第30話 非常に緊急事態です
ミーニャさんの『笛を吹け』という言葉を無視して一週間になろうとしています。最近では毎日のように『笛を吹け』と催促されているのですが、この状況は真剣やばいですよね?
『リーサ。なぜ笛を吹かぬ!』
口調がきつくなってきました。
『ええっと、笛が壊れてしまいまして』
『笛が壊れた?』
『はい、誤って踏んでしまい・・・・』
『その笛は超合金でできているんだぞ! 踏んだくらいで壊れるわけがなかろう』
何とも異世界に似つかわしくワードが出てきました。
『いえ、私が踏んだのではなくて、大きなドラゴンに踏まれたのです』
『大きなドラゴン? そんなモンスターが革命軍にいるのか?』
『います。それはそれは大きなドラゴンが』
『何だと! 何て名前のドラゴンだ?』
『わかりません』
『そうか』
ホッ。
『じゃあ、そのドラゴンの特徴を言ってくれ』
『え、特徴ですか?』
『色とかの見た目を言ってくれればいい。私は全種類のドラゴンのデータを持っているからな』
これは非常にまずいです。嘘をついていることがバレてしまいます。
『どうかしたか? 早く言ってくれ』
『ええっとーそのう・・・・』
『色や見た目を言うだけだぞ。早く言わんか』
『ええっとーそのう・・・・』
『ん? まさか嘘をついているのではなかろうな?』
『まさかそんな!』
こうなったら私の想像力に賭けるしかありません。
『色は?』
『赤紫です』
『赤紫? そんなドラゴンいたかな?』
『あっ、赤でした』
『ああ、赤ならいるな。で、鱗はあるか?』
『あります。白い粉ですよね』
『はあ?』
私、変なこと言いました?
『鱗だぞ。粉なわけあるか?』
『え? 小麦粉の一種で』
『それはうどん粉だ! 私の聞いているのは鱗だぞ!』
焦ったあまり変なこと言ってました。
『鱗はあるんだな? それで羽はあるか?』
『勿論あります』
『赤くて羽があって鱗があるとすると・・・・レッドキングお前だな?』
『今ここにいる私がどうして敵陣に行って笛を踏んで来なくてはいけないんですか?』
『それもそうだな。リーサ、その情報は確かか?』
まずいです。適当に言ったのがバレかかってます。
『あっ、もしかしたら鱗はなかったかも知れません』
『そうか。だとすると角はあったか?』
『ありました。トナカイのような角が』
『トナカイのような角? ドラゴンでトナカイの角だと?』
適当に言い過ぎました。
『そんなのドラゴン図鑑には載ってないぞ?』
今度こそ嘘をついているのがばれますね。せめて牛のような角と言うべきでした。
『あったぞ! これだ!』
本当にいるんかい! 思わずツッコんでしまいました。でも声に出したわけじゃありませんからいいですよね。
『リーサ、お前が証言しておいて『本当にいるんかい!』とはどういうことだ?』
ミーニャさんに聞こえていたみたいです。強く思いすぎたのかも知れません。でもツッコミですから仕方ないですよね。
『はははは・・・・』
『まあいい』
いいんかーい! 危ない危ない。ツッコんではいけないんでした。
『ところで笛を踏んだドラゴンはスペシャルアカドラゴンと言うらしいが、どうもこの辺りには生息しておらぬ種類のようだ』
『『レッド』ではなく『アカ』なんですね』
『かなりの北方にしか生息していないらしい。革命軍の勢力範囲は予想以上に広いというかとか! これは侮れんな』
話が大きくなってしまいました。嘘がばれたらただでは済みそうにありません。
「リーサいる? 入るね」
ナナカさん!
「どうしたの? 頭を抱えて」
「何でもありません」
「あれ? 変わった笛があるわね。ちょっと吹いてみてもいい?」
「ダメです!」
ピー!
『ラスボス様! 敵のアジトがわかりました』
ええーーー!
『リーサ、革命軍は思ったより強敵だ。そこにいるのは危険と思われる。今すぐ救出に向かうからな』
えええーーーー!!
「大変ですナナカさん! ラスボスが攻めてきます」
「どうしてそんなことがわかるの?」
「へ?」
「それってどこからの情報なの?」
「それは・・・・女の勘です」
「なーんだ。脅かさないでよ」
『ラスボス様、敵のアジトの位置を正確に特定できました』
『よし! これを機に革命軍を絶滅させるぞ!』
ええええええーーーーーーーー!!!!!!
「ナナカさん! 本当に危険な状態です。みんなに避難するように伝えてください!」
「女の勘でしょ? 大丈夫よ」
こうなったら本当のことを言うしかありません。そうなると私がスパイであることがバレて処刑されるかも知れません。でも、ナナカさんたちを守らなければ!
「ナナカさん! 実は私・・・・」
『ちょっと待ってくださいラスボス様』
『どうした』
『特定したアジトの位置なのですが空中200000mになってます。こんな所に生き物は住めません』
『どういうことだ!』
『おそらく位置情報がバグったものと思われます』
「・・・・・・・・」
「実はどうしたの?」
「何でもありません。女の勘なんて夫の浮気を見抜く以外では当てになりませんよね。はははは・・・・」
こうして自分の命を犠牲にしようという私にしては非常に貴重な体験も未遂に終わるのでした。




