第28話 全面戦争
どうもリーサの様子がおかしい。なぜ潜入先で楽しそうにしているのだ? 時々『寝返る』などと口走っておるのが非常に気になる。まあ冗談だとは思うが、探りを入れた方がいいかもしれんな。
「おい、グレートドラゴン」
「はっ、お呼びでしょうか?」
「相手に見つからぬよう革命軍のアジトに忍び込んで様子を見てこい」
「それは不可能かと思われます」
「なぜだ?」
グレートドラゴンは言いにくそうに呟いた。
「私は体長10mの巨体ですし、見つからぬようにと言われましてもちょっと・・・・」
「ほう、私の命令に逆らうと?」
「いえ滅相もない! 直ちに行って参ります!」
ドスドスドスドス!
『キャー! 大きなモンスターが来ました!』
『敵襲だ! やってしまえ』
『ワーワーワー』
「ダメだ! 強すぎる! ここは退却するぞ!』
シーン。
ドスドスドスドス!
「失敗しました」
「アホかお前は!」
「まさか見つかるとは思いませんでした」
「その大きな図体でいきなり乗り込んでいったらこうなるに決まっとろうが! リーサと同じように仲間になりたいと嘘をつくとか何かいい方法があっただろう?」
まさかここまで知能が低いとは。
しかし、これは困ったものだ。リーサがどこに行ったかわからなくなってしまったぞ。
『リーサ、どこにいるかわかるか?』
『さっぱりわかりません』
やはりそうか。
『今、何が見える』
『普通の部屋です』
参考にならんな。
『どこをどう移動したか覚えていないのか?』
『いきなり瞬間移動でここへ来ましたから、さっぱり見当が付きません』
私は頭を抱えた。
「こんなことならリーサにGPSでも付けておくべきだったな」
「ラスボス様。異世界にGPSなどございませんが」
「わかっておる! ちょっと言ってみたかっただけだ!」
本当ジーニアスドラゴンは一言多い。
居所がわからぬと不安だが、奴らはリーサのことを仲間だと思っているからまさか殺したりはしないだろう。焦ることもないか。
『ナナカさんとお話ししているととても楽しいです。いつまでもここにいたいです』
な・ん・だ・と!
『おい、リーサ! 今、いつまでもここにいたいと言ったか?』
『言っておりませぬ』
『明らかに怪しい話し方ではないか?』
『まさかそんな~おほほほ』
何とかせねばなるまいな。このままでは親友を取られかねない。
『本当ですか? 私もです。ナナカさんとは趣味が合いますね』
ところで、誰だこのナナカとか言う奴は?
『リーサ。どんな奴と話しているのだ?』
『普通の日本人です』
『人間なのか?』
『はい、とても可愛い方です』
『もしかして女か!?』
『はい女性です。あっいや、勿論ミーニャさんの方が可愛くて美人ですよ』
何か気に食わんな。このナナカという娘を亡き者にする必要がありそうだ。
「ジーニアスドラゴン。リーサの位置を探れ!」
「ただいま努力しておりますがさっぱりわかりません」
「GPSで探れぬか?」
「だから異世界にはGPSはありませんて」
「だったらどうすればいいのだ?」
「ただ一つだけ方法がないわけでもありません」
「何だそれは?」
ジーニアスドラゴンは指を一本立てて私を見た。
「笛です」
「笛?」
「リーサ様に持たせた笛が鳴れば位置もわかると思われます」
「なるほど」
「問題はリーサ様が笛を吹いてくれるかどうかです」
「どういう意味だ? 笛を吹くように言えば済むことではないか?」
「そう簡単にいけばいいのですが」
ジーニアスドラゴンは何を言っているのだ?
『リーサ。助けられそうだ。お前の持っている笛を吹け。そうすれば私たちがそこに行くことができる』
『・・・・・・・・』
『さあ、笛を吹くのだ』
『・・・・・・・・』
『どうした?』
『いえ別に』
『だったら笛を吹け』
『もう少し敵を探ってからの方がいいと思います』
『もう十分情報を得ることができた。今すぐ笛を吹くがいい』
『・・・・・・・・』
私はジーニアスドラゴンを手招きした。
「なぜリーサは笛を吹かぬのだ?」
「恐らくラスボス様よりナナカとかいう女の方が気に入ったのかと思われます」
「何だと~!!!!!!」
「城内の全兵力を集めろ! 全面戦争だ!」
「オ-!」
急遽集められた城内のモンスターたちが一斉に声を上げる。
「ラスボス様。敵の兵力は思ったより多いです。ここは慎重に動かねばなりません」
「レッドキングよ。今はそんな悠長なことを言っている場合ではないのだ。一刻も早くリーサを取り戻さねば」
「しかしラスボス様」
「ええい、もどかしい! 私はやると言ったらやるのだ!」
私は全兵士を庭に集めベランダの上から演説を始めた。
「皆の者よく聞け! この戦いはここ異世界を揺るがすものになるだろう。もしかしたら犠牲者が出るかもしれぬ。だがこの世界を守るためにもやらねばならぬのだ。私と共に戦ってくれるか」
「オー!」
「ラスボス様バンゼーイ」
大勢のモンスターが口々に叫んだ。
「よし、相手陣地に攻め込むぞ! 一気に突入だ!」
「エイエイオー!」
盛り上がりが絶頂を迎えた時、ジーニアスドラゴンが私の耳元でそっと囁いた。
「それで? どこに攻め込むおつもりで?」
「あ?」
こうしてたまりにたまったエネルギーを放出することなくモンスターの大群はゆっくりと解散していくのであった。




