第80話 思い出の町
私達は懐かしさが溢れる町に到着した。もしかしてこの町はリーサと始めて出会った町ではないか? ということは、もう魔王城の近くまで来てしまったのか? これでリーサとの楽しい旅も終わりが近いな。これは悲しすぎるぞ。何とかならぬものか。 幸いリーサはこの町のことを覚えていないようだ。まだまだ魔王城が遠いことにしてだな。少しだけ遠回りをしよう。たぶんバレることはなかろう。
「あれ? この町どこかで見たような?」
やばいぞ。リーサに気付かれそうだ。
「気のせいだ。よく似た町の作りってあるからな。ははは」
「ミーニャさん。話し方が不自然ですね。何か隠してませんか?」
いかんいかん。つい誤魔化そうとして不自然になってしまった。
よしここは話題を変えるに限る。
「喉が渇いたな。酒場にでも行こう」
「大賛成!」
「ダメです。またお酒を飲んで泥酔されたら困ります!」
「大丈夫、今日はそんなことはしない」
不自然さを誤魔化すつもりで適当に酒場と言ってしまったが、こんな盲点があったとは。
「いらっしゃいませ」
取り敢えず席についてだな。何を頼むかだが。酒場に入ってしまうと酒が飲みたくなるから不思議だ。でも酔ってしまうと話がややこしくなりそうだな。リーサが私とナナカを牽制するように凝視しているし。
「リンゴジュースを貰おう」
「え~! ミーニャ飲まないの?」
ナナカが残念そうに私を見ている。今日は我慢だ。
この町を出たら少し南下しよう。魔王城は北にあるから下手に北へ向かうと魔王城の近くであることがバレてしまう恐れがある。南下して山を迂回するコースを選択すると3日は魔王城に着くのを遅らせることができるだろう。完璧な作戦だ。やはり私はできる女だな。この功績を誰にも言えないのが残念だ。
「おお、これはまた美人揃いのパーティーがいるじゃねえか?」
こいつはリーサと出会った時に絡んできた酔っ払いの男ではないか! まさかリーサはこの男の顔を覚えてないだろうな?
「この中でも一番のべっぴんさんはお前か。一緒に飲もうぜ」
酔っ払いの男がリーサの腕を引っ張る。また選ばれたのはリーサか。許せんな。いっそのことリーサが思い出す前に消し去るか。
「離してください」
「いいだろ? 酒を飲むだけだぜ」
「嫌です・・・・あれ? あなたは以前私に絡んできたレベル45の剣士ですよね?」
思い出してしまったか。
「お前は! モンスター使いの女か!」
「やはりそうです。私がミーニャさんに始めて出会った町に居た人です」
「ふん、レベル45は昔の話だ。今はもうレベル46になったんだ」
「1しか上がってないだろうが!」
思わずツッコんでしまった。
「ミーニャさんも覚えていますよね? するとこの町はミーニャさんと私が始めて会った町ですか? ああ、思い出しました。確かにこの町です! と言うことはもう魔王城は近いのですね!」
やばい、完全に思い出してしまった。
「おい、俺を無視するとはいい度胸だ!」
「やかましいわ!」
私が一喝するとその迫力に男は腰を抜かして這いながら逃げていった。会ってすぐこれをすべきだったか。
「この町からですと魔王城は2日かかりませんよね?」
「普通に行くとそうなる」
「普通に行くってどういうことですか?」
「ここから北に直進すれば一番早いのだが。あいにくその道は工事中で通行止めだ」
「異世界で道路工事をしているのですか?」
「勿論している」
「ふうん。そうですか。知りませんでした」
その時、店の店員が注文した飲み物を持ってきた。
「ご注文のフレッシュオレンジジュースとマナビアーと」
「ナナカ! しっかりお酒を頼んでおるではないか!」
「いいじゃない。ちょっとだけ」
「それにアルコール入りアップルジュースになります」
「ミーニャだってお酒じゃん!」
「2人ともいい加減にしてください!」
リーサが怒っている。分かる気もするが。リーサに介抱されるのも旅の良い思い出だ。いいだろう。
「店員さん。少しお伺いしますが、ここから北に行く道が工事中というのは本当ですか?」
「嫌だお客さん。異世界に道路工事なんてあるわけないじゃないですか?」
「ミーニャさん!!!!!」
これもバレてしまった。これは飲むしかあるまい。こうして私達は酔い潰れリーサの声を遠くに聞きながら眠りに就くのだった。




