第73話 酒場にて
見慣れた雰囲気の町に着きました。私がかつていた町並みに似ていると言うことは随分魔王城に近付いてきたと言うことでしょうか?
「あそこの酒場に寄っていこう」
ミーニャさんがなぜか嬉しそうに言いました。まさかお酒を飲みたいとか言い出さないでしょうね?
私たちが酒場に入って席に着くと私より少しだけ可愛い店員さんが注文を聞きに来ました。
「チーハイのレモンと」
「私は生ビール」
「ナナカさんお酒はダメですよ」
真面目な私は速攻で止めます。
「私二十歳超えてるよ」
「え? そうでしたっけ?」
「そちらのお客さんは何になさいますか?」
「あ、私はフレッシュドリアンジュースで」
懐かしいジョークですね。
「ご注文を繰り返します。チーハイのレモンが一つ、生ビールが一つ、フレッシュドリアンジュースが一つ、以上でよろしいでしょうか?」
「ちょっと待ってください! フレッシュドリアンジュースってあるんですか?」
「あります。ただ注文されたのはお客様が初めてですけど」
まさかフレッシュドリアンジュースが存在していたとは!
「ごめんなさい。言い間違えました。フレッシュオレンジジュースをください」
「わかりました。チーハイのレモンが一つ、生ビールが一つ、フレッシュドリアンジュースが一つ、フレッシュオレンジジュースが一つでよろしかったですか?」
「フレッシュドリアンジュースはいりません」
下手なジョークは言わない方がいいですね。ちょっと反省です。
「ところでミーニャさんが頼んだチーハイって何ですか?」
「レモンジュースだ」
「そうですか。日本のチューハイと言うお酒に名前が似てたものですから心配しました。ミーニャさんは未成年ですよね?」
「リーサは真面目だな」
「そうでしょうか?」
「真面目すぎだよ」
ナナカさんまで。
私たちが盛り上がっていると先ほどの店員さんが注文した飲み物を持ってきました。私たちの前に丁寧に置いていきます。
あれ? 私のフレッシュオレンジジュースの色が変です。それに変な匂いもします。まさかフレッシュドリアンジュースを間違えて持ってきたんじゃないですよね?
「これは?」
「はい、ご注文のフレッシュ納豆ジュースです」
フレッシュドリアンジュースですらありませんでした。
「私が注文したのはフレッシュオレンジジュースですけど」
「申し訳ありません。すぐに持って参りますので」
店員さんが慌てて戻っていきました。フレッシュ納豆ジュースは置かれたままです。できれば持って行って貰いたかったです。この匂いは我慢できません。何を隠そう私は納豆が食べられないのです。
「きゃははは。リーサ飲まないの? 付き合い悪いぞ」
「飲めないんです!」
ナナカさんは早くも酔っ払っているのでしょうか? かなりハイテンションになってます。
「お待たせしました。フレッシュオレンジジュースになります」
「ありがとうございます」
店員さんはオレンジジュースを置くと帰っていきます。
「このフレッシュ納豆ジュースを引き上げてください」
「それはお詫びの印です。どうぞお飲みください」
「え? いりませんけど」
「そんな遠慮なさらないでください。ただし飲み残したら罰金になりますけど」
「食い放題の焼き肉屋ですか!」
私はハイテンションになっていいるナナカさんとミーニャさんを見ます。あれ? ナナカさんはわかりますがミーニャさんもハイテンションになってます?
「ミーニャさんの飲んでるのってレモンジュースですよね?」
「そうだ。お前も飲むか?」
「遠慮しておきます。嫌な予感がしますので」
「何だ付き合いが悪いな。これだからリーサは陰キャになるんだぞ」
何か説教されてしまいました。
「いいから一口飲め」
えらくしつこいですね?
「私のジュースが飲めないというのか?」
これはすでに酔っ払いの理論ですよね? 仕方ありません。一口だけいただくことにします。
ゴクリ。
「お酒じゃないですか!」
「おー! いい飲みっぷりだ。わははは」
「いいぞー! リーサ!」
ナナカさんまで。てかこの2人お酒弱くないですか? まだ1杯目ですよね?
そして30分後。
「ミーニャさん。ナナカさん。起きてください!」
「もう飲めないぞ」
「私も」
「2人とも2杯飲んだだけですよね? 何でこんなに酔っ払ってるんですか?」
そう言えば以前『飲みに行ったら先に酔っ払った者が勝ち』と言ってた人がいましたね。今その意味がはっきりわかりました。こうして私は他のお客さんの注目を浴びながら酔っ払いの介抱をするのでした。




