第57話 ダメ元
ミーニャさんの噂が広まりすぎたため、今日も町や村には行けず野宿決定です。
「もう、こんな生活は嫌です。瞬間移動を使いましょう」
「う~ん。そうだなあ」
ミーニャさんが迷ってます。これはチャンスかも!
「キャンプ楽しいじゃん」
「そうだな!」
ナナカさん。また余計なことを!
「でも、食べるものと言えばナナカさんの作り出す料理ばかりじゃないですか。そろそろ飢え死にしそうです」
ナナカさんの作り出す料理はカロリーゼロですからね。
「じゃあ、そこら辺にいる野生モンスターでも捕らえて食べるか。ちょうどいいところにビッグドラゴンがいるぞ」
「あんな大きなドラゴンは肉が多すぎます。もっと手頃な小動物的なのにしましょう」
ミーニャさんの発想はいつも適当すぎます。
「なら、あそこに飛び兎が売るぞ」
「跳び兎じゃないのですか?」
「あいつは長い耳を高速回転させ空を飛ぶのだ」
異世界では私の知っている物理法則は通用しないようです。
で、捕まえてみました。
「じゃあ、早速こいつの息の根を止めて調理するか」
飛び兎が涙目で私を見つめてきます。
「やっぱりダメです! こんな可愛い兎を食べることはできません」
私は飛び兎を抱きしめ頬ずりしました。ペチペチ。長い耳でビンタをされてしまいました。痛いと言うよりは気持ちいいです。はて? 同じような経験を前にもしたような。
「キュピ」
クロシッポが何かを訴えています。
「リーサ、そんなことを言ってたら何も食えぬぞ」
「でもダメです!」
「仕方ないな。ダメ元でこの先にある村に行ってみるか。あいつら弱いくせに自警団とかを結成して逆らってくるからな。これ以上罪もない人間を殺すのは心苦しいのだが」
「とてもラスボスの言う言葉じゃないですね」
私たちが村に着くと少し空気が変わりました。
「おい、この3人。噂の人物じゃないか?」
「まさかラスボスなのか?」
徐々に村人の様子が変わっていくのがわかります。
やがて村人が遠巻きに集まってくると、その中の一人が一歩前に出て大きな声で話し出しました。
「ここはお前達の来るところじゃない。さっさと出て行け」
「何だと」
ミーニャさんが怖い顔で睨みます。
「この村は俺が守る。後悔したくなければ早急に立ち去るがいい」
この男の人はきっとこの村の英雄なのでしょう。とても凜々しいです。
「よほど実力と自信があるようだな?」
「勿論だ。聞いて驚くな。おれは戦士レベル25だぞ!」
英雄さん、それは弱すぎです。
「言いたいことはそれだけか? では攻撃させて貰うぞ」
ミーニャさんが右腕を挙げるととてつもないエネルギーが指先に溜まっていきます。
「ははー! 参りましたー」
英雄さん、格好悪すぎです。せめて1回くらい攻撃を受けてください。
「ふふふ、この村ごと消し去ってくれるわ!」
「わー!」
全村人が蜘蛛の子を散らすように逃げていきます。
シーン。あっという間に誰もいなくなってしまいました。
「腰のない奴らだな」
「あのエネルギーを見たらこうなるわよ」
ナナカさんがため息をつきながら言います。
「仕方ない。この村を去るとしよう」
「そうね」
「ちょっと、待ってくださいよ」
私は2人を止めます。
「この村って今は誰もいないんですよね?」
「それはそうだ」
「だったらベッドを借りて寝ることもできるってことですよね?」
私は両指を組んでキラキラと輝いた目でミーニャさんを見つめました。
「なんか犯罪っぽいのだが・・・・」
「誰もいないんだからいいです!」
本当はダメだと思います。でもでも野宿は嫌なんです!
私たちは宿屋と思われる建物に入りました。
「わー! ふかふかのベッド」
ナナカさんはベッドに飛び乗ります。
「気持ちいいです」
私もベッドに寝転んで幸せをかみしめます。こんなにベッドのありがたみを感じたのは初めてかも知れません。何しろ3日連続の野宿でしたので。
「台所に食材がいっぱいあるよ」
ナナカさんがとても魅力的な発見をしもした。
「早速、夕ごはんを作ろうよ」
「やったー!」
これは確実に犯罪ですね。
「美味しかったです」
「確かに食べたって感じだな」
宿に泊まることがこんなに素晴らしいことだとは思いませんでした。
「あ! この服可愛い?」
ナナカさんがクローゼットをあさっています。
「貰っていいかなあ?」
普通にいいわけないですね。
「オー、この箪笥の中に回復草があったぞ」
「こっちの壺を割ったら魔法の種が出てきたわよ」
もうやりたい放題ですね。
こうして私たちは勇者気分を存分に味わうのでした。




