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第2話 もうペットにするしかありません

 空が赤く染まってきました。もう夕暮れ時です。そろそろお金を稼がないと宿に泊まることができなくなります。うら若き乙女が野宿をするのは危険すぎますから。


 お金を稼ぐと言ってもこの異世界では働く必要はありません。ここの住民の多くはハンターです。モンスターを倒せば報酬が貰える仕組みになっているのです。勿論、倒すモンスターによって貰える額は変わってきます。強いモンスターを倒せばたくさんのお金が貰えますし、弱いモンスターを倒すと少しのお金しか貰えません。同じモンスターでも個によって強さが違ったりもします。例えばスライムで説明しますと、筋肉マッチョの強いスライムもいればガリガリ君の弱いスライムもいるのです。強いスライムを倒せば少し多くのお金が貰えることになっています。


 ちょうど目の前に森があります。森の中はモンスターの宝庫です。お金を稼ぐには最高の場所と言えるでしょう。では、今日の宿代を稼ぎに行ってみることにします。とにかくこのままでは野宿決定ですから。私は恐る恐る森に入っていきます。奥に行けば行くほど出てくるモンスターは強くなるようです。当然、私は森の入り口付近をうろうろします。


 ガサッ! 目の前の茂みが揺れました。私は逃げる体勢を作りながら揺れた茂みを見つめます。もし強いモンスターが出てくれば必死で逃げなくてはなりません。因みに私の足は究極に遅いです。ただ『キャー!』という大きな悲鳴を上げて逃げるとモンスターは警戒して追ってこないみたいです。これはパーティーに属さない者の特権ですね。パーティーに入っていたら一人だけで逃げることはできませんし恥ずかしいですから。


「キュピ」

クロシッポが現れました。このモンスターは最弱として有名なスライムより弱いモンスターらしいです。いくら落ちこぼれ魔法使いの私でもクロシッポには勝てそうな気がします。貰える報酬は少ないですが贅沢は言っていられませんからね。


「キュピー」

クロシッポが甘えた声で近寄ってきます。これは卑怯です。反則技です。こんな可愛い態度を取られたら倒せないではないですか。女心を微妙にくすぐった高度なテクニックです。


「キュピ!」

クロシッポはシッポの先で私の頬を往復ビンタしてきました。どうやら油断させる罠だったようです。でも殆どノーダメージでした。むしろふわふわの毛が気持ちいいです。何て上質な毛並みなのでしょう。


「キュピーキュピー」

クロシッポは私にダメージを与えられないと思ったのか再び甘える作戦に出ます。ふわふわの毛を私にすり寄せ甘えた目で私を見上げています。クロシッポってネコ科の生き物なのでしょうか? それにしてもこれまた凄い戦法です。これでも攻撃しようという強者がいたらお目にかかりたいものです。


 これはもう限界です。私は思わずクロシッポを持ち上げ抱きかかえると一目散に走り出しました。このクロシッポは私のペットにするしかありません。この毛触りは最高です。クロシッポは毛皮にでもされると思ったのか必死で逃れようとします。上質の毛がクロシッポを持った手に当たりとても気持ちがいいです。クロシッポが涙目で私を見つめますが、もう今の私を止めることは誰にもできません。


 私が村に戻ると周りの人達は仰け反って離れていきます。どうしたことでしょう?

「おい、モンスターを素手で捕まえた豪傑がいるぞ!」

「信じられねえ。こんな光景見るの初めてだ!」

皆さん何やら言ってますが私は気にしません。素敵なペットを手に入れたことで私は満足なのですから。


「キュピーーー」

クロシッポは更に涙目になり私に訴えかけているようです。みんなに囲まれて殺されると思っているのでしょうか? 『大丈夫』の意味を込めて毛を撫でます。ううー! 気持ちいいです。 


 取り敢えず今持っているお金で宿に泊まれるか聞いてみることにします。財布の中身は15ブロンズでした。因みにブロンズはここ異世界で通用する最低単位のお金です。100ブロンズで1シルバー。100シルバーで1ゴールドになります。


 宿に入ると私は受付の女性に尋ねます。

「素泊まりでいいので15ブロンズで泊まれる部屋はありませんか?」

「キャー! モンスター連れの方はお泊めすることはできません。お引き取りください!」

どうやら野宿決定のようです。モンスターと言われましても最弱モンスターのクロシッポです。そんなに警戒することはありませんのに。


 さすがに外で寝るのは心細すぎます。私はじっとクロシッポを見つめました。この子を倒したら宿屋に泊まれるでしょうか?

「キュピーキュピー!」

私の心が読めるのかクロシッポがまたまた涙目で訴えてきます。この涙目は反則過ぎます。


 それから一時間くらい心の葛藤をした後、私は大きな木の根元で寝ることにしました。どこからともなく獣の鳴き声が聞こえてきます。はたして獣なのでしょうか? もしかしたらモンスターかも知れません。野宿なんかして大丈夫なのか不安です。普通に考えて大丈夫なわけないですよね。なにしろうら若きか弱い乙女なのですから。

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