法の館には全ての魔法が存在し、わずか数分で希望の魔法を手に入れることができるそうな。確かにこの建物の古さと貫禄からするとあり得る伝説かも知れないな。


 覚えられるのは生涯でたった1つ。勿論私の希望は究極のマインドコントロール。これさえ覚えればリーサの心は思いのままだ。

「ミーニャさん。この建物は何ですか?」

「ああ、これは・・・・」

いや待てよ。この建物で魔法を覚えられると知ったら、私の取得するマインドコントロールをブロックする魔法を覚えられてしまう可能性がある。何とか対策を練らねば。


「私はここに用事がある。暫くここで待っていてくれるか?」

「どうして外で待っていなければいけないのでしょうか?」

正論だ。

「中に入っても退屈なだけだぞ」

「何があるのですか?」

どう言ったものか。リーサが入りたがらないものって。そうだ。

「中は昆虫博物館になっている。生きたゴキブリがうじゃうじゃ這っているのだ」

「キャー。絶対に入りません」

うまくいったな。


「あれ? ここって魔法の館じゃん」

「何ですかそれ?」

「ここはどんな魔法でも覚えられる所よ」

「え! 凄くないですか? それでゴキブリは?」

「そんなの居るわけないわよ」

くそ! まさかナナカが魔法の館を知っていたとは。


「では行ってくる。リーサは待っていてくれ」

「勿論私も行きます!」

まあそうなるわな。仕方あるまい。他の方法で誤魔化すとしよう。


 中に入るといかにも魔法使いといった感じの老婆がいた。

「まあ久しぶりの来客だね。いらっしゃい」

「ここは伝説の魔法の館なのか」

「そうだよ。どんな魔法でも一瞬で取得できる。何が望みだい?」

「それなら・・・・」

待てよ。リーサが先に魔法を取得したら私のマインドコントロールをブロックする魔法を取得することもなかろう。何しろ生涯1つだけだからな。


「リーサ、先に選んでいいぞ」

「本当ですか! 何にしようかな?」

いい感じだ。

「好きなスイーツを出せる魔法とか? 食べても痩せる魔法とか」

弱いんだから普通は強力な攻撃系の魔法を希望するだろう。ま、いいけど。


「ところでミーニャさん。どうして私から何ですか?」

鋭いところを突いてきたな。

「深い意味はない。私も何にするか迷っているからだ」

「そうですか」


「ゆっくり考えて遅れ。一生に一回のチャンスだからね」

老婆は丸テーブルに水晶を置いて何やら準備をしている。これだけ見ても伝説が本当であることが窺える。何しろ今までのインチキっぽいのと違って8000年も前から伝わる伝説なのだからな。


「ミーニャさんは何をお願いするつもりですか?」

ギクリ!

「全く決めてないぞ」

「どんな系統にするつもりですか? 美容系とか? ダイエット系とか?」

「美容系だと?」

「はい、一瞬で理想のメイクができるとか、一瞬で好きな髪型にできるとか」

こいつに戦うという概念はないのか?


「そうだななら美容系で考えてみるかな?」

「だったらミーニャさんからどうぞ」

「私は後でいい」

「どうしてですか? 怪しいですね?」

まずい。感づかれたか?


「あっ! わかりました。本当にどんな魔法でも取得できるのか私の様子を見ようとしてますね」

ほっ。

「その通りだ。よくわかったな」

「だったら私はいつでもフォアグラが出せる魔法を取得します」

本当にそんなのでいいのか? 一生に一回のチャンスだぞ? でもこれで予定通りに行きそうだ。


 老婆がリーサに呪文を唱えている。

「ミーニャさん、凄いです。本当にフォアグラが出てきました。ただ調理されていませんが」

そうか。詳しく説明する必要があるみたいだな。気を付けよう。


「ナナカはどうするのだ?」

「私は一瞬で好きなメイクができあがる魔法にする」

なるほど。ナナカらしいな。


 これで私の邪魔をする者はいなくなったわけだ。

「お前さんはどうするね?」

「私の願いはマインドコントロールの魔法だ。お互い相思相愛になる魔法を取得したい」

「好きな人でもいるのかい? いいだろう。じゃあ、その椅子に座って」

老婆が呪文を唱える。これでリーサは私の物だ。相思相愛になれるのだ!


「ちょっとミーニャさん。まさかその魔法、私に掛けないですよね?」

「今頃気付いたか? ふふふふ」

私はリーサに向かって魔法を唱えた!


 あれ? 何の変化もない?

「リーサ、どうだ私のことが好きになったか?」

「別に」

どうなっているのだ?


「その魔法は同性には効かぬぞ」

「何だと?」

「7000年も前から伝わる魔法だ。その頃には同性愛という観念はなかったからな。フォッフォッフォッ」

老婆が笑う中、私は膝を付いて落ち込むのであった

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