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第21話 魔王城

 禍々しい雰囲気をふんだんに含む建物が目の前に聳え立っています。建物と言えばビルのようなイメージを思い浮かべるかも知れませんがここは全く違います。大きな岩を削ったような感じのものです。どこから入っていいのかさえわかりません。


「リーサ、こっちだ。ここに立つと扉が開く仕組みになっている」

まさかの自動ドアでした。

「私から絶対に離れるではないぞ。もし離れたら秒でモンスターたちの餌食になるからな。ははは」

「恐ろしい台詞を笑顔で言わないでください」


 中に入ると壁は全て石でできています。そして壁には松明が掛けられ勢いよく火を噴いているのです。更に様々な生き物の髑髏が飾られ、私が通ると目が動いて私を見つめてきます。遠くの方から怖そうなモンスターの泣き声も聞こえてきました。私は生きて帰れるのでしょうか? 


「ラスボス様。魔王の間を整えてございます」

「私の留守中何か変わったことはあったか?」

「城内においては何事もございませんでした」

「そうか」


 ミーニャさんに話しかけているのは以前見かけたドラゴンです。名前はすっかり忘れてしまいましたが、怖いので忘れたことは内緒にしておきましょう。それにしても中は広いですね。見たこともない装飾が時々あります。怖い形の物ばかりですが。


「おい、人間の匂いがするぞ!」

「どこからか迷い込んだのかもしれん。探し出して焼いて食おう」

周りをキョロキョロしいていたらミーニャさんから離れてしまったようです。私は慌ててミーニャさんを追いかけます。


「いたぞ! 人間だ!」

数匹のモンスターが私を指さして叫んでいます。

「何事だ? 騒がしいぞ!」

「ラスボス様。人間の小娘が魔王城に迷い込んできましたので」

「この娘か?」

「はい、左様にございます」

「それで? こいつをどうしようというのだ?」

「はい、せっかくですので焼いて食べようかと」

ひえ~!

「この娘は私の親友だ。今焼いて食べるとか言ったか?」

「申し訳ございません! ラスボス様のお知り合いとはつゆ知らず。大変失礼いたしました」

ここは生きた心地がしない場所のようです。


 魔王の間とかに通された私はまたまたキョロキョロと辺りを見渡します。見たこともない豪華さと広さです。

「こっちに来い。この椅子に座るといい」

ミーニャさんが手を差し伸べた先には大きな椅子が二つ並べられていました。豪華と言うよりトゲトゲがいっぱいあって怖い椅子です。


「どうした遠慮はいらぬ。座るが良い」

「ここはミーニャさんのような偉い方が座る椅子です。私のような者が座るわけには・・・・」

「何を遠慮しておる。リーサにはこの世界の半分をやると言っただろう?」

本気で言っていたのですか? 絶対にいりませんけど。


「失礼します」

メイド服を着た筋肉マッチョなモンスターが飲み物を運んできてくれました。

「あ、ありがとうございます」

少し大きめのタンブラーからは紫色の煙が出ています。絶対に飲んではいけない類いの物だと思います。


「どうした? 気に入らないのか?」

「そんなことはないのですが、紫色の煙が出ていますので・・・・」

ダメ元で微かな抵抗を試みてみました。

「ああ、人間にとっては珍しいかもしれんな。美味しいぞ」

やはり予想通りの返答です。


 ミーニャさんが私を見ています。これは飲まないわけには行かない雰囲気ですね? まさか毒は入ってないと思いますので飲むことにしましょう。でも、これを口にするのはかなり勇気がいります。


「う!」

一口飲んでみましたが凄い刺激です。はっきり言って人間の飲み物ではないですね。モンスターの飲み物ですから当然ですけど。それにこれって・・・・もしかしたら私はまだ飲んだことのない未知の飲み物。お酒の一種でしょうか? 体中が熱くなってきました。


「ミーニャさん。もしかしてこれはお酒ですか?」

「違うぞ」

「そうですか」

取り越し苦労だったようです。

「薬物の一種だ」

ブー!

「冗談だ。ははは」

「からかうのは止めてください!」


 もしかしたらミーニャさんは私をからかう喜びを知ってしまったのでしょうか? もしそうだとしたら厄介なことになりました。私は基本単純な性格ですから騙されまくることになりかねません。何とか対策を練らなければ・・・・。


「申し上げます」

次から次へと怖そうなモンスターがミーニャさんに報告に来ています。大切な秘密情報も伝えているみたいですので、恐らく私はここにいてはいけないのだと思います。

「ミーニャさん。私は部屋の外に出ていた方がいいのではないでしょうか?」

「なぜだ?」

「重要なお話をされているようですので」

「お前にはこの世界の半分をやるのだ。居て当然だろう」

もはやミーニャさんの言葉は信用できないレベルになってきました。からかっている時とそうでない時の区別が付きません。


「もし私が裏切りでもしたら大変なことになりますよ」

「そんなことをすれば一瞬で消え去ることになるが」

「嘘です! そんなことは絶対にしません!」

周りのモンスターたちが一斉に身構えました。ここは冗談でもこんなことは言っては行けない場所なのですね。身にしみて実感することができました。私はできる限りモンスターの機密情報を聞かないよう真正面をまっすぐ見て、借りてきた猫のように大人しくするのでした。

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