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第59話 何を言い出すんですか!?

 私たちは取り敢えず魔王城に入りました。これでやっと一休みができますね。

「ラスボス様、お帰りなさいませ」

相変わらず怖そうなモンスターが出迎えてくれます。

「今晩ゆっくりしたら明日また出かけることにする」

「ええー!」

「リーサどうかしたか?」

「いえ別に・・・・」


「今度はどちらへ?」

怖いモンスターが低い声で聞きます。

「極東地域に決まっておる」

「今、そこから帰られたのではなかったのですか?」

「まだ・・・・行ってない」

ミーニャさんの声が小さくなりました。さすがにまだ行ってないというのが恥ずかしかったのだと思います。


「あれだけに日にちを掛けてまだ行ってない・・・・」

「貴様! そんなに死にたいか!」

「申し訳ありません」

これが一言多いという見本でしょうか。思わず吹き出しそうになってしまいます。周りを見回してみると口元を押さえているモンスターがたくさんいました。気持ちはよくわかります。これって笑いたくても笑えない場面ですよね。

「あははは、やっぱ言われたわね」

例外がいました。当然この声の主はナナカさんです。


 魔王軍の幹部らしきモンスターが魔王の間に集まってきました。

「ラスボス様。パープルキングの悪行は益々エスカレートしているようです。東方地域の秩序のためにも、一刻も早く対策を練った方がよろしいかと思われます」

いい感じです。この情報を聞いたら『瞬間移動で行こう』となりますよね普通。


「わかった。そういう事情なら」

うんうん。

「西回りで行こう」

「反対方向に行ってどうするんですか!」

思わず大きな声でツッコんでしまいました。ミーニャさんはどうしても歩きたいみたいですね。


 そして次の朝。気持ちのいい朝です。やはり豪勢なベッドの寝心地が違います。


 私たちは城の入り口でみんなに見送られながら城を出発しました。また長い旅の始まりです。もう少し城にいて体を休めたかったのですが。私が俯いて歩いていると、ミーニャさんが突然意外なことを口にしました。

「よし、瞬間移動で行くことにしよう」

「はい? 今なんて言いました?」

あまりにも信じられない言葉に思わず聞き直す私です。もし聞き違いでなかったら、もう歩かなくてもいいことになりますよね。


「どうしたの? 急にそんなこと言い出して」

ナナカさんが私の言いたいことを代弁してくれました。本当にどういう心境の変化なのでしょうか?


「状況的に急を要する気がするからだ」

そんなのずっと前から言ってましたけど。でも私は言いません。

「そんなの前から言ってたじゃん」

またナナカさんが代弁してくれました。本当に便利な人です。


「うるさい! まあ少しくらいなら時間を割いてもいいぞ。戦うことにはならぬと思うが、もしものことを考えてリーサのレベルを上げてから行ってもいいが」

「それはもういいです!」

私は慌てて否定します。また強いドラゴンと戦わせられたら嫌ですから。


 私たちは魔王城が見えなくなるところまで移動することになりました。恐らく歩いて行くことを強調した手前、瞬間移動をするところを見られたくないのだと思います。でも私はそんなこと口にしませんよ。

「どうせ今更瞬間移動で行くとは言えないからでしょ」

ナナカさんは本当便利な存在です。

「バカなことを言うな。私はお前たちの健康を心配して言っておるのだ」

「ふうん。だったら心配しなくていいから歩いて行きましょうよ。どうせミーニャが楽したくなっただけでしょ?」

何と言うことを言い出すんですか!!!


「そこまで言うのなら歩いて行こうではないか」

「いいの? そんなこと言っちゃって」

「いいに決まっておる」

何なんですか、このとんでもない展開は!


「ナナカさん! せっかくミーニャさんが気を遣ってくださったのに、そんなことを言ったら失礼じゃないですか!!」

もう必死ですね。

「リーサは歩きたくないからでしょ?」

「その通りです。歩きたくないんです! 逆にナナカさんは歩きたいんですか?」

「私は・・・・別に歩いても・・・・いいわよ」

「本当ですね!? 本当に本当ですね!!」

物凄い眼力で睨み付けます。

「どちらかというと・・・・楽したいような・・・・」

私の迫力勝ちですね。この言葉を引き出した後、私はミーニャさんを見ます。


「わかった。瞬間移動で行こう」

「やったー!」

これで歩かなくていいんですね? 完全勝利です。


「パープルドラゴンを罰した後、帰りは歩いて帰ってこようぞ」

「は?」

「リーサどうかしたか?」

「いえ別に」

何でこうなるんですか! 結局この長い道中を歩くということですね! 私たちの健康を考えてるのなら普通帰りも歩きませんよね? 私は期待を込めてナナカさんを見ます。

「・・・・・・・・・・」

『こういう時は言わんのんかーい!』

私は思わず頭を抱えるのでした。

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