第86話 不思議なナナカ
「ダメだ! 昨夜は殆ど寝られなかったぞ!」
「ウトウトすると猫ちゃんがスリスリしてましたからね」
猫の村を出て少し歩いたところですが、ミーニャさんが座り込んでしまいました。
「あの猫、ミーニャさんが猫嫌いだと言うことを知っていたと思います」
「そんなバカなことあるか!」
あれは絶対わざとやっていましたね。だってすり寄るタイミングがドンピシャでしたから。
「もう歩けんぞ」
困りました。確か10時間歩かなければ隣の村に行けないんですよね? このままではまた野宿です。これだけは避けなくてはいけません。
「ミーニャさん、歩かなければ猫がたくさん居るこの地域で野宿か、また猫の村に戻って宿泊になりますよ」
「おー、そうであった! それは絶対に嫌だ!」
これはいけそうですね。更に問い詰めることにしましょう。
「どうします? また猫と寝ますか?」
「猫はもう嫌だ。だが歩くのも嫌だ」
我が儘ですね。だったら、
「ニャー」
「ギャー!」
得意の猫マネで追い打ちを掛けます。
「どうします?」
「困った!」
「ニャー」
「ギャー! わかった。瞬間移動を使おう!」
嘘でしょ? まさに棚からぼた餅です。運が向いてきたのかもしれません。
「じゃあ、もう歩かなくてもいいんですね?」
私は嬉しさのあまり声が高くなります。
「何を言っている。瞬間移動は次の村までだ」
そうですよね。そんなにうまい話がそうそうあるわけないですね。
私達は一瞬のうちに次の村に着きました。う~んやっぱり楽ですね。
「この村には猫は居ないだろうな?」
「ニャー」
「猫か! どこだ。どこに居るのだ?」
ミーニャさんが慌てる姿とても面白いです。でも私が猫マネをしていたとバレたら消されそうなのでもう止めておきます。
時間はまだ昼過ぎですので早いのですが宿に泊まることになりました。ミーニャさんが早く休みたいと言い出したからです。ミーニャさんは昨夜寝てませんので当然の主張ですね。
「おい主人」
「何でしょうか?」
「この宿には猫はおらぬだろうな?」
「もしかして猫の村からお越しになったのですか? 残念ながらこの宿には猫はおりません」
「そうか」
ミーニャさんの顔が綻びました。
「どうしてもと仰るのでしたら借りてきますが」
「そんなこと言ってない!」
私達が部屋に入るとミーニャさんが部屋の隅々までチェックしています。そんなに猫が嫌いなのでしょうか?
「よし、大丈夫だ」
ミーニャさんが大の字になってベッドに寝転びました。これはかなり疲れてますね。
私も荷物を置いて椅子に座ろうとした時です。
「ニャー」
え? 猫の鳴き声?
「ニャー」
「ギャー!!」
ミーニャさんが飛び起きました。私は猫マネをしていませんよ。どこで鳴いているのでしょうか?
ドタンバタン。私の鞄の中でクロシッポが大騒ぎしています。
「おい、猫はどこだ! 探せ!」
ミーニャさんはパニック状態で部屋中を駆け巡ってます。するとナナカさんがとんでもない言葉を発しました。
「ごめ~ん。1匹持ってきちゃった」
ナナカさんが自分の鞄から猫を持ち出しました。
「こら! 何てことするんだ!」
「だって可愛かったんだもん」
「勝手に持ってきたら誘拐だぞ。これは立派な犯罪だ!」
「どうせ異世界には警察なんてないじゃん」
「だとしても犯罪は犯罪だ。返してこい」
「え~、こんなに可愛いのに。ほれ」
「こっちに猫を投げるな!」
ミーニャさんが猫から逃げ回ります。それを猫が追いかけています。この猫もミーニャさんが猫嫌いだと知っていますね。とても嬉しそうです。
「ナナカ、猫を返してこい!」
「どうやって?」
「お前を瞬間移動させるから、猫を返したらこの笛を吹くのだ。そうしたらまたこちらに戻してやる」
私が革命軍に居た時に持たされた笛ですね。確か超合金でできた。
ナナカさんが強制的に転送されました。そして15分後帰って来ました。猫を置いてくるだけで15分も必要でしょうか?
「ちゃんと返したな?」
「返したことは返したけど」
「何が言いたいのだ?」
「あまりに可愛いから違う猫3匹持って来ちゃった」
「ギャーーーー!!! バタン」
ミーニャさん倒れてしまいましたね。
結局この後、私が猫を返しに行きました。ナナカさんて思いっきりがいいというか、深く考えてないというか、本当に不思議な人です。で、今回の事件で一番の被害者は私です。私の鞄の中がクロシッポによってぐちゃぐちゃにされていました。結局、私が被害に遭う運命のようです。




