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第78話 裏ボスの仕事

 ハーハーハー。

「どうしたリーサ。まだまだ特訓は始まったばかりだぞ!」

「ミーニャさん、もう夕方の5時です」

ミーニャさんは異世界らしからぬ腕時計を見ました。

「いつの間に時間が過ぎたのだ?」

「ちょっと待ってください! これでは昨日と全く同じではありませんか! どこが『これからは特訓は簡単にしてやろう』なんですか!?」


「うむ。確かに。リーサを立派な裏ボスにしなくてはと言う熱い思いがこうさせてしまうのだ」

いかにも素晴らしいことを言ってるように聞こえますが、私にとってははた迷惑な思いですよね。せっかく昨日勝ち取った権利ですから守らなければなりません。


「ミーニャさん、そんなに裏ボスというのは大切なものですか?」

ここは軽い質問攻めで様子を見ます。

「当たり前だ。ラスボスである私が負けてしまったら裏ボスがこの異世界を牛耳なければならないのだ。裏ボスは最後の砦。絶対の負けてはいけない存在になる」

もっともらしい意見ですが、私はこの世界を牛耳るつもりはありません。


「私にはとても荷が重いので辞退したいのですが」

ここでそっと本音を言ってみます。

「リーサ、一度決心したことは最後までやり遂げるべきだぞ」

「ミーニャさんが決めたんですよね! 私やるなんて一言も言ってないですよね!」

「文句があるのか?」

「とんでもない」

急に怖い声を出すのは卑怯です。


「そうだ。ナナカさんなら・・・・」

「嫌よ」

「だそうだ。リーサ諦めろ」

「どうしてナナカさんは一言で否定することができるんですか!」

何とかしないとミーニャさんの熱い情熱で私は殺されてしまいます。


「だったら裏ボスの役割を軽減するのはどうでしょう?」

「どういうことだ?」

「例えば裏ボスを複数人にして勝ち上がってきた勇者を一斉攻撃で倒すとか」

「そんなことで私を倒した勇者に勝てるのか?」

「大丈夫です。複数人を50人位にすれば倒せます」

「とことん卑怯な気もするが」

ミーニャさんが少し考えています。これは行けるかも? やがて思い出したようにミーニャさんが言いました。

「異世界の決まりとしてパーティーの人数は4人までとなっておる」

「それは勇者側の決まりです。モンスター側の人数制限はないはずです」

人間て物凄く切羽詰まると頭が高回転するものですね?


「やはりダメだ!」

「どうしてですか?」

「裏ボスの人数が多いと信用できなくなる」

う! 鋭い意見ですよね?

「そんなこともないですよ?」

「50人もいると変な考えの奴が必ず混じるものだ」


 う~ん、こうなったら。

「わかりました。私が裏ボスを統率しましょう」

「裏ボスのリーダーをするというのか?」

「はい」

これで決まりですね。長い戦いでした。

「わかった。だがリーダーともなるとそれなりに強くないと行けないな」

私は思わず座り込みます。何でこうなるんですか?


「よしリーサ。あのスペシャルゴールデンドラゴンを倒したら今日の修行は終わりにしよう」

「だから、それでは昨日と同じじゃないですか!」

「やはり裏ボスならあれくらいは倒せないと」

「いきなりレベルを上げるのは無理ですよね? 今の私にスペシャルゴールデンドラゴンが倒せると思っているのですか?」

「まあ無理かな?」

「だったら無意味な特訓だと思いませんか?」

「思います」

「わかればいいんです。今後気を付けるように」


「ん? さっきから聞いておればえらくでかい態度だなリーサ」

「冗談です。ミーニャ様」

「私はこういう冗談は大嫌いだ」

「やはり異世界を牛耳るラスボスともなると海のように広い心で」

「リーサよ。なぜそんなに死に急ぐ」

「ひえええ! ごめんなさ~い」

毎度同じ展開ですね。今回は行けると思ったんですが気付かれてしまいました。


「ところで、特訓は軽減してくれるんですよね?」

「してやろう」

「どれくらい軽減していただけるのでしょうか?」

特訓なしにならないかと思いましたが無理なようですので、軽減の方向で話を進めていきたいと思います。

「そうだな? 腕立て500回のところを499回にするレベルかな?」

「全く軽減になってません!!!」


「いいかリーサ良く聞け」

今度は何を言われるのでしょうか?

「私はそれはそれは血の滲むような特訓をしてきたのだ。だからこそ誰にも負けないラスボスとして君臨することができた」

「ミーニャさんは絶対に誰にも負けないのですか?」

「当たり前だ! 私が負けるとでも思ったのか!」

「だったら裏ボスが弱くても問題ないのでは?」

「うっ!」

「だって戦う機会なんて永久に来ないですものね」

こうして私の特訓は終わりを告げるのでした。

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