第62話 かなりのピンチです
何とか雪おんなんのリリサは帰って行きました。これで一安心です。後はこの木から下りてミーニャさん達の所に戻れば全て解決です。人間諦めなければ何とかなるものですね。
では、この木から下りて・・・・・・・・随分高いですね。夢中で登りましたから気づきませんでしたけど、地面まで5メートル以上はあると思います。私はどうやって登ったのでしょうか? この高さだと飛び降りるわけにも行きませんね。私は太い木の幹を見ます。これにしがみついて降りろと言うことですか。どう考えてもこの太さだと無理な気がします。抱きかかえられる太さじゃないですから。本当にどうやって登ったのでしょうか。
少しずつ時間だけが過ぎていきます。困ってしまいました。『誰か助けてー』と叫んでみたところでやって来るのはおそらくモンスターくらいのものです。飛び降りたら・・・・怖くて出来ません。これでは初めて木に登って降りられなくなった子猫と同じです。
そうだ! テレパシ-でミーニャさんに訴えかけてみましょう。革命軍のアジトでは出来ましたものね。
『ミーニャさん、助けて下さい』
シ-ン・・・・。あれ? おかしいですね。もう一度。
『ミーニャさん、助けて下さい』
シ-ン・・・・。ダメですね。あの時は特別な魔法でもかけられていたみたいです。
こうなったら大声で叫んでみるしかないです。
「助けて下さーい!」
シーン・・・・。
「お願いですから助けて下さーい!」
シーン・・・・。どうしましょ。
それにしても寒いです。リリサの洞窟よりは冷たくありませんが、長くいるとここも十分寒いです。温まる方法はないでしょうか。そうです。私の魔法で何とかなるかも知れません。
「オイルシャワー」
そして、
「ファイヤーボール」
これでミニ焚火のできあがりです。地面にまかれたオイルが丁度よく燃えて暖かくなってきました。大成功です。
もう十分温まりましたから火を消すことにしましょう。・・・・どうやって消しましょうか? 水ですよね。では、
「ウォーターシャワー」
あれ? 火が消えませんね。では、もう一度。
「オイルシャワー」
間違えました。大変です。予想以上に燃えています。
「ウォーターシャワー」
ちょろ! ええーーー! 魔力が底をついたようです。火の勢いがどんどん増してきました。火が私のいる木にも迫ってきています。
「誰か助けてー!」
かなり必死な声で叫びました。その時です。
カチーン!
『えい!』という声と共に全ての火が凍り付きました。
「大丈夫?」
「ありがとうございます」
助けてくれた命の恩人に心からお礼を言います・・・・って、あれ? リリサ?
「何だ。こんな所にいたんだ。もう、いきなりいなくなっちゃうからビックリしたよ」
「ええっと」
「でもどうしてこんな寒い地面が燃えたんだろう。不思議だわ。誰かオイルでもまいたのかしら?」
「ははは・・・・」
まさかの再会です。これでは逃げた意味がないと思います。まあ、焼死体で見つけて貰うよりは生きた姿で見つけて貰った方が遙かにいいのですが。
「体が温まっちゃったでしょ。私の家に行こう。体を冷やしてあげるから」
家って例の洞窟ですよね? どの道私は死ぬ運命のようです。
こうなったら全速で走って逃げるしかありません。では、ダッシュです!
ツルッコテン!
「地面は完全に凍ってるから走っちゃダメだよ。そんなに急がなくも大丈夫だから。はい、寒くなるポンチョレベル100」
ひえええーーー!
私たちが氷の洞窟に着くと・・・・。
「キャー! 泥棒だわ!」
箪笥の引き出しは全て開けられ、壺が割られているではありませんか。こんなことをする人物は、勇者かナナカさんしかいませんよね。
「もうこれ以上奥に部屋はないわね」
ナナカさんの声です。やっぱり。
「ちょっとあなた達、人の家で何してるの?」
「やば!」
「泥棒ね?」
「いえ、私たちは魔王軍から派遣された警察です」
「異世界に警察なんてあったっけ?」
「できたんです」
ナナカさん、話が強引すぎます。
「そうなんだ」
信じるんですか!
「それでこの家に爆弾が仕掛けられたという情報が入りまして捜査しておりました」
「エー!」
「誰か不審者がこの家に来ませんでしたか?」
「誰も来てませんけど。来たと言えばこの・・・・」
リリサが私の顔を見ます。
「あなたの名前聞いてなかったわ」
会ってからどれだけ経つんですか!
「こいつは怪しい。こいつが犯人ですよ」
一緒にいるところ見られてますよね。
「嘘! 私信じてたのにー!」
これも信じるんですか。どこまで純粋無垢なのでしょう。
「こいつは我々が連行して取り調べをします。よろしいですな」
「はい、お願いします」
こうして私は助かったのでした。でも、こんな助かり方ってあるんですか? ナナカさんの常識知らずのはったりと人間ではあり得ない純粋な心を持ったモンスターだから成り立っただけですよね。もしかしたら私は予想以上に幸運の持ち主なのかも知れません。今までの生い立ちからは考えにくいですが。




