第33話 これは本気で終わりですね
ジー。
「どうかしましたか?」
最近ナナカさんに観察されている気がします。
「リーサって何か怪しいのよね-」
「な、何がですか?」
思わず焦ってしまう私です。
「だって突然変なこと言い出すし、小さな声で何やら呪文のようなものを唱え出すし、これって十分怪しいわよね?」
私がスパイだってバレるのも時間の問題ですね。
「ごめんなさい。私って空想癖があるんです。だから変なことを口走ってしまったり、小さな声で独り言を言ってしまうんです」
「そうか。疑っちゃってごめんなさい。てっきりラスボスのスパイだと思っちゃった」
「まさかー。はははは・・・・」
心臓が持ちませんね。
『リーサ。お前の居場所の見当が付きかけている』
「えええーーー!」
「どうしたの急に?」
「何でもありません。グレートスペシャルウルトラゴージャスドラゴンとかくれんぼをして見つかってしまった空想をしてしまいました」
「珍しい空想よね?」
「本当ですね。はははは・・・・」
グレートスペシャルウルトラゴージャスドラゴンを十分後にもう一度言えと言われても絶対無理だと思います。
『リーサ、もう少しデータをくれ。導き出した場所の裏付けをしたい』
『データと言われましても』
『外に出て景色を言ってくれればいい』
『この建物には窓がありません』
『ドアはあるだろう?』
『外に出たら死にます』
『は?』
『おいジーニアスドラゴン。外に出たら死ぬ場所ってどこだ?』
『そうですね? 宇宙空間とか?』
猛烈にやばいことを言ってしまいました。
『嘘です。嘘です。もう外に移動しましたので報告します』
『そうか。じゃあ頼む』
何と言いましょうか? 突拍子もないことを言ったら嘘を言っているのがバレてしまいます。ここは無難に。
『一面のお花畑が見えます』
『山の方かな?』
『向こうには頭にわっかを付けた白いワンピースの少女が花の髪飾りを作っているのが見えます』
『天国か!』
突拍子もないことを言ってしまいました。
『今のは冗談です。本当は針の山と血の池が』
『地獄か!』
私は焦り出すとパニックになるケースが多いんです。
とにかく窓の外が宇宙空間だと言うことだけは伝えてはダメです。
『宇宙にいるのか!』
簡単にバレましたね。ダメだと思えば思うほど強く念じてしまうようです。
『そんな所にいるわけないです。やだなぁ』
『宇宙空間とするとつじつまが合わぬか?』
『はい、上空200000mで暗闇に包まれている。ピッタリです!』
『ちょっと! 私の話を聞いてくださーい^ ^』
『よし、早速攻撃だ! 城中の全兵力を集めろ!』
これは真剣にやばいです。
「ナナカさん、逃げましょう。もうすぐラスボスの軍隊が攻めてきます」
「どうしてわかるの?」
「女の勘です」
「女の勘は夫の浮気を見破る時しか当たらないんじゃないかったの?」
「そうでした」
ジー。
「な、な、何ですか?」
「どうして急にそんなこと言い出したのかなーって」
ナナカさんの視線が痛いです。このままではナナカさんたちは全滅の可能性が高いですよね? でも私の身分を伝えるのは私自身がやばいです。どうしたらいいのでしょうか?
「とにかく私を信じてください」
「だから、信じるにはリーサがその情報をどこから仕入れたのかを教えてくれなきゃ」
いやはや八方塞がりになってしまいました。これは何かを犠牲にしなければいけないようです。選択肢は二つ。革命軍やナナカさんを犠牲にするか、私自身を犠牲にするか。スパイであることがわかったら当然私は銃殺刑ですもんね。う~ん困りました。
『ラスボス様。革命軍のアジトが特定できました』
『本当か! でかした。早速攻め込むぞ。準備をせい!』
『はっ! かしこまりました』
『皆の者よく聞け! この戦いはここ異世界を揺るがすものになるだろう。もしかしたら犠牲者が出るかもしれぬ。だがこの世界を守るためにもやらねばならぬのだ。私と共に戦ってくれるか』
『オー!』
『ラスボス様バンゼーイ』
『よし、相手陣地に攻め込むぞ! 一気に突入だ!』
『エイエイオー!』
あわあわあわ。もうダメです。こうなったら私を犠牲にするしかありません。スパイであることをナナカさんに話して逃げる準備をして貰いましょう。思えば短く悲惨な人生でした。せめてフォアグラを食べてみたかったです。
「ナナカさん聞いてください」
「どうしたの改まって」
「実は私、ラスボスに派遣されたスパイなんです。だから今すぐ逃げる準備をしてください。もうすぐラスボスの軍勢がここを攻めに来ます」
「嘘でしょ?」
『出発の準備ができました』
『よし、者ども行くぞ!』
『オー!』
『ちょっと待ってくださいラスボス様』
『どうしたジーニアスドラゴン?』
『宇宙空間などどうやって行けばいいのでしょう?』
『な・ん・だ・と!』
「・・・・・・・・」
「リーサ! 今まで私たちを騙していたのね! 酷いわ。信じてたのに」
「なーんてね。嘘ですよー」
「え? どういうこと?」
「ほら今日はエイプリルフールでしょ?」
「そうか。今日は4月1日だっけ。もう真剣な口調で言うから思いっきり騙されちゃったじゃない」
「はははは・・・・」
こうして綱渡りのような私の人生は続くのでした。本気で心臓が持ちません。




