第27話 佐藤菜々花
潜入2日目。私はとても大切に扱われています。
「昨夜はよく眠れましたか?」
「はい眠れました」
「それは良かった。あまり贅沢な物はありませんが朝食を食べてください」
「ありがとうございます」
みんなが集まる部屋に通されました。意外と大きな部屋です。集まっているモンスターは30匹ぐらいでしょうか? 思ったより少ない気もしますが。
「この方たちが革命軍のメンバーですか?」
「そうです」
「思ったより少ないですね?」
「この拠点にいるのは中枢部の者たちだけです。各支部併せたらこの100倍の同士がいます」
3000匹ですね。これは多いかもです。早速ミーニャさんに情報提供することにします。
『そんなにいるのか? 意外と手こずりそうだな』
少し動揺したミーニャさんの声が聞こえてきます。
敵の首謀者を伝え革命軍の人数を教えたのですから、もう伝えることはないですよね? もう帰ってもいい気がします。
『ミーニャさん。もう私の役目は終わったような気がしますが帰っていいでしょうか?』
「まだだ。引き続き敵の弱点を探ってくれ』
弱点と言われても何をどう探ればいいのかさっぱりわかりません。
『どう探ればいいのですか?』
『それは任せた』
『そんないい加減な。私はプロのスパイじゃありませんから無理です』
『大丈夫。何とかなる』
『寝返りますよ』
『革命軍と共に死にたいか?』
『何とか探ります』
ミーニャさんと周りにいるあの強そうなモンスターたちは無敵な気がします。
「どうぞ召し上がってください」
いつの間にか目の前のテーブルにたくさんの料理が並べられていました。え? これはベーコンエッグに千切りキャベツに鮭の塩焼きではありませんか! 何と味噌汁にご飯まであります。
「どうして日本食があるのですか?」
「食事担当の同士が日本から転生してきた人間ですので日本食を作ってくれるのですよ。とても美味しいので私は気にいってます」
「日本から転生してきた方がいらっしゃるのですか?」
「はい、紹介しましょうか?」
「ぜひお願いします。私も日本から転生してきましたので」
「そうだったんですか。わかりました。ナナカこっちに来てくれ」
「はーい」
本当に日本人女性です。驚きました。私以外にも日本から転生した人がいたのですね。
「あ! 日本人だ!」
「初めましてメンジョーリーサと言います」
「私はサトーナナカよ。よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
「日本人に会えるなんて思ってなかったわ。嬉しい!」
「私も嬉しいです」
よくある挨拶をしました。
それにしてもモンスターに混じって革命軍に入るなんて凄い方ですね。どうして入ろうと思ったのか聞いてみたいです。
「ナナカさんはどうして革命軍に入ったのですか?」
「パーティーの仲間がラスボスに殺されたからよ」
私の考えた設定と同じですね。
「私もです」
「ええ、本当に? 私たち仲良くなれそうね」
とても話しやすそうな人です。これは寝返り決定ですね。
『リーサ!』
そうでした。強く思うとミーニャさんに筒抜けなのでした。気を付けないと革命軍共々一巻の終わりです。
「私が最近覚えた魔法で自分のアルバムを作ったんだ。後で見せるね」
「是非見たいです!」
「じゃあ、食事が終わったら私の部屋に来て。ここを出て右に曲がって突き当たりの部屋よ」
「わかりました」
写真を作る魔法っていいですね。私も覚えたいです。
朝食を食べ終わった私は早速ナナカさんの部屋に行くことにします。ええっと、ここですね。コンコン。
「リーサです」
「入って!」
とても明るい声が返ってきました。
「失礼します」
「どうぞ、こっちに座って」
これは! 何とちゃぶ台ではありませんか!
「異世界にもちゃぶ台があるのですか?」
「私が作ったのよ」
「こんなものどうやって作るのですか?」
「私の能力は思い描いた物を再生できる能力なの。だから日本にいた時の記憶で作り上げたのよ」
「凄いです!」
「他にもいっぱい懐かしい物があるわ」
私は部屋中を眺めます。何と壁には柱時計ではありませんか。箪笥もあります。箪笥の上にあるのは日めくりです。本当に懐かしい物ばかりです。
「純和風ですね」
「私は昔の日本が好きなの」
「私もです」
本気で気が合いそうな方です。
「私は日本が好きだからいつまでも日本にいたかったのに、自転車にひかれて死んじゃったんだ」
「自動車じゃなくて自転車ですか?」
「よほど打ち所が悪かったのね」
結構、運の悪い方のようです。
「ここへ来てからも碌なことがなくって。せっかく気の合う仲間ができたのにラスボスに簡単に殺されるし」
「よくラスボスの所まで勝ち進みましたね」
「たまたま森で出会ったのよ」
「嘘みたいに運が悪いですね」
「むしゃくしゃしてるから殺すって気まぐれにもほどがあるわよ」
「確かにラスボスって気まぐれな性格だと思います」
『リーサ!』
「そんなこともないですよ」
「どうしたの急に?」
「ちょっと諸事情がありまして」
「そんなに強いパーティーでもなかったんだから気分次第で殺さなくてもいいじゃない」
「本当に我が儘な性格は嫌です」
『リーサ! 誰のことを言っておるのだ?』
「でもラスボスは我が儘じゃないですよ」
「どうしたの? さっきから言ってることがバラバラよ」
「気にしないでください」
私は苦笑いをしながら言いました。
「気になるわよ。まるで二重人格者みたいだし」
「まさかそんな」
「それともラスボスを知ってるの?」
「まさかそんな!」
「語気が強まったわね」
「嫌だ~そんなことありませんですわ。おほほほ」
「あからさまに怪しいんだけど」
不味いです。ナナカさんに正体がばれたら捕らえられて殺されかねません。何とか誤魔化さなければ。こうして嘘をつくのが下手な私の苦悩が始まるのでした。




