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第41話 労働基準局

「萌え萌えキュン」

「敵の戦力を考えるとこの作戦はきついな」

「しかしこれくらいの思い切りがないとなかなか勝てるものではありません」


「・・・・・・・・あのう」

「リーサどうかしたか?」

「大変申し上げにくいのですが、重要な軍事会議をメイド喫茶で行わないでください」

「いいではないか」

「さっきから偶然機密情報を聞いてしまったモンスターさんが次々に消されていくのを見るのが辛いです」

「気にするな」

「気にします!」


 やっとメイド喫茶から解放されたのは午後9時でした。この頃の私は働き過ぎだと思います。絶対に労働基準法に反している自信があります。これは訴えるべきです!  でもここ異世界にはそんな法律はきっと存在しませんよね。今までの流れで分かります。


「今日も可愛かったぞ」

「いきなり入ってこないで下さい。ビックリします」

ミーニャさんは本当に自由奔放です。でも法律のない世界ですから何でもありなんですよね。


「明日はピンクのメイド服だ。嬉しいだろう?」

「どうしてそんなにピンクが好きなのですか?」

「可愛いからだ」

思いっきり正直な返答ですね。


「ミーニャさんもこの服を着てみて下さい。そうすれば私の気持ちも分かりますから」

「私にはこの服は似合わんから嫌だ」

これまた正直過ぎる返答です。


「自分の着られない服を人に着せるのはどうかと思います」

「何だと?」

言い過ぎました。

「労働基準局に訴えますよ」

一応言っておきます。無駄ですけど。


「うっ・・・・・・・・」

あれ? ミーニャさんの様子が変わりましたね。まさかこの異世界に労働基準局があるのでしょうか? そんなはずないですよね。なにしろ勇者が一般家庭に入り込んで箪笥の中を物色しても捕まらない世界なのですから。


「わかった。リーサを土日なしの1日20時間メイド喫茶で働かせようと思っていたが、それは諦めることにしよう」

めちゃくちゃな計画ですね。


「少しお聞きしますが、もしかして労働基準局があるのですか?」

「ある」

何と意外な展開でしょう。法律もないくせに労働基準局があるというのでしょうか?

「嘘ですよね?」

「嘘ではない。数年前に創設したのだ」

「どうしてまた」

訳が分かりません。とても『私が法律だ』と言ってるミーニャさんの言葉とは思えません。


「あれは3年前のことだ。私の所まで勝ち上がってきたパーティーがいた。勿論、速攻で倒してやったがその中に可愛い少女がいたのだ。私はそいつだけ倒さずここに住まわせることにした」

ミーニャさんて可愛い少女が好きなのでしょうか?


「あまりに可愛かったので色々な服を与え、この城で働かせることにした。そのうちエスカレートしていき土日なしの1日20時間働かせたのだ」

「私と同じパターンじゃないですか! それでその少女はどうなったんですか?」

「過労で死んだ」

冗談じゃありません。私も過労で死ぬってことですよね!?


「その時、いい人アピールをするため労働基準局を設けると発表してしまったのだ」

助かりました。何とか過労死は免れそうです。でも同じ過ちをくり返すなんてミーニャさんの身勝手にも困ったものです。


「安心しろ」

「何がですか?」

「リーサがもっと働けるように労働基準局は廃止することにしよう」

「どうしてそうなるんですか!!」

「もっとメイド喫茶で働きたいだろう?」

「働きたくありません! 私は一日中自分の部屋でクロシッポの毛を撫でながらボーッとしていたいです!」

これほど自分の本音を主張したのは初めてです。


「わかった。1日19時間労働にしてやろう。それなら文句はあるまい」

「ほとんど改善されていません!」

「1日5時間も寝れば十分だろう」

このままでは私の未来は過労死です。


「労働基準局に訴えます」

「それだけは許してくれ」

こんなに狼狽えるミーニャさんは初めて見ます。ちょっと楽しくなってきました。

「因みに労働基準局に訴えたらどうなるのですか?」

「同じ労働を課せられる」

何ですってー!


「と言うことはミーニャさんがピンクのメイド服を着て1日19時間働くことになると」

「その通りだ」

『目には目を歯には歯を』の精神ですね。なるほどミーニャさんが狼狽えるのが理解できました。


「1日18時間の労働に負けてやるから労働基準局に行くのはやめてくれ」

「わかりました。労働基準局に訴えたりしませんよ」

私は余裕の笑みでミーニャさんを見ます。

「おー。さすがリーサだ」

「ふふふ」


 こうして私は部屋を出るとスキップをしながら労働基準局に向かうのでした。

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