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第56話 後悔

 後から思えば全て私が悪かったんです。あの時、景品に髑髏のマグカップを選んでおけば全て丸く収まっていたものを。ついつい大好きなぬいぐるみを選んでしまいました。でも思いっきり可愛いぬいぐるみだったんです。


 私がぬいぐるみを選んだ後、ミーニャさんは直談判に行くと言い出しました。

「私も戦いたい。そして髑髏のマグカップをゲットしたいのだ。いいな」

「それがですね。剣士がまだ復帰しておりませんので、今日はもう終了といたします」

「何だと? では髑髏のマグカップは手に入らぬのか?」

「また、来月に新たな企画を考えておりますので、その際はぜひご参加下さい」

「そんなに待てるか!」

「そう申されましても。そうだ、先ほどの女性は新チャンピオンですから、彼女と戦うのはどうでしょうか?」

「えええええーーーーーー!!!」

ラスボスのミーニャさんと戦うなんてとんでもない話です。


「わかった。ミーニャ戦うぞ」

「絶対に嫌です!」

「そんなことを言わずに。さあさあ」

無理やり壇上に上げられてしまいました。


「大丈夫ですよ。救護隊の方々はこの道80年のベテラン揃いです。万が一、命を落とすことがあってもすぐ蘇ることができます」

「本当ですか?」

「ただ・・・・」

「ただ、ただ何ですか!?」

私は必死に聞きます。


「最近、認知症が出て来ている方もおりますので」

『はて、わしはどうしてここにおるのかのお?』

『そういえば昼ご飯を食べねば』

『今、食べたばかりじゃないですか?』

「たまに蘇生に失敗します」

「ひええええ!」


 私は頭を抱えて・・・・あれ? クロシッポがいません。

「ナナカさん、クロシッポがいません」

舞台下のナナカさんに大きめの声で聞きました。

「ミーニャさんと戦うって聞いた途端どこかへ消えていたわ」

「ええーーー!」

まあ、いてもいなくても結果は同じなんですけどね。


「では、無制限1本勝負・・・・」

「参りました」

私はすかさず土下座をして降参しました。

「ダメですよ。これはデスマッチですからどちらかが死ぬまで終わりません」

「ええーーー!」


「では、行くぞ。リーサ覚悟!」

「キャー」

最初の攻撃は何とか交わすことができました。でも、先ほどの剣士とは比べものにならないパワーとスピードです。私がよけた背後の建物はほぼ全壊状態になっています。


 これは確実に死ぬパターンです。それならこうするしかありません。私はミーニャさんに近づきました。魔法を出させない作戦です。ここまで近いと腕を振り下ろすこともできないと思います。

「いいのか? これほど近いと指先一つで殺せるぞ」

「ちょっと待った待った!」

私は慌ててミーニャさんが腕を上げられないよう抱きつきました。


「ふふふ、腕を封じ込めたら大丈夫と思うか?」

「あわわわ、ミーニャさん、ミーニャさん。大切な親友が死んでもいいのですか?」

「生き返るからいいだろう」

「でも、確実じゃないじゃないですか? もし生き返らなかったらもう二度とお話しすることもできないんですよ」

「それはそうだな」

「私が死んだふりをしますから、勝利宣言を受けて景品をもらって下さい」

「それはダメだ」

「え、どうして?」

「ルールは守らねばならぬ」

「いつから真面目キャラになったんですか!」


 窮地に立たされた私は思いっきりミーニャさんを抱きしめます。もちろん、ミーニャさんを動けなくするためです。

「リーサ、お前の私を愛する気持ちはよく分かったぞ。こうなったら力尽くで髑髏のマグカップを戴いていくことにしよう」

「え?」


 ミーニャさんはスタッフの人に言い出しました。

「おい、そのマグカップを素直に渡せば良し、さもなくばこの町は滅びることになろう」

「また、ご冗談を」

「交渉決裂だな」

「ミーニャさん? 何をするのですか?」

『レッドキング。怖そうなモンスターを連れて今すぐ来い!』

『は! 了解しました』


 そして現在。私の目の前には見事なまでに町が破壊された町があります。町の人々は全員どこかへ行ってしまいました。私としては殺されるよりこの方がいいんですけど。確実にミーニャさんがラスボスだってことがばれましたよね?


 ミーニャさんが座り込んでいます。もしかして後悔の念でも抱いているのでしょうか? こんなに派手にやってしまいましたからね。少しは人間らしい心も残っているのかもしれません。

「うおー! マグカップが割れているー!」

「そっちの後悔かーい!」

この後、私たちの噂はもの凄いスピードで流れ、どの町に行っても悲鳴を上げられるのでした。

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