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最辺境㉖


頭がガンガンして痛い。全身に力がはいらず崩れ落ちそうになるのをなんとか耐えて、地面に触れた手のひらからその先に力を流し込む。


力を限界まで使うと、こんな感じになるのか──なんてことを考えつつも、俺は今行っている行動を止めない。気力はまだ残っている。


体は限界を叫んでいるのに気力だけでなんとか力の行使を維持できているのは、効果が目に見えてでているからだ。


俺が力を使う前まではあれだけでかかった瘴気獣のサイズが、当初とは比べ物にならない程小さくなっていた。それでもまだ象くらいのサイズはあるが、当初に比べれば威圧感はまるで感じない。タイテンの蔦はもはや全身に絡みつき、奴の動きを完全に封じ込めていた。


──正直、ここまでの効果は想定していなかった。ここまでにかかった時間は正確に把握できていなが、恐らく十数分……かかっても二十数分と言ったところだろう。


奴は攻撃によって自らの持つ瘴気を削っていたし、アリステラさんも隙を見て攻撃を叩き込んでいたから俺の力だけの結果ではないが、大部分は俺の能力のハズだ。これ、瘴気獣に対してだけだけど特効能力といえるな。小さくなって動きが速くなったらそもそも捉えられなくてだめかもしれないが、今は完全に拘束できている。このままいけば消滅までもっていけそうだが……


「ヒビキ……顔色が悪いわ」


手持ちのポーションは使い切り、サイズを縮めた瘴気獣が新たな瘴気獣を生み出す事がなくなった事から俺に寄り添うように立っていたユマが、俺の体を支え、顔を覗き込んでそう言った。


「もう、限界でしょう」

「まだ……もう少しだけ持つ」


心配げにそう俺に告げるユマに、俺は首を振ってこたえる。だがそこに追い打ちが来た。


「ヒビキさん、それ以上の力の行使は危険だ、解除した方がいい」


アリステラさんもこちらに視線を向けて、そう言ってくる。……そこまでひどい顔色をしているのだろうか。


「君の能力はこの先も重要になるだろう。力の過剰な使用は場合によっては今後に影響が出る事がある……」


確かに、俺の能力は今後スールの研究を続けるにあたり有効であることは間違いないけど……


「大丈夫だ、君のおかげで充分私で対処可能な大きさになっている。それに」


そこでアリステラさんが視線を俺でも、瘴気獣の方でもない、森の木々の方に向ける。それにつられて俺も視線を向けると、森の木々の向こう側で何かが光を反射して。


次の瞬間にはそこから銀色の何かが高速で伸びてきて、瘴気獣に絡みついた。


……鎖?


「これでもう奴が逃走をすることもない。力の解除を」


突如現れた鎖が何なのかわかっているのか特に驚いた様子もなく落ち着いたままのアリステラさんが、鎖が飛来した方から視線を離すことなく、少し強い調子で再度俺に対してそう告げる。


今度はその言葉に特に反論することもなく、素直に力を解除した。それによってこれまで長らく瘴気獣を拘束していたタイテンは力を失い、一気に腐れ落ちた。……どうも無理やり掛け合わせて生み出しているせいで、力を流していないとすぐにその力を失ってしまうらしい。


だが、タイテンを失っても瘴気獣が逃げ出す事はなかった。鎖がタイテンの代役をきっちりこなしたらしい。


「遅いぞ、グーナー」


アリステラさんが鎖の伸びてきた方向に向けて何か話かけているのが聞こえる。だがすでにその声もかなり遠くに聞こえていた。安堵して気を抜いた瞬間、気力だけで保っていた意識が急速に沈んでいく事を感じる。


「ヒビキ……お疲れ様」


耳元で優しい声が聞こえる。そして力が抜けて後ろの方へ倒れていく体を柔らかいものが優しく包み込む。その感触に安堵を感じながら、おれはゆっくりと意識を手放した。

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