第36話 このシチュエーションは?
「キャー」
「もうリーサちゃんたら大げさなんだから」
「やっぱり私ホラー映画は無理です」
「こんなに面白いのに」
私はナナカさんが作り出したテレビ画面を見て言いました。
「いくら怖いのが苦手でも、あの声は大きすぎだよ」
その時、聞いてはいけない言葉が聞こえてきました。
『リーサ! どうしたのだ? 今から助けに行くから安心しろ!』
『え? ミーニャさん? わ、私は大丈夫です』
『そこまで自分を犠牲にして私を守らなくてもいい』
『別に守ってないですけど』
どういうことでしょうか?
『お前のいる基地に潜入することに成功した。今すぐそちらに行くからな』
「キャーーーーーーーー!!!!!!」
「びっくりした! 今のはさっきの10倍大きな声よね」
ここにミーニャさんが来たって? 嘘ですよね? どうしましょう。もし、ナナカさんと和気藹々でホラー映画を見て楽しんでいたなんてことがバレたらナナカさんも私も一瞬で消されてしまいます。
『リーサ、どこにいるのだ? この赤い戸か?』
赤い戸というと隣の通路にある戸のことでしょうか? 割と近いです。
「ナナカさん! 逃げましょう!」
「また始まった。で、外は宇宙空間だけどどこに逃げるの?」
そうでした。この基地の外へは出られないのでした。
『こっちかな? この白い戸が怪しいな』
『ええーーー!』
隣の部屋の戸の色じゃないですか!?
「瞬間移動です。瞬間移動で逃げましょう!」
「私は瞬間移動はできないわよ。ここに来たのはボスの力だから」
「ええええーーーーー!!!」
『リーサの声だ。この当辺りにいるな』
ミスりました。大きな声を出してしまうなんて、何とドジな私なのでしょうか。
『この青い戸か?』
この部屋の戸です!
「違います!」
「中からリーサの声が聞こえたぞ! ここに間違いない」
ここまで来ると私のドジは救いようがありませんね。
ガチャ!
「キャーーーーーーー!!!!!!!!!」
「何で私の顔を見て悲鳴を上げるのだ? 本来なら喜ぶべきだろう!」
ミーニャさんがナナカさんの部屋を見渡しています。
「あなた誰よ?」
「そういうお前こそ誰だ?」
「あなたが私の部屋に入ってきたんだから、あなたから名乗るのが筋ってもんでしょう」
「何だと? 名乗ってやってもいいが私の名前を聞いたら後悔するぞ」
「何よそれ?」
「私の名前はミーニャだ。どうだ? ひれ伏したければするがいい」
「ミーニャ? 誰だっけ?」
あわあわあわ。
「貴様! ラスボスの名前を知らないのか?」
「そうだ。ラスボスってミーニャって言ったっけ?」
「さあ、ひれ伏して謝るなら今のうちだぞ」
「いきなり人の部屋に入ってきて挨拶もしない礼儀知らずにひれ伏すわけないでしょう?」
「無礼者! 言葉を慎め!」
もうダメですね? ミーニャさんの顔が赤くなってきました。これは私を含めてただでは済みません。覚悟を決める時が来たようです。
「なるほどお前が私のリーサを唆したナナカとか言う輩か。私の一番の親友を奪おうとはいい度胸だ」
「一番の親友? リーサは私といる方が楽しそうだけど? 本当の親友ってこういうものじゃないかしら?」
お願いですからこれ以上挑発しないでください。
「何だと!」
「リーサの本当の親友は私よ。絶対に渡さないから」
「それはこちらの台詞だ。お前などに私のリーサは渡さぬ。今の言葉はすぐに後悔へと変わるぞ。それでもいいんだな?」
ん? もしかしてこの状況は? 二人の人が私を奪い合っているのですよね? ああ! このシチュエーションはまさに私の憧れ! まさかこんな日が来ようとは。
「お願い! 私のためにもめないで!」
この台詞、一度言ってみたかったんです。私を取り合うのが異性ではなく同性というのがとてもとてもとても残念ですが、妙な形で夢が叶いました。
「リーサを不幸にすることはできないわ。あなたなんか指1本で倒してみせるわ」
ナナカさん。相手は異世界のラスボスですけど・・・・。
「それは面白い。やって貰おうではないか。まあ、数秒後に生きていられたらの話だが」
ミーニャさんが呪文を唱え始めました。これって炎系のドラゴンを一瞬にして凍らせてしまった呪文です。何とかしなければ!
「ミーニャさん待ってください!」
私は思わずナナカさんをかばう形でミーニャさんの前に立ち塞がりました。
「リーサ、私よりこの女を選ぶのだな? もう私たちの仲も終わりを告げた言うことか」
何かまずい雰囲気が漂ってきました。
「わかった。短い間であったが楽しかったぞ。お前もこの女と一緒に葬ってやろう。痛くないように一瞬で殺してやる。これは私がお前にしてやれる最後の愛情だ」
「わー! ちょっと待ってください! 私の親友はミーニャさんだけです。私が言いたかったのは3人で友達になりましょうと言うことです」
「3人でだと? 親友は1人で十分だ」
「でも友達は多い方がいいじゃないですか」
必死で説得する私です。痛くない死なせ方の愛情なんていりませんから。
「ちょっとリーサ。どういうこと?」
ナナカさんが不機嫌そうに私を睨みます。本当にラスボスが怖くないのでしょうか?
「私たち3人で友達として暮らしましょう。そしてみんなで革命軍と戦うのです」
「どうして革命軍の私が革命軍と戦わなきゃいけないのよ!」
またまた変なことを言ってしまったようです。しかし、今はそんなこと言っていられません。もう少し生きていたいですから。
「お願いです。私まだまだやりたいことがあるんです。まだフォアグラも食べていないんです!」
私は思わず涙を流してナナカさんの手を握りました。
「わかったわよ・・・・」
続いて私はミーニャさんを見ます。
「私がミーニャさんの本当の親友であることを証明しますからお願いします。3人で暮らすチャンスをください」
「う~む。よしわかった。1ヶ月だけチャンスを与えよう。1ヶ月経って今の言葉が嘘だとわかったら覚悟をしろ!」
「ありがとうございます!」
これはあれですね。浮気がバレた時に必死で言い訳をするのと同じ心境のような気がします。最も私は恋愛経験がないので浮気もしたことはないのですけどね。




