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第4話 ラスボスのミーニャ

 私は目覚めるとすぐベッド脇に置いてある呼び鈴を鳴らすのを毎朝のルーティーンとしている。私が呼び鈴を鳴らすと一秒も経たないうちに筋肉マッチョなトロールが私の着替えを持ってやってくる。私はこの日常を割と気に入っている。


「今日のお召し物を持って参りました。これでいかがでしょうか?」

私は不機嫌な目つきでトロールを睨み付ける。

「申し訳ございません。すぐに別のお召し物を持参いたします」

「いや、これでいい」

私はトロールが持ってきた三着の服から一番目立つ赤いワンピースを選び、

「これにする」

と言った。私に謙虚な服装など必要ない。何しろ私はこの世界を牛耳る存在なのだから。


 トロールに着替えを手伝わせた後、もう一度呼び鈴を鳴らす。するとこれまた一秒もしないうちにメイド服に身を包んだ筋肉マッチョなトロールが食事を運んでくる。しかし、これだけ筋肉のあるトロールがよくこの服を着られたものだと感心する。ちなみにこれらのトロールは全て雌である。


 私は出された朝食を一口だけ食べるとナイフとフォークをテーブルに置き不機嫌そうに顔をしかめる。それを見たトロールは緊張のあまり直立不動で顔を引きつらせている。別に不味かったわけではない。ただナイフとフォークを置いてみただけだ。私はこの引きつったトロールの顔を見るのが好きだ。暫くトロールの引きつった顔を堪能すると、私は再び食事を始める。するとトロールは直立不動のままほっとした安堵の表情に変わるのだ。


 食事を終えた私は寝室を離れ大魔王の間に移動する。限りなく広い部屋の中央には超豪華な椅子が一つ置かれている。勿論、私専用の椅子だ。私はできるだけ優雅な振る舞いで椅子に座った。やはりここは決め所だろう。なにしろこの部屋には多くの家来達が整列して私の命令を待っているのだ。そう、私はこの世界の大魔王、つまりラスボスなのだから。


 私が大きく手をかざすと目の前にディスプレイが現れる。ディスプレイと言ってもテレビ画面のような機械的なものではない。画像だけが空中に浮かぶ不思議なものだ。いかにも異世界的と言えるだろう。

「ブルーキング、昨日の成果を報告せよ」

「は! バトルマスターレベル93が率いるパーティーが現れましたので、軽く蹴散らしておきました。後は雑魚ばかりでした」

「そうか。よくやった。今後も力を抜くことなく頑張るように」

「はい、お任せください」


 私の下にはブルーキング、レッドキング、グリーンキング、イエローキングというボス軍団がいる。いわゆる四天王という奴だ。この4人ははっきり言って強い。そのおかげでラスボスである私の所に冒険者が来たことはほとんどない。平和と言えば平和なのだが、その影響で私の生活は全く退屈な日々となっている。


「レッドキング、昨日の成果を報告せよ」

「は! ミーニャ様」

「その呼び方は止めろと言っただろう!」

「申し訳ございません!」

戦う必要がなくなっている私の唯一の悩みはこの名前だ。ラスボスにしては「ミーニャ」は可愛すぎる。この名前を付けた親を恨みたくなるが、まさか将来ラスボスになるとは思ってもいなかっただろうから仕方あるまい。


「では何とお呼びすればよろしいのでしょうか?」

レッドキングが恐る恐る聞いてきた。

「ラスボスでいい」

「はい? 本当にそれでよろしいのですか?」

「私がいいと言っておるのだぞ!」

「は! 申し訳ございませんラスボス様」

私が不機嫌な声を出すと誰もが慌てふためく。でも、よくよく考えたら『大魔王様』の方が良かったかも? まあいい、今更変更はできぬ。ころころ話を変えていたらラスボスの威厳に関わるからな。


 家来の一人が片膝をつき頭を深く下げて言った。

「ミーニ・・・・あっ! いえラスボス様」

「お前達、もしかしてミーニャという名前が気に入ってるのか?」

ポッ。

「め、滅相もございません」

「だったらなぜ顔を赤くした?」

「そ、それは・・・・」

慌てて両手を振る家来に追い打ちをかけてみた。


「どうやらお前は生きる資格を持たぬようだな?」

「申し訳ありません!」

家来は思いっきり頭を床に密着させて土下座をしている。これはこれで気持ちのいい光景だ。


「何を言っても無駄だ。お前ごとき軽くこの場で消し去ってくれるわ」

「ラスボス様があまりにお美しく『ミーニャ』という響きがお似合いなため、ラスボス様は我々部下一同のアイドル的存在になっているのです」

「・・・・今回は許す」


 その後、グリーンキングにも同じ質問をしたが返答は同じようなものだった。

「オールレベル100のパーティーが来ましたので軽く倒しておきました」

レベル100を簡単に倒してしまったら勝てる人間はいなくなるだろうに。これでは退屈な日々が続くわけだ。


 イエローキングに至っては、

「冒険者は一人も来ませんでした」

まあ、そうそう強いパーティーがいるわけでもあるまい。しかし、こうなってくるとラスボスがいる意味はあるのか? これは新たな趣味でも見つけた方が良さそうだな。ともかく部下が強すぎるのも考えものだ。


 こうして今日も私の退屈な日々が平和に過ぎてゆくのである。

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